2026.05.28 18:00
2026.05.28 18:00
20代の半ばにして、長く豊かな芸歴を持つ川島鈴遥と森田想。幼少期に俳優活動をスタートさせたふたりのキャリアが、ようやく交差することとなった。それも姉妹という関係性で、長崎で──。
ふたりの共演作となった映画『いろは』は、『おいしくて泣くとき』(2025年)などの横尾初喜監督が、自身の出身地である長崎を舞台に手がけたオリジナルのヒューマンドラマだ。消極的で内向的な性格の妹・伊呂波と、彼女とは対照的に思える姉・花蓮の心の交流を、長崎の美しい景色の中で紡ぎ上げている。
主人公の伊呂波を演じた川島は、「大切なのは言葉ではなく、感情そのもの」だと脚本を読んで感じたという。花蓮を演じる森田とともに、ふたりはどのようにして姉妹の関係性を構築していったのか。また、この共演にどんな想いを抱いていたのか。素直な心の内を語ってもらった。

言葉ではなく感情そのものが大切だった
──長崎を舞台に、素敵な作品が誕生しましたね。まずは脚本の第一印象について教えてください。
川島 “ザ・ロードムービー”みたいな作品になるんだろうなという予感がありました。そしてその奥のところに、姉妹の絆がある。
森田 たしかにこれはロードムービーだけど、それまでの私は長崎との接点がなかったから、どんな画が生まれるのか想像できなかったかな。
川島 あ、それは私も。
森田 それに加えて、私には兄はいるけど妹はいない。なので、実際の姉妹の関係性がどういうものなのか、脚本を読んだだけだと掴めなかった。伊呂波と花蓮がどんな姉妹なのか、監督や(川島)りりちゃんと話していかなきゃと思っていましたね。
川島 伊呂波と花蓮は、お互いに相手を認めたくない気持ちを持っているけど、心の奥底には“好き”の感情がある。これをどう表現していくのか、お話をする必要性を私も感じていました。それから、伊呂波の“変わりたい”という気持ちも。
──この作品に限らずですが、最初から演じる役の目線で読みますか。それとも、まずは全体像を掴もうという感じですか?
森田 私はまず、自分の役がどれくらい喋っているのかを確認しながらザッと読みます。じっくり読むのはそのあとですね。
川島 私も同じです。自分の登場シーンがどれくらいあるのかをまず確認しますね。
森田 だよね。セリフをひとつしかもらえなかった時代があるから。
川島 どんなセリフを話す役なのか、気になっちゃいますよね。
──個人的にグッとくるセリフがいくつもあったのですが、おふたりが惹かれたものはありますか?
森田 具体的なセリフというよりもシーンの話になりますが、伊呂波と花蓮が灯油を入れるシーン、あそこは脚本を読んでみて撮影が楽しみでしたね。物語の序盤のほうなので、この姉妹らしさが出るシーンだと思ったんです。長崎の方言も入るので、どんなリズムとテンポでの会話が生まれるのか、すごく楽しみだったな。
川島 重要なセリフはあらかじめ書かれていたけど、アドリブも多かったですよね。大切なのは言葉ではなく、感情そのもの。そう感じていたので、特定のセリフに引っ張られることのないまま、現場に入ったのを覚えています。
──川島さんの言葉、すごく納得です。
川島 花蓮が実家に帰ってきたことから物語が動き出しますが、実際の現場もそうだったんですよ。
森田 そうそう。
──というと?
川島 私のほうが先に長崎入りしてクランクインし、3日目くらいに花蓮が帰ってくるシーンを撮ったんです。

──まさに劇中のような!
川島 そうなんですよ。両親役の鶴田真由さんと長崎亭キヨちゃんぽんさんとの家族の空気ができてきたところに、森田想さんが入ってくるわけです。ちょっと緊張しました。
森田 花蓮が家族と接するシーンってあまりないから、現場に行っても私だけ他人行儀みたいな感じだったよね。
──なるほど、現実の関係性が作品の空気に表れていると。アドリブの話が出ましたが、全体的にすごく生々しいですよね。
川島 映画が完成したあとに台本を読み返してみると、書いてあるセリフをちゃんと言ってなかったことに気がつきました(笑)。
森田 ええ、そうなの?
川島 そうなんです。監督から何も言われなかったから、自分でも気がつかなかったのですが、「知らんし」とか、自然と出てきた言葉が採用されていたりします。
──言葉よりも感情、ですね。森田さんはアドリブに関して何か覚えていますか?
森田 花蓮と男たちのエピソードのあとには必ず、伊呂波との言い合いがありますよね。どれも私としては基本的に、台本どおりにやっていたと思います。
──そうなんですね。
森田 最後の言い合いはアドリブで自由にやってほしいと事前に言われていたのですが、それがいったいどんなものになるのか、やってみないことには分かりません。感情が前に出過ぎて、お芝居がぐしゃっとなるかもしれない。そういうことを考えたときに、そこにたどり着くまでは、締まりのある画と芝居を届けたいと思ったんです。
──締まりのある画と芝居を……すごい……。その監督的な視点を持って演じるのは、どの作品でもなのですか?
森田 役者の芝居で作品がダラけた印象になってしまうのが嫌なんです。というのも、私は間を空けてしまう癖があったりして、客観的に観たときに「ダメだな」って思うんですよ。だから普段から意識していますね。

──森田さんは幼少期から俳優活動をされていますが、その気づきを得るのに何かきっかけがあったんでしょうか。
森田 完成した作品の自分の芝居を観るたびに、そう思ってきました。セリフを口にするのがダラダラしていて「長えな」って思ったり、シンプルに「つまんな」と感じたり。自分で観ていてビックリしちゃって、周りの人に言うんですよ。「ヤバいヤバい……どうしよう……ヘタすぎるよ……」みたいな(苦笑)。
川島 その感じ、めっちゃ分かります……。
森田 ね。もう反省の連続。
川島 出演作を観たら、まずマネージャーさんに言っちゃいます。「本当にヤバいです……どうしましょう……」って(苦笑)。
森田 (笑)。
川島 『いろは』では私なりに、ふたりの関係性を表現するためのバランスについて考えていました。姉妹で感情をぶつけ合ったからといって、急にその後の関係性に変化が表れるわけじゃないと思うので、その微妙な変化のニュアンスが伝わったら嬉しいな。
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