楽しみ尽くした4日間、レポート前編は前夜祭からDAY1まで
偉大な足跡も偲んだ29回目のフジロック、音に表れたバンドとフェスの信頼関係とは
2026.09.10 17:00
TURNSTILE Ⓒ Masanori Naruse
2026.09.10 17:00
フジロックは1998年に豊洲で開催された第2回から全日参加している。行かなかったのは富士山のふもとの天神山スキー場で1日のみ開催された初回だけだ。ある時期からは前夜祭にも参加するようになり、毎年木金土日の4日間を苗場で過ごして月朝に帰るという動きを続けている。開催29回目となる今年もまた前夜祭から4日間、めいっぱい楽しんだ。(取材・文/内本順一)
異常な盛り上がりと伝説を生んだ前夜祭
前夜祭は毎年オアシスエリアで行なわれる。入場は無料。フジロックのチケットがなくても楽しめるもので、地元の人も自由に参加できるお祭りとして2002年からスタートした。そもそも地元の人たちへの感謝を表すイベントとして企画されたのだ。
そこで行なわれるのは、苗場音頭での盆踊り、抽選会、花火、そしてレッドマーキーでの「PRE-PARTY SPECIAL GIG」。SPECIAL GIGの出演者はいつも当日の大体16時頃にSNSで発表されるが、今年はやけに早く、15時頃に発表になった。毎年、初めに胸が躍るのがこの瞬間だ。
夕方、宿に到着して一休み。そのあと「今年もここに帰ってこれたんだなぁ」の思いを抱きながら会場まで歩き、19時過ぎにオアシスエリアに入った。盆踊りをやっている時間帯だ。今年は5月の時点で25日(土)の1日券が完売となり、続いて3日通し券も早い段階で完売となったことから人の多さは覚悟していたが、案の定、人、人、人、人。それでもいつもの景色、いつもの苗場音頭に軽く気持ちがあがる。だがしかし、いつもと違うことがひとつ。盆踊りのあとに行なわれる抽選会で、進行を務めるスマイリー原島さん(詳しくは後述)のあのダミ声が聞こえてこないのだ。そのことに一抹の寂しさを覚えながら、いいちこをやりつつ、花火を待った。5、4、3、2、1のカウントと共に花火が打ちあがる。今年もフジロックが始まったと、そう思える瞬間である。抽選会の進行を務めた女性の「原島さんに捧げたような見事な花火でした」という言葉が頭に残った。
花火が終わると同時にスタートするのがレッドマーキーでのSPECIAL GIGだ。今年の出演者は、このGIGの顔とも言えるDJ MAMEZUKA、メキシコのバンドであるSon Rompe Pera(ソン・ロンペ・ペラ)、Tempalayの小原綾斗を中心としたバンドFCO.、2003年からレギュラー出演しているコロンビアのサーカス団SAKURA CIRCUS、そしてお笑い枠からレイザーラモンRG。DJ MAMEZUKAはその年の代表的な出演バンドの曲や、その年に亡くなったレジェンド的なアーティストの曲からかけ始めることが多く、例えば昨年はスライ・ストーン追悼の意を込めて「ダンス・トゥ・ザ・ミュージック」から始めたものだったが、今年のオープニングナンバーは2日目に出演のベースメント・ジャックス「Good Luck (feat. Lisa Kekaula)」で、一気に熱狂を呼び込んだ。またつい数日前まで開催されていたワールドカップの興奮をここにも!とばかりにヴァンゲリスの「Anthem (The 2002 FIFA World Cup Official Anthem)」のtakkyu ishino remixをドロップ。続いて2日目に出演するTOMORAに関連づけてケミカル・ブラザーズ「WE ARE THE NIGHT」、さらにアンダーワールド「Two Mouths Off」と続け、めくるめく背景映像やレーザー光線の効果も手伝い、集まった者たちは熱狂の渦に巻き込まれた。
