2022.12.27 18:00
2022.12.27 18:00
今年3月に1st EP『LOOK』をリリースしたシンガーソングライター、ao。オンタイムなポップサウンドの精度、陰影に富んだソングライティングの筆致、そしてすでに備わっている独立した歌のグルーヴという点においても、彼女を語る際にどうしても「10代とは思えないという」枕詞を添えたくなるのは重々承知だ。しかし、それだけの切り口では彼女の歌の本質を捉えることはできないということを、はっきりと提示しているのが新曲「瞬きと精神と君の歌と音楽と」である。これまでの様相とは異なるあり方で、オーガニックかつオーセンティックな普遍性をまとったラブソングを作り上げたaoにその現在地を聞いた。
──aoさんの歌は一貫して陰影の表現を大事にしていますよね。
普段、世の中に対して思っていること、「こういう仕組みはおかしいんじゃないかな」と思うこと、そういう社会への不満、みたいなのが根底にあって。その上で具体的な自分の体験談とかを曲の詞にすることが多いので、そういう暗い感情が歌詞やメロディーラインに表れているんだと思います。そこから作ったメロディーラインをアレンジャーさんに渡したり、そのメロディーや歌詞にインスパイアを受けて「こういう楽器を組み合わせるとかっこいいな」と思ったりするので、そうやってだんだんと陰影を感じる音楽が形成されていってるのかな、って思います。
──その核は歌を書き始めた当初から感じていましたか?
「no THANKYOU」も当時、友達と喧嘩した時の話で。次にリリースされたデビュー曲の「Tag」は、自粛生活の中で、ちゃんとやりたい自分とできない自分の追いかけっこ、みたいなジレンマ的な気持ちを書いたりしたので、割と最初からそういうマインドで曲を書いていましたね。
──幸福感を覚えるような瞬間を歌にしたいとはあまり思わない?
あまり思わないですね。結構「嬉しい」っていう感情って「嬉しい」で終わっちゃうことが多くて。その先の感情を考えたりとかもあんまりしないんです。でも「悲しい」とか「悔しい」とかって「なんでこうなったんだろう?」とか、原因を探したりするじゃないですか。だから深掘りしやすいっていうか、曲にしやすいっていうのがあります。
──ずっと思考をし続けている人の歌だと思うんです。
そうですね。ずっと考えちゃうタイプです。全然曲を作る前の話なんですけど、小学生の時にお友達とトラブルというか仲間割れしちゃったことがあって、先生に呼び出しされて(笑)。でもその時、私たちの中では既に完結していたんです。それでも先生が干渉してきて、「原因は何なんだ?」と問い詰められたりして。その時に「なんでこんなことするんだろう?」ってすごい疑問に思いました。きっと先生達は、小学生だから根本的なものをまだ解決できてない、根本から解決したい、と思ったのかもしれないんですけど、そうやって掘り起こされて、解決してたのにまた散らばっちゃって。
皆きっと、個人個人が深く考えてるんじゃないかなって思うんです。私自身は特に、グループとか団体の中でもリーダー的な立ち位置になることが多かったので「この子はこういう時にこう思ったからこうしたんだろうな」と、自分の中でも色々考えていて。そこから「じゃあ、こうしよう」って結論を出して意見をいうことが今まで多かったです。
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