新たに田村芽実、井上瑞稀、富田鈴花ら迎えた名作の魅力とは
実力派キャストが描く、ショービジネスの光と影。大竹しのぶ主演ミュージカル『GYPSY』開幕
2026.05.09 20:45
2026.05.09 20:45
大竹しのぶが主演を務めるMusical『GYPSY』が、5月6日(水)に東京・日本青年館ホールにて開幕。前日の5月5日(火)、公開ゲネプロと記者会見が行われた。
本作は実在のストリッパーであるジプシー・ローズ・リーの回顧録を基に、〈究極のショービジネスマザー〉と称される母=ローズの視点からショービジネスの世界を描いた名作。2023年、演出・クリストファー・ラスコムと主演・大竹しのぶのタッグで上演され大きな反響を呼んだ今作が、新キャストを迎えて3年ぶりの上演となった。

大竹しのぶ、井上瑞稀、今井清隆
ローズ(大竹しのぶ)は、2人の娘ルイーズ(田村芽実)、ジューン(富田鈴花)をヴォードヴィルの世界で活躍させようと躍起になるステージママ。オーディションで知り合ったハービー(今井清隆)と一座を作り、あちこちの劇場に売り込んでまわる。やがて下の娘ジューンが脚光を浴び始めるが、その矢先にジューンは一座の青年タルサ(井上瑞稀)と駆け落ちしてしまう。
それでも諦めず、ルイーズと再起を図るローズだが、ルイーズにはジューンのような歌唱力やダンスの技術がなかった。そんな中、ハービーがある手違いでストリップ劇場の仕事を受けてしまい……というストーリー。

初日前会見で今井清隆が「年齢のことで言うと大竹さんは嫌がるかもしれないが、エセル・マーマンが初めてこの役をやったときは51歳、イギリスの大女優のイメルダ・スタウントンさんがやったときも59歳だった。そう考えると、大竹さんがこの役をやっているというのは、本当に世界的に考えても素晴らしいことだし、毎回彼女のエネルギーを見ると本当に驚かされる」と語ったが、実際に舞台を観た人は、全員がこの言葉に納得するのではないだろうか。それほどまでに、“大竹しのぶ”という女優の凄まじさがここにある……これに尽きる。

物語の序盤のローズは“自分の子供たちをどうにかして売り込むことに躍起になるステージママ”だ。子役たちの可愛らしさやコミカルな演出も相まって、ローズの強引さはときに滑稽にも見えるし、ルイーズやジューン、タルサたち子供たちの可愛らしさはなんとも微笑ましい。しかし物語が進むにつれ、観客はローズの“異常さ”をじわじわとつきつけられるようになる。
歳を経て、子供たちは成長してゆく。しかしローズはいつまでも子供たちに本当の年齢を偽らせ、教育を受けさせず、給料も払わないまま旅のドサ回りを続けさせる。それもすべて、愛する娘のジューンを「スターにする」という純粋な思いからだ。最初にその歪さに気づくのが、ローズが誰よりも愛情を注ぐ愛娘のジューンというのもなんとも皮肉な構図だ。

ジューンがいなくなったあと、ローズがジューンの“代わり”にするのは、それまでジューンの影に隠れ、母の愛情を受けることができなかったルイーズ。しかしそのルイーズも、少しずつローズから自立してゆくこととなる……ローズが夢見た“スター”としてではなく、“ストリップ”で花開いた才能がそれを後押しすることになるのだが。
大竹しのぶという人の持つチャーミングさがなければ、このローズという役は成立しないのではないか……そう思ってしまう。なぜなら、行動だけ見れば、このローズという役は立派な“モンスター”だ。しかし、どうにもローズという役を憎む事もできないし、目を背けることもできない。 このパワフルかつ強烈な役柄を3時間にわたって歌い、踊り、演じ続けるパワーと才能。特に、クライマックスのナンバーの圧巻さと言ったら! それを生で目にすることができる、このことだけで今作に足を運ぶ価値はあるだろう。

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