ビートが鳴りやむと、そこに第1回からフジロックに深く関わる立役者で、公式ファンサイト「フジロッカーズ・オルグ」を主宰する花房浩一氏が登場。開幕の挨拶と共に今年はやはりスマイリー原島氏が旅立たれたことに触れ、我々は生きているのだからめいっぱい楽しもうという希望のメッセージを伝えた。そのメッセージはかなりグッとくるものだった。
そして最初のバンド、Son Rompe Peraのライブがスタート。メキシコシティ郊外出身のガマ兄弟を中心としたバンドで、メキシコで伝統楽器として長く愛用されてきたマリンバ(奏者はふたり)を用いて、いい意味でいなたいパンクロックを奏でる。それ、コロンビア由来のリズムから派生してのクンビア・パンクと呼ばれるもので、彼らはその創始者的バンドなのだ。メキシコの情熱がマリンバやギターや歌に乗り、大半の人は初めて聴く音楽であろうに飛び跳ねずにはいられなくなる。最後はラモーンズ曲のフレーズを挿んだりもしつつ、クンビア・パンクの爆発力がどれほどのものかを伝えてステージを去った。そんな彼らは本番初日の午後のホワイトステージや深夜のクリスタルパレステントにも出演し、そこではさらなる熱狂を生んだらしい。彼らの熱をそのまま引き継ぎながら再登場のDJ MAMEZUKAがジプシー・キングスの「ボラーレ」をかけると、観客みんなが♪ボ~ラ~レ オ~オ~ とシンガロング。ああ、楽しい。この楽しさは前夜祭だからこそのものだ。
続いては今年の前夜祭の日本代表、小原綾斗率いるFCO.の登場。小原ともうひとりのギタリストはMIZ(24日のオレンジエコーに出演)の加藤成順だ。序盤はどことなくクルアンビン味のあるエキゾ・ファンクでじんわり攻めてくる感じだったが、徐々に温度をあげ、終盤のある箇所では小原が、また別のある箇所では加藤が前に出てノイジーなギターを炸裂させたりも。序盤とはうってかわってシューゲイズの赴き。手足の長いスラッとした加藤のシルエットがよく映える。佐々木集(MILLENNIUM PARADEほか)はベースをぶっ叩くように鳴らし、Kaya Lizのボーカルはソウルフルとキュートがいい塩梅に混ざったものだった。因みに中盤でスクリーンに映されたのはFucking Childs Orchestraというフルバンド名。クソガキ管弦楽団といったところか(管は入ってないけど)。

カラダが柔らかすぎるゴム人間みたいな男の芸など今年も新ネタを持ってやってきたサーカス団のSAKURA CIRCUSに続いては、恐らく今年の前夜祭出演者のなかで最も知名度の高いあの男、そう、レイザーラモンRGの登場だ。そもそもお笑い枠なんてものはフジになかったはずだが、昨年の前夜祭にどぶろっくが出てテレビじゃやれない下ネタをやりまくり大ウケしたことで、出演者決めの人が味をしめたのだろうか。実際、フレディ・マーキュリーのカッコをしたRGが「ボーン・トゥ・ラブ・ユー」を歌い出すと、沸きに沸く観客たち。それなりに凝った映像をバックに「フジロックあるある、早く言いたい~」とRG。「フジロック、雨が降りがち~」などネタ自体の精度は置いておいて、フジの前夜祭でRGがフレディのように歌っているというだけで異常に盛り上がる。
そのあともレッチリ、バックストリートボーイズ、織田裕二、布袋寅泰の曲で「あるある」を言い、最後は「もう、あるある関係ねえ~」と叫ぶとTOKIOの「LOVE YOU ONLY」を歌って、みんなで大合唱。ネタがどうこうよりも、とにかくRGの心臓の強さに感心してしまった。あとでXを見てみると「まさかフジロックでRGに感動させられるとは?!」「今年のベストアクトじゃね?」といった絶賛の声が。これもまた、ひとつの伝説。
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