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「TOKYO POP CHRONICLE」特集 第1回

「東京はいいなあと思っていました」シティポップの立役者・伊藤銀次の名曲回想録

2026.08.02 12:00 PR

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来る9月26日(土)、東京のポップミュージックの系譜を現代に蘇らせるというコンセプトのコンサート・イベント「TOKYO POP CHRONICLE」が開催される。元「はっぴいえんど」の松本隆と鈴木茂を筆頭に、金延幸子、ブレッド&バター、伊藤銀次、南佳孝、尾崎亜美、杉真理など、錚々たるアーティストたちがラインナップされた豪華なステージだ。ここではイベントの開催を記念し、出演者を代表して3人の貴重な証言を全3回にわたってお届けする。

第1回に登場するのは、伊藤銀次。伝説のバンド「ごまのはえ」(後のココナツ・バンク)でキャリアをスタートさせ、大瀧詠一や山下達郎らとの出会いを経て、ジャパニーズ・ポップスの発展における最重要人物のひとりとなった。シュガー・ベイブによる時代を超えた名曲「DOWN TOWN」の作詞者(山下達郎との共作)といえば、その偉大な功績にピンとくる方も多いだろう。1977年に発表したデビュー・アルバム『Deadly Drive』をはじめとするソロ作品の数々は、近年の世界的なシティ・ポップ・ブームの中で海外からも熱い再評価を受けており、活動歴50年を超えた今もなおリリースやライヴなど精力的な活動を続けている。

今回は伊藤銀次にとって、大きく人生を変える契機となった大瀧詠一との出会いを軸に、熱気あふれる70年代当時の貴重な思い出を回想。彼にしか語れない、生きた“TOKYO POP CHRONICLE”をじっくりと紐解いていく。

伊藤銀次

大瀧さんってなかなか褒めない人なんです

──銀次さんのご出身は大阪です。上京されるまでは東京にどのような印象をもっていましたか。

僕はテレビっ子だったんですが、例えば『少年ジェット』のような少年ヒーロー物のドラマを観ていると、必ず舞台が東京なんですよ。世田谷あたりの街並みですよね。あと、林家三平さんがレギュラーだった「タワープレゼント」というお昼の番組があって、そのオープニングで東京タワーがアップで映るんです。もちろんクレイジーキャッツの映画も舞台は東京だし、大阪にはない場所だなと感じていましたね。

──音楽文化の面ではどうでしょうか。

僕がビートルズやローリング・ストーンズを好きになった頃って、グループサウンズの人たちがたくさん出てきましたけれど、やっぱり東京の人が多いし、活躍の場所は東京なんです。ザ・ワイルド・ワンズの加瀬邦彦さんや、ザ・フィンガーズにいた成毛滋さんにしても、みんな東京の友達同士でバンドを組んでいる。でも、僕の周りにはそんな人は誰もいなかったから、東京はいいなあと思っていました。

──大学も大阪の歯科大に進学されたんですよね。

実家が歯医者で僕は長男だったから、宿命ですよね。でも長髪にして抵抗していましたよ(笑)。そんな時に出合ったのが、はっぴいえんどの松本隆さんの詞です。松本さんの歌詞の風景に東京を感じましたし、憧れましたね。

──銀次さんが上京されるきっかけは、同じくはっぴいえんどに在籍していた大瀧詠一さんだと伺いました。

当時、ごまのはえというバンドをやっていて、ベルウッド・レコードからシングル「留子ちゃんたら」をリリースしたんです。でも、僕らは全然レコーディングのノウハウもないし、アルバムははっぴいえんどみたいにいい音で録音したいなあと思って、はっぴいえんどの誰かにプロデュースしてもらいたいと考えました。そこで、当時「春一番」というイベントを主宰していた福岡風太に頼んで、大瀧さんを大阪に呼んでもらったんですよ。なぜ大瀧さんだったかというと、細野(晴臣)さんは東京っぽくておしゃれでかっこいいんだけど、大瀧さんは冗談っぽい曲もあるじゃないですか。だったら、僕らのような関西ノリもわかってくれるんじゃないかと思ってね(笑)。

ごまのはえ「留子ちゃんたら」

──大瀧さんは、ごまのはえのライヴを観に来たんですよね。

そう。しかも、ライブ終了後、僕のアパートに来てくださって、そこで朝までいろんな話をしたんですよ。最後にごまのはえのシングルを聞かせたら結構ボロクソに言われて(笑)。だから、プロデュースをしてもらおうという話はもう無いなと思ったの。でも後からわかったんだけど、大瀧さんってなかなか褒めない人なんです。しばらくして「やってみる」って返事が来てびっくりしましたよ。でも、条件が「東京を本拠地にする」ってことで、メンバーとも喧々諤々話し合って、説得して上京しました。

