“安楽死”をテーマにした涙とユーモアに溢れる作品
フランソワ・オゾン監督最新作『すべてうまくいきますように』2月3日公開決定
2022.11.07 14:00
© 2020 MANDARIN PRODUCTION – FOZ – France 2 CINEMA – PLAYTIME PRODUCTION – SCOPE PICTURES
2022.11.07 14:00
フランソワ・オゾン監督の新作「Tout s’est bien passé(英題:Everything Went Fine)が、『すべてうまくいきますように』の邦題で2月3日(金)より全国公開されることが決定した。
本作は監督がフランスの国民的俳優ソフィー・マルソーと初タッグを組み、”安楽死”を巡る父娘の葛藤を描いたフランス映画。『スイミング・プール』(2003年)の脚本家エマニュエル・ベルンエイムの自伝的小説を基に、安楽死を望む父親に振り回される娘の葛藤を描いたドラマだ。
監督は、『まぼろし』(2000年)や『8人の女たち』(2002年)、『Summer of 85』(2020年)など、新作を発表するたびに異なるテーマで観る者を圧倒してきた、フランス映画界の名匠オゾン。すべての人にいつか必ず訪れる”死”をテーマにしながらも、ユーモアを忘れない会話劇とスタイリッシュな映像で、家族の愛とは何か、人生とは何かを軽やかに問いかける、涙と笑いあふれる感動のドラマを完成させた。
芸術や美食を楽しみ、ユーモアと好奇心にあふれ、何より生きることを愛していた85歳の父アンドレが突然、安楽死を願う。脳卒中で倒れたことによって、身体の自由がきかなくなったという現実が受け入れられず、人生を終わらせるのを手伝ってほしいと娘のエマニュエルに頼んだのだ。小説家のエマニュエルは妹のパスカルと、父の気が変わることを望みながらも、スイスの合法的に安楽死を支援する協会とコンタクトをとる。一方で、リハビリが功を奏し日に日に回復する父は、孫の演奏会やお気に入りのレストランへ出かけ、生きる喜びを取り戻したかのように見えた。だが、父はまるで楽しい旅行の日を決めるかのように、娘たちにその日を告げる。娘たちは戸惑い葛藤しながらも、父と真正面から向き合おうとする──。
主演は、『ラ・ブーム』(1980年)の世界的大ヒットでスーパーアイドルとなり、今なおフランスの国民的俳優として愛され続けるソフィー・マルソー。本音しか言わない父の言動に時には傷つきながらも、父を人として敬愛する娘・エマニュエル役を情感豊かに演じた。深刻な時にも父から受け継いだユーモアを忘れないエマニュエルの愛らしさが、マルソーの魅力でより一層引き立つ。父のアンドレには、フランソワ・トリュフォー監督の『私のように美しい娘』(1972年)やエリック・ロメール監督の『美しき結婚』(1982年)で知られる、フランス映画の重鎮、アンドレ・デュソリエ。毒舌、頑固、ワガママ、いじわる、そのすべてのマイナスカードを魅力へと変貌させるアンドレというキャラクターを見事に体現している。母のクロードには、『さざなみ』(2015年)でアカデミー賞にノミネートされたシャーロット・ランプリング。オゾン監督とは、『まぼろし』、『スイミング・プール』、『17 歳』(2013年)でタッグを組み、作品に深みと品格を与えてきた。
妹のパスカルには、『17歳』でセザール賞にノミネートされたジェラルディーヌ・ペラス。父と姉の絆に複雑な想いを抱き嫉妬することもあるが、こうと決めたら真っ直ぐな姉を慕う健気な妹を演じ、美しい姉妹愛で観る者を癒してくれる。さらに、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』(1972年)や『マリア・ブラウンの結婚』(1979年)で知られるドイツ人俳優ハンナ・シグラが、安楽死を支援する協会から派遣されてくる、怪しげなスイス人女性を演じている。
最期の日を決めた父と娘たちの前に、愛や倫理、法律や宗教など様々な理由から反対する者たちが立ちはだかる。果たして父は決行するのか、考えを変えるのか、誰かが止めるのか、あるいは安楽死を禁ずるフランスの法律に止められるのか。サスペンスフルなストーリーテリングを得意とするオゾンが、緊迫感に満ちた展開の先に用意した、想像を裏切る結末とは。