Bezzy[ベジー]|アーティストをもっと好きになるエンタメメディア

アーティストをもっと好きになるエンタメメディア

INTERVIEW

話題のバーチャルクリエイターが音楽で提示する新しい価値観

ぶつかり合いこそ成長の源、“間”が育む夏絵ココの終わらない思考実験

2023.09.02 17:00

2023.09.02 17:00

全ての画像・動画を見る(全11点)

摩擦があるから知らない一面に気付ける

──お話を聞いていると、夏絵さんだけでなく、博士も夏絵ココを作ってからいろんな発見があるんだろうなと。

この2年ぐらいで、博士も夏絵ココも急激に意識していますね。「これにはどんな意味があるのか」と考えることが大好きなんです。でも博士と夏絵ココはまったく同じ考え方を持っているかというと違って、たとえば博士は「幸せであればいい」という大衆的な願望や欲望を持っているんですよね。でも夏絵ココは、博士と夏絵ココという活動者の間にいるような存在で。夏絵ココは博士の一面であり、博士も夏絵ココの一面でもある。だからこそ、夏絵ココは博士とは違う観点で「これにはどんな意味があるんだろう」と探しているんだと思います。

──となると夏絵ココは博士の考える理想の姿なのでしょうか? それとも博士自身は出せない博士の本質的なところなのでしょうか。それとももっと外に開けた存在ですか?

そのなかだと外に開けた存在ですね。リスナーさんのことを「研究員」と呼んでいるんですけど、博士ももともと人とぶつかり合うことで生まれてくるものを大事にしてきたので、わたしのこの姿形やフォーマットを使って研究員さんとぶつかり合ってできているのが夏絵ココだと思います。研究員さんとやり取りをするうえでいろんなキャラクターを発信してきたけれど、研究員さんからいちばん好きと言われたのが猫ちゃんの姿と、この髪色とこの髪の長さなんです。そこに自分や博士の好きなアートを画面の中に入れて作っているんですよね。

──なるほど。研究員さんとの間でどんな夏絵ココが育っていくのかという実験ということなんですね。

博士が夏絵ココを作ったのにはまた全然別の理由があるんですけど、活動していくなかで研究員さんとのぶつかり合いをして夏絵ココを育てていくことが確立されていきました。夏絵ココを作った当初、博士もこんなことになるなんて思ってなかったですね。でもこの状況を、博士も夏絵ココもすごく楽しんでいるんです。

──たくさんの視聴者と、博士&夏絵さんの作り出す間。想像するだけで、自分の軸が折れた瞬間に溺れてしまいそうな気がしてしまいます。

毎日がジェットコースターみたいです。研究員さんによって違うことを言われるのは当然で、同じ人であっても日によって全然違うことを言うんですよ。

──へええ。面白いですね。

研究員さんを見ていて気付いたんですけど、人は体調や気分によって言うことが変わるんですよね。「今日も元気だね」と言っていた人が、次の日に「体調悪いの? 疲れてるよね」と言ったりするんです。わたしは思考実験で育まれる間の存在なので、わたしのことを体調が悪いと感じるということは、その人が疲れているからだとも思うんですよね。毎日毎日いろんな人からまったく違う刺激が来るので、博士はそれに折り合いをつけながら楽しんで、夏絵ココはどちらかというと「もっと刺激を注ぎ込んでくれ!」という感覚が強いのかなと思います。

──「Virtual mod Real」は「アンコンシャス・バイアス(無意識バイアス)からの解放」をテーマに制作されたとのことですが、なぜこれをデビュー曲のテーマになさったのでしょう?

アンコンシャス・バイアスは人間誰しもが持っているのに、摩擦が起こらない限りは自分では気づけないものだと思うんです。たとえば夏絵ココを作った博士は、友人に「樹齢400年の木みたい。何をどうされても動かない」と言われるくらい頑固なんです。だから他人からのアクションが加わらないと変われないんですよね。どんな人間も生きているなかでいろんな摩擦があるからこそ自分でも知らなかった自分の一面に気が付くし、「たくさんのアンコンシャス・バイアスを抱えながら生きることこそがあなたですよ」と言いたかったんです。

──となると夏絵さんはアンコンシャス・バイアスを悲観的に捉えているわけではないということですね。

ポジティブに捉えてますね。そもそも人間は主観的な生き物だし、そもそもバイアスをなくすなんて無理だと思うんです。だったらたくさんバイアスをつけて、自分で自分を守るためのものにしていったらいいんじゃないかなって。

