名作Musical『GYPSY』でグループ卒業後の第一歩を飾る
「ここからイメージを脱却していきたい」新たな夢に向かう富田鈴花が今、伝えておきたいこと
2026.05.09 16:00
2026.05.09 16:00
プレゼント用のチェキにサインをしようとして、ついグループ名を書いてしまう。そんな自分のクセに「仕方ないです。8年間もやってたんだから」と富田鈴花は笑った。その笑顔が、眩しく瑞々しい。
2025年8月5日をもって日向坂46を卒業。そこから約半年の充電期間を経て、ついに一人の女優として新たな一歩を踏み出す。そのリスタートの舞台が、Musical『GYPSY』だ。
主人公は、2人の娘をスターにしようと躍起になる究極のステージママ・ローズ。しかし奮闘虚しく、着々とスターの階段を上りはじめていたはずの下の娘・ジューンが駆け落ちし、姿を消してしまう。そのジューンを演じているのが、富田だ。
アイドルの道を全力で駆け抜けていた富田が、卒業を決めたきっかけとなったのが、ミュージカルとの出会いだった。人生を変えたミュージカルというフィールドで、今、富田鈴花はまだ見ぬ自分へと生まれ変わる。

いつか母親になっても、娘にアイドルをやってほしいとは思わない(笑)
──富田さん演じるジューンの母・ローズはなかなかぶっ飛んだ女性です。
本当にパワフルで、人間のいいところも悪いところもここまで前面に出ている人って今の世の中にはなかなか存在しないじゃないですか。見ているだけでハラハラドキドキするというか。台本だけでこんなにインパクトがあるんだから、実際に大竹しのぶさんが舞台で演じられたら、もっとド迫力なんだろうなと思いました。
──自分の母親がローズだったらと思うと、ちょっと怖くなります。
そういう意味では、ローズの周りからどんどん人が離れていくのもわかりますよね。これだけ尽くしても人が離れてしまうのは、結局彼女のやっていたことが全部相手のためではなく自分のためだったから。潔いくらい自分のためだけに生きた人だと思います。
でも、わかるんですよ、ローズの気持ちも。

──わかるんですか。
私も母親になったらローズみたいになっちゃうんじゃないかなって。というのも、グループにいたときに後輩に対して持っていた気持ちとちょっと似ている気がしたんです。
私は後輩たちを、自分たちができなかったことをなし遂げてほしいという、執念のような期待を込めて見ていたので。そういう気持ちをもっと膨らませて、ぐちゃぐちゃにしたら、ローズみたいになっていてもおかしくなかったなって。
ローズのことを突き抜けた人みたいに思うかもしれませんが、人間誰しも彼女のような面は持っている。自分の欲望に対してまっすぐという意味では、すごく人間らしい人ですよね。
──じゃあ、富田さんもいつか娘を持ったら。
自分ができなかったことをやってほしいと思うかもしれません。といっても、アイドルをやってほしいとは思わないですけど(笑)。
──あ、そこは思わないんですね(笑)。
本人がアイドルになりたいと言ったら、「いいんじゃない?」と言うとは思いますけど、そのときは最初に全部伝えます、アイドルになるメリットもデメリットも全部。それでもやりたいと言うなら止めはしません。そういうときって親がいくら言っても聞かないから。
夢を見ているときって、夢しか目に入らない分、他のことが見えないんですよね。いくら悪いことを言われても入ってこない。きっとジューンもそうだったんじゃないかなという気がします。

──そう考えると、ジューンとローズは似た者同士なのかもしれませんね。
確かに。そこはあると思います。だって、いきなりあんなふうに親のもとを離れる決断なんて普通はできない。それができちゃったのは、欲望にまっすぐなローズの血を受け継いでいるからかもしれません。
──いろんなものを捨てて、ジューンは一座の青年タルサと駆け落ちをします。何が彼女をあの決断へと導いたと思いますか。
やっぱりタルサと出会って、タルサと話をして、この人となら一緒に世界を広げていけると思ったんだと思います。あとは、やっぱり母親の縛りから抜け出したいという思春期ならではの勢いもあったんじゃないかな。仕返しとまでは言わないけど、母に自分の生き方を見せつけたかったというか。
縛りが強ければ強いほど反動もすごいって言うじゃないですか。そういうのもあった気がして。そうやってバックグラウンドについて想像を膨らませることができるキャラクターがたくさん集まっているところが、この作品の魅力の一つだと思います。
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