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INTERVIEW

映画『ARCO』で2度目の吹替に挑んだ16歳のリアルを暴く

繰り返すのは“今日も新しい感情に出会えた”感謝。黒川想矢が続ける自分同士の戦い

2026.05.01 18:00

2026.05.01 18:00

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画面に映っている自分は95%自分じゃないと思っている

──実は以前、『怪物』のときに取材をさせてもらったことがあって。某スタジオでなんですけど、たぶん人生初取材みたいなことをチラッと聞いて。

ああ! そうです、人生初だと思います、あれが。

──質問に対して一言ぼそっと呟くだけみたいな、すごいシャイだったのを覚えています。

そうでした(照)。緊張して、緊張して、やばかったですね、あのときは……。

──当時のことを考えると、かなり話せるようになったなと感じます。そこはご自身の中で何か変化している実感値はありますか。

当時は話すことが恥ずかしいと思っていて。今も結構思っているんですけど。でも、話すことで自分の頭の中が整理できる気がして、伝えるってすごくいいことだなと思ったり、そういう機会をいただけるのは光栄だと思えるようになりました。

──それは、自分を開示するのが怖くなくなったということでもありますか。

うーん、なんか怖くないというか。どうせ変だから、もう何を話してもいいかなって(笑)。

──俳優のインタビューって変だなと思うんです。俳優はお芝居をするのが仕事じゃないですか。なのに、インタビューではお芝居だけじゃなく、自分はどういう人間なのか、何を考えているのかまで聞かれる。やっててなんですけど、変だなと思ってて。

確かに確かに確かに! そうですよね。変? うん、はい、そう思います(笑)。

──でも、きっと言葉にすることで俳優の方にも得られるものがあるんじゃないかなと思って、こうしてお話を聞かせてもらっています。

ありがとうございます。僕は結構、自分の生活が役に染みるって考えるタイプじゃなくて、役と自分は同じ人で、演じることで新しい感情に出会うことが多い人間なんです。だから今こうして話をできることがうれしくて……でも……あれ? 何が言いたかったんだろう(笑)。話しながらどこかに辿り着けると思ったんですけど、1周回って辿り着けませんでした(笑)。すみません。

──全然それでいいんです。今、加速度的に黒川想矢という俳優が世間に知られつつあるわけですが、世間に認知されている自分とリアルな自分はちょっと違うと思いますか。

めちゃくちゃ違うと思います。今日もですけど、写真とかめちゃくちゃカッコよく撮ってもらって。あ、これ、自分をカッコいいと言いたいわけじゃないですよ?(笑) メイクしてもらって、普段よりカッコよく撮ってもらっている自分を見て、自分って誰だろうと思うことが結構あって。舞台挨拶に来てくれた友達からも「あそこに立ってる想矢はいつもの想矢じゃない。誰ですか」みたいに言われるし。だから、自分の中で、ちょっと切り離しているところはあります。

──記事でも「天才」なんてフレーズを使われることが、しばしばあると思います。そういう評価をどう受け取っていますか。

素直に調子に乗っちゃうんですよ。結構天狗になるんです。でも、画面に映っている自分は95%自分じゃないと思っていて。そこらへんはうれしく思いつつも、やっぱり切り離して考えることが多いですね。

──日本アカデミー賞で新人俳優賞を受賞したときにおっしゃった「『怪物』で湊役を演じられたのは、監督をはじめたくさんの方々のサポートや運でしかないと思う自分と、まるで自分の力でやり遂げたと勘違いしてしまう自分です」というスピーチは今や語り草です。あのとき、2つの自分と戦っているとおっしゃっていましたが、今なおその戦いは続いていますか。

もう続きまくって、負けまくってです。でもその気持ちだけは忘れたくないというか、忘れられないと思うんですよ。僕は監督が演技指導をしてくださったときに「ありがとうございます」と言っていたんですけど、『国宝』のときに李(相日)さんから「ありがとうございますは言わなくていいんだよ」と言われて。李さんは李さんの仕事をしているから、確かにそうだなと思いつつ。でも「ありがとうございます」と言わなくなることで、どんどん勘違いしてしまう自分に傾いてしまう気がして、それも怖いし。

今は、1日撮影が終わるたびに、その日の撮影が終わったことに感謝するというのをずっとしていて。これが正解なのかはわからないけど、悩みながらもこの戦いはずっと続いていくだろうし、続かないといけない戦いなのかなとも思っています。

──アカデミー賞の授業式はまだ14歳のときでした。14歳であの言葉が出てくるのがすごいと思いましたし、「コバルト」のあとがきも印象的な文章を残されていて、あれはご自身で書いたんですか。

そうです。

──「爆発」とか「秘匿」とか、どこからああいうワードが出てくるんだろうと。その感性がすごく気になっています。

ありがとうございます。イタいかなと自分で思いながら書いたんですけど(笑)。5年後くらいに読み返したら「ううう」となると思います。でも、こういうインタビューでも嘘をつかなくていいんだって、自分が思っていることを話せばいいんだと思うようになってからは、あまり気にしすぎず、自分の思ったことを話したり書いたりしたいと思っています。

