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久保田悠来の◯ける漫画 第6回

化ける──九龍ジェネリックロマンス

2023.04.20 17:00

2023.04.20 17:00

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今回紹介するのは『九龍ジェネリックロマンス』

このエッセイではお馴染みのタイトル推測から始めよう。
当初は表紙も相まってやはり中華風の世界観で繰り広げられる恋の話かなくらいだった。もちろんところがどっこいである。
主人公は眼鏡で大人しめで清潔感もあるがどこかすれた雰囲気と色香を漂わせる不動産勤めの女性鯨井。
そしてそこの同僚の男性でなぜか気になる存在の工藤。
そしてその舞台となる街が“九龍”なのだ。

『九龍ジェネリックロマンス』1巻より ©眉月じゅん/集英社

まず先に言いたい。
この物語、絵で魅せてくれる。
鯨井の地味ながら漂うフェロモンや工藤の武骨な優しさはもちろんのこと、コマ割りやコマの使い方で表される感情の機微の間が好み、てか好き。
そしてそれが最大限に生かされる練られたストーリー展開。
素直に読み進めた最初の感想は、なるほどどこか懐かしい甘酸っぱい大人の恋の話、かと思いきや進めば進むほどふとした表情、ひとコマで見せる謎の間やハテナが随所に散りばめられ、その違和感が違和感なく混在しこちらの好奇心と探求心までも加速させてくれる。

もちろんやっぱり恋の話でもあるのよ。
そう、恋ではあるんだけど、どうしてもこの世界はなんなんだろうと想像や推理せざるを得ない物語構成でこちらも沢山のインプットの引き出しから自然と構えるのだが、こちらが肩肘張って推理してたものに仰々しい答え合わせはなくしばらく当たり前のようにすすんで提示してくれるので、すんなり喉元通って止まらない快感もあるのである。

『九龍ジェネリックロマンス』1巻より ©眉月じゅん/集英社

さあ話を戻そう。
九龍はクーロンである。
そうクローンなのである。
この現最新最先端であろうクローン技術の世界観をこのノスタルジック全開の九龍の世界に落とし込んでるのですよ。
そしてジェネリックよ。
つながったよね。
クローンとジェネリック。
工藤は鯨井に時折みせる
何とも言えない間と顔。
皆いう。
九龍にはどこかなつかしさがあると。
そして説く。
九龍に恋してると。

『九龍ジェネリックロマンス』1巻より ©眉月じゅん/集英社

ここまででひとまず1巻読んでみようと思ってくれたそこのあなた。
必ず2巻も読んでください。
そしてあなたがそれを読み終えたなら、また1巻読んでると思います。
1巻すべてがひっくり返るんです。
優しくて残酷な場所。
記憶がない過去の自分。
自分が育て同じようになった男。
温かい住人。
わけあり人間だらけ。
私じゃない私をみてる。
絶対の自分。
すべて九龍で起きてることなんです。

姿形が一緒なら同じ人なのか。何かのふりをするということで造りあげられるもの。外から形作るものと内から作るものとの違い。
なりたい自分になろうとする姿はウソじゃないし、そこに勇気づけられるとともに自分は何者なのだろうかと自問自答することでしょう。
なんだか小難しい風に捉えられたかもしれませんが安心してください。
もちろんロマンス。
鯨井さんや魅力的な登場人物達が色々と素直になっていく様が愛おしく微笑ましい抱きしめたくなるヒューマンドラマ、ファンタジー、ラブロマンス……うーんジャンルレス、そうそれが九龍ジェネリックロマンスなんです。
気軽に読んでください。
私が言ってたことがわかるはず。

そして気づけばあなたの手元には中華料理があるでしょう。
もちろんかく言う私もこれを書きながら食べてます。
しかしその中華料理、九龍ジェネリックロマンスのそれはそれは複雑で混沌とした幸せな甘酸っぱさと混ざって“化ける”かもね。

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作品情報

九龍ジェネリックロマンス

『九龍ジェネリックロマンス』1巻表紙 ©︎眉月じゅん/集英社

『九龍ジェネリックロマンス』1巻表紙 ©︎眉月じゅん/集英社

九龍ジェネリックロマンス

著者: 眉月じゅん
『週刊ヤングジャンプ』(集英社)にて連載中

【ストーリー】
此処は東洋の魔窟、九龍城砦(くーろんじょうさい)。
ノスタルジー溢れる人々が暮らし、街並みに過去・現在・未来が交差するディストピア。
はたらく30代男女の非日常で贈る日常と密かな想いと関係性をあざやかに描き出す理想的なラヴロマンスを貴方に──。

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久保田悠来

アーティスト情報

1981年6月15日生まれ、神奈川県平塚市出身。
2006年舞台デビュー以降、テレビや映画でも活躍。
7月6日水曜22時から放送のフジテレビ系ドラマ『テッパチ』に出演。

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