──でも、ごまのはえは結局アルバムをリリースしませんでした。

一応、ベルウッドでアルバムを出すという話はまとまっていたんですが、そうなると12曲くらいは必要じゃないですか。しかも僕は、「大瀧さんにちょっとかっこいいアレンジをしてもらえればいいな」くらいに考えていたんですが、大瀧さんの目指すハードルがめちゃくちゃ高くて、そのハードルを飛べないメンバーが出てくるんです。まず、ベースの角谷(安彦)くんは細野さんと比べられ、でも彼は小坂忠さんが気に入っていたので、そっちにいくんです。さらにヴォーカルは(末永)博嗣くんだったんだけど、大瀧さんは僕に「君が曲を書いているんだから、君が歌いなさい」って。

──銀次さんはそれまで歌ってはいなかったんですか。

高校まではアマチュアバンドでリードヴォーカルだったけど、僕の声ってポップス向きなんですよ。その頃はスティーヴ・ウィンウッドとかジョー・コッカーみたいなパンチのある人たちが主流になってきて、僕は流行に弱いから(笑)、「時代遅れだな」と思って、ごまのはえでは封印したんです。あと、ギターの駒沢(裕城)くんにはちみつぱいから来てもらうなど、野球チームみたいにトレードして、ココナツ・バンクというバンドになりました。

──なぜバンド名を変えたんですか。

はっぴいえんどから、はちみつぱいや乱魔堂などの流れで、ごまのはえだったんだけど、このあたりからトロピカルというか、いわゆるシティポップ的な感覚が芽生えてきて、ごまのはえっていう名前が古くなってきたんです。大瀧さんも同じ考え方で「バンド名を考えといて」っていわれていくつか候補を考えた中のひとつです。僕はヤシの木が生えている川べりの土手(bank)の意味で付けたんだけど、大瀧さんは、南の島の通貨が椰子の実で、動物たちがそれを持って銀行(bank)に行くイメージだって言うんですよ。まあそんな感じでバンド名も変わり、すでにはっぴいえんどのラスト・コンサートが決まっていたので、1973年のいわゆる「9.21解散コンサート」に向けて練習が始まるわけです。

──ココナツ・バンクは布谷文夫さんのアルバム『悲しき夏バテ / 布谷文夫 I』(1973年)でバックを務めていますが、単体でライヴを行っていたんですか。

いや、結局「9.21」の1日だけです。大瀧さんについていくのに必死で、メンバーのケアをする余裕がなかったんですよ。結局、僕とベースの藤本(雄志)くんと、ドラムの上原(裕)くんの3人が残って、その3人で住んでいたんだけど、すごく冷えた関係になっていて。それでも「9.21」はなんとかやり切ったんだけど、次の日の朝に2人から「もう銀次とはやっていけない、解散したい」と言われました。これからだという時だったので、泣きましたね。

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山下達郎と出会い生まれた不朽の名曲

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イベント情報

TOKYO POP CHRONICLE

TOKYO POP CHRONICLE

2026年9月26日(土) SGCホール有明
開場 15:00/開演 16:00

出演:伊藤銀次/尾崎亜美/金延幸子/清水ミチコ/杉真理/鈴木茂/ブレッド&バター/南佳孝 and more…
ゲストプレーヤー:林立夫(Dr)/小原礼(B)
スペシャルトーク:松本隆/鈴木茂/金延幸子/南佳孝/佐野史郎
House Band:高野寛(G/Vo)/高田漣(G)/伊賀航(B)/坂田学(Dr)/ハタヤテツヤ(Key)/ツヤトモヒコ(Cho)/吉永涼(Cho)

料金(税込):全席指定 14,000円/U-22チケット 7,000円
一般発売:2026年7月4日(土)10:00~

TOKYO POP CHRONICLE

シンガーソングライター・作詞作曲家・アレンジャー・音楽プロデューサー・ギタリスト。1950年12月24日、大阪府池田市生まれ。1972年"ごまのはえ"(のちに"ココナツ・バンク"に改称)として『留子ちゃんたら』でメジャーデビュー。

その後、山下達郎、大貫妙子らと共に"シュガー・ベイブ"に在籍。1975年名曲『DownTown』を山下達郎と共作。1976年大瀧詠一、山下達郎と『NIAGARA TRIANGLE Vol.1』をリリース。

アレンジャー/プロデューサーとして沢田研二、アン・ルイスなど数々のアーティストを手掛ける。1982年『笑っていいとも!』のテーマソング『ウキウキWatching』の作曲、1989年『イカすバンド天国』審査員として広く知られる。90年代はプロデューサーとしてウルフルズを大ヒットさせる。

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