──「既成概念を壊して新しい価値観を創造し、自分自身の感覚や感情を気付かせる」という夏絵さんの活動につながるマインドであると。

アンコンシャス・バイアスを自覚することは自分を受け止めることであり、相手を受け止めることでもあって、受け止めないときや受け止められないときもあると思うんです。それも含めて「あなた」なんですよね。だから研究員さんから「ココちゃんを夜観て、翌日仕事に行くと全然違う視点になって面白いんだよね」という感想をいただくこともあるんです。そうやって自分を知って、いろんな視点を知ることで人間は成長していくし、これこそが人間だなとすごく思ったんですよね。研究員さんとのぶつかり合いで博士も成長しているし、みんなそれを楽しんでいるんです。

──確かに「Virtual mod Real」は「あなたはどう?」という問いかけの要素が強いなと感じました。いま話していただいたことを含めて考えると、人生賛歌としての側面もあるかもしれないですね。

ああ、そうですね。「Virtual mod Real」というタイトルの由来にもなるんですけど、夏絵ココにとってVirtualもRealもどっちも夏絵ココの世界なんです。みんなが観ている夏絵ココはバーチャルだけど、画面の向こう側にいるわたしから見ればリアルなんですよ。わたしのリアルが、みんなから見るとバーチャル。その接地面が夏絵ココなんですよね。

──“mod”という言葉を使ったのにもそういう理由が?

modにはいろんな意味がありますけど、わたしは数学の数式のmod(※合同式。割り算の余りに注目した等式。例:10を3で割った余りと、7を3で割った余りはどちらも同じなので、「10≡7(mod 3)」と記載する)という意味で使っています。modという概念こそが世界であり、バーチャルとリアルの余剰がこの現実世界であると解釈したんですよね。

──“mod”はパソコンゲームの改造データや、ギターのモジュレーション、モディファイなどを創造させる言葉でもありますが、夏絵さんのなかでは合同式だったんですね。

面白いのが、どの意味のmodとして捉えて解釈したとしても、結局行き着く先は一緒なんですよね。だからこの言葉が適していると思ったんですよね。このタイトルに関してだけでなく、物事は一人ひとりが自分で決めることが大事だと思うんです。

次のページ

アンコンシャス・バイアスはエモい!?

全ての画像・動画を見る(全11点)

作品情報

夏絵ココ『Virtual mod Real』

『Virtual mod Real』ジャケット

『Virtual mod Real』ジャケット

夏絵ココ『Virtual mod Real』

2023年8月23日デジタルリリース

配信はこちら

2021年10月31日に誕生し、TikTok LIVEを開始。
2022年には言葉を発さず、身振り手振りだけでリアクションする「無言配信(思考実験)」が話題となり約2000人だったフォロワー数が半年で150万人となる大人気クリエイター。
配信中はゲームに出てくるNPC(Non Player Character)のような動きのクオリティが高く国内外で注目されている。
無言配信のパフォーマンスが終わるとコメントやギフティングへのお礼などを直接伝える時間を設け、「無言配信」と「会話」の両方を楽しめる構成となっている。
また、2023年7月にはそのパフォーマンスが海外の配信者でもトレンドとなり、「NPC LIVE Streamer」の生みの親として大手海外メディアINSIDERでも取り上げられ、世界からも注目されるTikTokクリエイター。

RANKINGランキング

RELATED TOPICS関連記事

  • デビュー曲「Virtual mod Real」では作詞も手掛ける TikTokの無言配信で注目を集めたバーチャルクリエイター・夏絵ココがアーティストデビュー

    2023.08.18 20:00

    TikTokフォロワー150万人超えのバーチャルクリエイター・夏絵ココが、 8月23日(水)に「Virtual mod Real」を配信リリースすることが決定した。 夏絵ココは言葉を一言も発さず身振り手振りでユーザー交流を図り、ゲームやアニメ空間にいるような世界を創る配信<無言配信>で昨年TikTok内で急速に注目を集め、「TikTok Awards Japan 2022 LIVE Creator of the Year」最優秀賞を受賞。さらに「NPC LIVE Streamer」の生みの親として大手海外メディアINSIDERにも掲載されるなど、今国内外問わず注目を集めている。 デビュー曲とな<a href="https://bezzy.jp/2023/08/30846/">…