──いい人間であり、いい俳優でありたいということもおっしゃいますよね。

はい。そうありたいってずっと思っています。

──そういう言葉選び一つひとつが鮮やかで。普段からよく本は読みますか。

読まないです。

──じゃあ、何からああいう言葉が出てくるんですか。

それはやっぱりこれまでご一緒した方たちの言葉が大きいです。それこそ、こういうインタビューもそうです。いろんな人からいただいた言葉で、今の僕はできている。本当に感謝しかないです。

『ARCO/アルコ』本編映像より、アルコとイリスに迫る別れのシーン

──これから黒川さんがさらにどんな言葉に出会っていくのか楽しみにしています。では、最後は軽い質問を。『ARCO/アルコ』は、タイムスリップした先で出会った少女・イリスとアルコの冒険の物語です。黒川さんにも友達と冒険した思い出はありますか。

身近な冒険は、学校を抜け出してコンビニに行くことですけど(笑)。ディズニーランドに行ったことがなくて、友達とディズニーランドに行きました。それだけの、オチも何もない話なんですけど(笑)。

──年齢的にもまだまだ子どもたちだけで遊びに行く機会自体少ないと思うので、立派な冒険だと思います。

ランドもシーも行って、非現実的なくらい夢の国で。それも楽しかったんですけど、なんて言うんだろう、大人がいる前ではくだらない会話ができないじゃないですか。それを気にせずのびのびできたのが楽しくて。ちょっと前までは、そういうくだらない時間って意味ないのかなと思っていたんですけど、くだらない会話をできる時間が大切なんだって、ちょっとわかるようになりました。

──ではもう一つ。アルコは857年の時を遡りタイムスリップします。今から857年前といえば1169年。平清盛が権勢をふるっていた時代です。この時代に黒川さんがタイムスリップしたら、どんなふうに過ごすと思いますか。

行ってみたいなと思います。エラい人は大変そうですけど、平民は今よりのほのほと過ごしている気がして。やっぱり客観化されていない時間ってすごく素敵だなと思っていて。

──それは、時計がないという意味ですか。

そうですね。今日は1日ぐだぐだ過ごしたっていうことに罪悪感を抱くのって、時計に1日を刻まれているからじゃないですか。昔は時計がなかったから、時間の感覚ってもうちょっとゆるかっただろうし。今みたいに時間に追われず、もっと季節の移り変わりとともに生活していたと思うんです。そういうのは、ちょっと経験してみたいです。

──というか、その時代にタイムスリップしても平民として過ごすんですね。戦には参加しないんですか。

絶対行きたくないです。たぶん参加したら、開始3 秒後くらいに刺されてあの世逝きです(笑)。

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作品情報

ARCO/アルコ

©2025 Remembers / mountainA / France 3 CINEMA

©2025 Remembers / mountainA / France 3 CINEMA

ARCO/アルコ

2026年4月24日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
フランス/88分/カラー/ビスタ/5.1ch/原題:ARCO/字幕翻訳:浜本裕樹/映倫:G
配給:AMGエンタテインメント ハーク

公式サイトはこちら

スタッフ&キャスト

監督・脚本:ウーゴ・ビアンヴニュ 脚本:フェリックス・ド・ジヴリ
製作:フェリックス・ド・ジヴリ、ソフィー・マス、ナタリー・ポートマン
アニメーション監督:アダム・シラード 編集:ナタン・ジャカード 音楽:アルノー・トゥロン

声優キャスト:
【フランス語】
オスカー・トレサニーニ(アルコ)、マーゴット・リンガード・オルドラ(イリス)、アルマ・ホドロフスキー(ミッキ/イリスの母)、スワン・アルロー(イリスの父)、ルイ・ガレル(ストゥイー)、ヴァンサン・マケーニュ(ドゥギー)、ウィリアム・レブギル(フランキー)、ナタナエル・ペロ(クリフォード)

【日本語】
黒川想矢(アルコ) 堀越麗禾(イリス) 梶裕貴(ミッキ) 山里亮太(ドゥギー)
前野智昭(ストゥイー) 落合福嗣(フランキー) 伊駒ゆりえ(クリフォード) 日向未南(アルコの母)

2009年12月5日生まれ、埼玉県出身。5歳で芸能活動をスタートする。
2021年のNHK BS時代劇「剣樹抄~光圀公と俺~」で了助役を務め、2023年に公開された映画『怪物』(是枝裕和監督)での麦野湊役が高く評価され、日本アカデミー賞新人俳優賞など多数の賞を受賞。映画『国宝』(2025年)では、吉沢亮扮する主人公・立花喜久雄の少年時代を演じ、第17回TAMA映画賞で最優秀新進男優賞を受賞。第38回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎新人賞を受賞。

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