2026.07.21 18:00
2026.07.21 18:00
ステージの上では自らが光源のように輝き、バラエティでは抜群のトークスキルで場を盛り上げる。北山宏光には、長きにわたって芸能界の一線に立つ者だけが持つ華がある。
けれど役をまとうと、がらりと雰囲気が変わる。その光のない目はブラックホールのような引力を放ち、彼から立ちのぼる不穏な気配はまるで吹雪みたいに心を凍てつかせる。
『氷血』は、そんな北山宏光の俳優としての武器が存分に発揮された映画だ。演じるのは、妻子を連れて実家へと帰ってきた主人公・稔。雪に覆われた村で、平穏に見えた稔たち一家の日常は徐々に崩壊していく。
稔の心を狂わせた“白い女”の正体とは──。ステージやバラエティでは決して見ることのできない、怪優・北山宏光がここに誕生する。

ホラーで大事なのはエンタメとしての見せ方
──稔の常軌を逸していくさまが、実に恐ろしかったです。北山さんは稔という役にどうアプローチしていきましたか。
稔の根本にあるのが、やっぱり家庭環境なんですよね。そこをまずブレない軸として持とうと。台本に描かれてはいない部分まで、きっとこういう背景があったんだろうと頭の中で想像するんです。なぜ彼は東京に出てきたのか。なぜ地元に帰ってこようと思ったのか、空白の部分を埋めていって。あとは、それに対して表層の部分──要は稔が持つ二面性をどの段階でどれくらい出していくのかということをその都度監督と話し合い調整しながら演じていきました。
──首を傾けたり、痙攣したみたいに小刻みに震えたり。あの一連の動きがすごく不気味で面白かったんですけど、台本に書いてあったものですか。それとも北山さんご自身のアイデアで?
ざっくり台本に書いてはあったと思うんですけど、どこまで書いてたかな。そのあたりについては映像としてのテクニックだなと思いながら台本を読んでいました。僕にとって、今回がホラー初挑戦。現場に行って、ホラーってこんなにもロジカルでテクニカルなものがつまっているんだなという発見がたくさんあったんですよ。
──たとえばどういうことですか。
たとえば僕の背景に誰かいる、その恐怖を表現したいとなったときに、あえて奥の部分を際立たせるような撮り方をするし、僕も見せ方を考えなくちゃいけない。そういうアプローチはホラー独特です。今おっしゃった動きが不気味に感じたのも、どの位置にカメラを置くのか、どう編集するのかという、いろんなテクニックが絡み合って恐怖心を煽られたからだと思うんですね。ホラー映画の恐怖というのは、いろんな計算の上に成り立っているものなんだと、自分でやってみて実感しました。
──となると、そういった恐怖を煽るようなシーンは、いわゆる平場とは演者もギアの入り方が違ったりするんですか。
より画を意識しますよね。感情のつながりも大事だけど、僕はエンタメだと割り切って、見せ方を重視するようにしていました。どうやったら怖い画が撮れるか。俳優は、そのためのピースの一つなんだなと。

──それこそホラーでは定番のカメラ目線で恐れおののくみたいなシーンも、人とお芝居を交わすシーンとはまったく別の難しさがありそうです。
やっぱり全然違いますよね。目の前はカメラですから、もう想像でやるしかない。あとは驚くにしても、実際に目を見開いて驚く人なんて実はあんまり見たことないじゃないですか。だから、やりすぎると寒くなる。そこの寒すぎないラインを探さないといけないというのはあります。
──見せ方が大事という意味では、他のジャンルよりモニターチェックの頻度も多かったりしましたか。
現場が寒すぎてモニターなんて見れないですよ(笑)。
──なるほど(笑)。
モニターのほうへ行くにも雪が積もってるし、そこはもう撮れたもの勝負でした。監督から「もうちょっと大げさにやってもらえますか」と言っていただくことがあって。でも、自分ではどんな感じで映っているのかわからないから、どれくらいまでやっても不自然ではないか手探りなところがあって怖かったんですけど、そこはもう監督がオッケーと言ってくださるならオッケーなんだと信じてやっていましたね。

──ロケ地は福島だったと聞いています。雪の中での撮影はやはり大変でしたか。
僕、基本的に嫌いなものはないんですよ。ただ、寒いのだけは嫌いで。まさかこんなに寒いとは思っていなかったです(笑)。歩くだけで大変だし、途中で雪が降ってくるとホテルに帰れなくなっちゃうから、そのときは早めに帰らないといけなくて。でも次の日の朝になると雪が積もって、道が全然わからなくなる。来た道と同じはずなのに景色が変わりすぎていて、「ここの信号を右折だっけ?」ってアタフタしてました。
──なるほど。子役の方と雪遊びをしたみたいなほっこりエピソードを聞こうと思ったんですけど……。
そんな余裕があったのは最初の2日くらいです(笑)。あとはもう戦いでした。寒いと体がこわばって、何もしていないのにあちこちが痛くなるんです。ホテルに帰ったら電波はあるけど、現場には電波が飛んでなくて。ある意味、世間から隔離された環境の中でずっと撮っていました。でもその分、集中できたのは良かったかなと思います。

──そんな厳しい撮影環境の中、ホテルに帰ってからケアとして大事にしていたことはありますか。
とにかく夜ごはんは温かいものを食べるようにしていました。マネージャーさんと「今日は何食べよう」という話をしながらお店を開拓して。それがいちばんの楽しみでした。
──ちなみに福島って何がおいしいんですか。
やっぱり馬刺しですね。馬肉がとにかくおいしくて、焼肉のメニューにも馬肉があるんですよ。ヒレ肉みたいな感じで、さっと焼いてタレで食べるっていう。あれはすごくおいしかったですね。
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