    #夏絵ココ

  • “すべての愛を愛す”を掲げる平均年齢17歳の8人組が本格始動 武器は伸びしろと結束力、EBiDANのニューカマー・ICExがメジャーデビューにかける思い

    2023.08.28 17:00

    ICExにおける愛はコミュニケーション ──ICExというグループ名はアイスクリームや氷が与える清涼感や、溶けてしまう=今しかないもの、キラキラしたもの、可愛らしさなど様々なイメージから生まれた言葉だと思うのですが、今年3月のICEx結成お披露目イベントでの皆さんの挨拶を聞いていると、活動の中核にあるのが「全ての愛を愛す」というコンセプトなのではないかと感じました。皆さんはこのコンセプトをどう解釈していますか? 中村 世の中にはいろんな種類の愛がありますけど、僕らからCOOLer(※ICExのファンネーム)の皆さんに愛を捧げながら、COOLerの皆さんが持っている愛を分けてもらうようなイメージ<a href="https://bezzy.jp/2023/08/31143/">…

    #ICEx#インタビュー

  • シーンを席巻すべく突き進む4人組バンドの音楽観に迫る 「今はまだ膨大なポテンシャルの一部」クジラ夜の街、さらなるネクストステージへ

    2023.08.16 18:00

    タイアップは共鳴し合う作業 ──『春めく私小説』は本当に色とりどりですし、いろんなアイディアが詰め込まれているし、それぞれの曲にそれぞれの物語と世界があるんですけど、それを包括するような感じで「要するにクジラ夜の街っていうのはこういうことを歌うバンドなんだ」っていうのが今まで以上にすごく伝わってくる作品になったなと思います。 宮崎 そうですね。やっぱり今、ライブにこれだけ愛してくれている方々が来ていただけるっていうのは、第一歩として間違って無かったんだなあと、このツアーを通してまず思いましたね。 ──そしてその中で次に出てきたのがこの「マスカレードパレード」という曲で。またしてもいい意味で裏切<a href="https://bezzy.jp/2023/08/30000/">…

    #インタビュー#クジラ夜の街

  • グラフで語る25年間とNGT48卒業後の未来予想図 中井りかと辿る人生曲線、あったかい家からのひとり立ち

    2023.08.11 17:00

    音楽好きの中学生 〜 オーディション合格 ──スペシャをよく見てたということで、48グループ以外だとどんな音楽が好きだったんですか。 中学に入ってからはメッセージ性の強いバンドが好きでした。RADWIMPSさんはめちゃ好きで聴いてましたね。その前だと、安室奈美恵さんとかモーニング娘。さんとかを聴いてました。あと、柴咲コウさん、西野カナさんとか王道のMステに出るような面々を聴いてました。 ──自分で歌ったりは? ヒットチャートの上位の曲はほとんど全部歌えました。ずっと家でスペシャが流れてるから自然と覚えていて(笑)。それくらい音楽が好きでした。J-POPもロックも聴くし、父が洋楽が好きで車で流れ<a href="https://bezzy.jp/2023/08/30235/">…

    #インタビュー#中井りか

  • 門出を祝う新曲「あのさ、いや別に…」とグループのこれから 中井りかがNGT48で育んだ成長、佐藤海里&北村優羽に継承されるアイドル魂

    2023.08.10 12:00

    近づけば近づくほど偉大(佐藤) ──2人に挟まれてる中井さんが、真ん中で肩をすくめて聞いてますよ。 中井 いやいや、取材で後輩からたくさん褒めてもらえるんですけど、そのたびにむずがゆい気持ちになるんです(笑)。そんな大層な人間じゃないのに、ありがとうございます。 ──(笑)。では、中井さんの卒業の経緯を聞かせてもらえますか。 中井 ドーンって感じのこれがきっかけってものがあって卒業を決めたわけじゃないんですよ。私はNGT48でやりたいことを徐々にできて、コロナ禍も明けて、みんなの声を聞けるようになって、もう思い残すことはないなって思ったんです。私のアイドル人生ほんとに幸せで、これ以上楽しんだら<a href="https://bezzy.jp/2023/08/30159/">…

    #NGT48#インタビュー#中井りか#佐藤海里#北村優羽

OFFICIAL SNS

  • Twitter
  • instagram

COLUMN & SPECIAL連載&特集

ALL SERIES

RANKINGランキング

OFFICIAL SNS

  • Twitter
  • instagram