映画『ひとりたび』で描いた30代のリアルな帰郷願望とは?
「年を重ねた今のほうが、素直になれる」岡本玲×石橋夕帆が分かり合う同世代の心地よさ
2026.07.07 18:00
2026.07.07 18:00
少年漫画に社会への苛立ちをぶつけてました
──お二人は、いわゆる平成1桁世代ですよね。1桁世代ならではのあるあるというと?
石橋 やっぱり自分たちの世代の音楽が良かったと思ってる節はある気がします。『Mステ』誰が出てきても素晴らしい、みたいな。
岡本 素晴らしい! 音楽番組最高だった!
石橋 私はバンドが好きでしたけど、アイドルもモー娘。がいて嵐がいて。別に今の音楽が悪いわけじゃないですけど、「俺たちの頃は〜」みたいな気持ちはこの世代は持っている気がします。
岡本 ファンだけじゃなくて、全国民から支持される音楽がありましたよね。
石橋 ジャンルをまたいで音楽が聴かれた最後の世代だったのかなって。あとはアニメも。90年代アニメ最高だと思ってる。セル画の時代最高みたいな(笑)。私は『HUNTER×HUNTER』贔屓なんですけど、『HUNTER×HUNTER』のヨークシン編と『犬夜叉』も初期の質感は今のアニメには出せないものがあるなって。
岡本 アニソンもすごい良かったですよね。
石橋 わかりやすいところで言うと、「残酷な天使のテーゼ」とか。
岡本 自分たちのカルチャーが好きっていう気持ちは、もしかしたらどの世代もあるものかもしれないですね。

──ちなみにプリクラはどの機種ですか。
岡本 花鳥風月です!
石橋 わかる! 花鳥風月!
岡本 今でも花鳥風月がいちばんいいと思っています。
石橋 写り方も落書きもあの頃がいちばん良かったですよね。当時は今より景気が良かったから、109系とかサブカル系とか若者文化がめちゃくちゃ活発だった印象があります。だから、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』じゃないですけど、「あの頃は最高だったよな〜」という郷愁が年々濃くなっている。たぶん平成版のオトナ帝国があったら、私は洗脳されちゃってると思います(笑)。
──映画でも美咲が友達とファミレスに集合していますが、当時は何かあるとずっとファミレスに溜まっていました。
岡本 溜まってました〜。もう何を喋っていたかなんて全然覚えてないんですけど。覚えてないことが幸せなんですよね。
石橋 恥ずかしい話ですけど、私はファミレスで「恋して〜!」って言ってました(笑)。
岡本 え〜、可愛い〜(笑)。
石橋 女子高生が雁首揃えて「恋して〜!」って言って。ごく稀に他校の男子といい感じになっている子がいましたけど、大抵の子は具体性のない「恋して〜!」話を延々していました(笑)。
岡本 私もそういう話してたのかなあ。

──その具体性のない恋して〜欲求を当時はどうやって消化していたんですか。
石橋 基本フィクションで補っていましたね。その頃ドンピシャで読んでいた少女漫画はなんだろう……。『となりの怪物くん』の頃はもう大学生になってた気がするし。
岡本 『天ない(天使なんかじゃない)』とかですか?
石橋 『天ない』は私たちよりもっと上の世代なんですよね。たぶん『君に届け』とか? あ!その前に『CRAZY FOR YOU』だ。めちゃくちゃ素晴らしい漫画で、夢中になって読んでいました。
岡本 私は恋愛ものは胸が苦しくなるから避けてて、少年漫画ばっかり読んでいました。主にジャンプ系とか?
石橋 その頃だと『NARUTO -ナルト-』とか『銀魂』とか?
岡本 そうですね。あと『BLEACH』とか好きでした。
石橋 私が少年漫画にハマったのはもうちょっと後なんですよね。受験のストレスをぶつけるように少年漫画にハマって。受験が終わった直後から爆発的に読みあさっていました。
岡本 私は少年漫画に社会への苛立ちをぶつけていましたね(笑)。
石橋 ファンクだ! だいぶ目がギラついてる(笑)。
岡本 少年漫画って熱いじゃないですか。自分の未来は明るいと信じる心とか、それこそ正義とか救済とか、そういうテーマに惹かれる10代でした。

──美咲にとっての初恋の人のように、もうそんなに深い関わりがあるわけではなくて、たぶん会うこともないけど、なんとなくずっと心に残っている人って誰にでもいる気がしていて。お二人にも、そんな人はいますか。
石橋 私は中高一貫の女子校育ちで、当時そんな言葉は認識してなかったんですけど、スクールカーストというものを自分の中で明確に持っていて、ここのグループは強いとか、自分はこのクラスの中でどのあたりの立ち位置だとか、そういうことを結構考える子でした。だから、卒業アルバムの後ろのほうにある寄せ書きのページも、白紙だと大人になったときに悲しいんじゃないかみたいな謎の強迫観念で必死に埋めようとして。片っ端から声をかけた中の、ある一人の女の子のことが、ずっと忘れられないですね。
──それは、その子と何があったからでしょうか。
石橋 私、当時、「ぽんち」というあだ名だったんですよ。で、その子が寄せ書きに「私も本当はぽんちちゃんって呼びたかったんだ」って書いてくれて。
岡本 えー!
石橋 それを読んだときに、うわっと泣きそうになっちゃって。正直、その子とはつながりも薄かったんですよ。穏やかで優しい雰囲気の子だったんですけど、同じグループだったわけでもなく、気まぐれにふらっと話しかけてみたりするくらいで。でも、なぜかその子が書いてくれた寄せ書きがずっと突き刺さっていて。今、その子のことを思い出しました。
岡本 私は小学校のときの友達かな。別にいつも一緒にいるってわけじゃなかったんですけど。あるとき、私がクラスの中で悪者になりかけた時期があって、その子とその子のお母さんだけが私を全力で守ってくれたんです。当時の私はちょっとスレていたから、誰も守ってくれなくていい、自分が悪者でもいいとあきらめかけていて。でも、その親子が声を上げてくれたことで人の体温を感じることができた。卒業してから中学も違っちゃって、もう全然会ってないんですけど、今でも何かあるたびにふっとその子のことを思い出します。
──その人に、もし今会えたらお二人はどうすると思いますか。
石橋 私は卒業してからここまでどうやって生きてきたのかを聞いてみたいです。どういう仕事に就いたとか、今何してるとか、深く掘り下げるというよりは、そういう何でもない話をしてみたいですね。
岡本 私は「ありがとう」ってハグするかも。あのときもお礼は言ったと思うんですけど、照れ隠しでちゃんと伝えられなかった気がするので。ハグとか、あの頃のほうができないじゃないですか。今のほうが素直に感謝の気持ちも出せるので、「元気で良かった〜!」ってハグします。




