映画『ひとりたび』で描いた30代のリアルな帰郷願望とは?
「年を重ねた今のほうが、素直になれる」岡本玲×石橋夕帆が分かり合う同世代の心地よさ
2026.07.07 18:00
2026.07.07 18:00
同じ時代を生きてきたという事実は、それだけで人と人の距離をぐっと近づける。
1991年生まれの岡本玲。1990年生まれの石橋夕帆。同世代の二人がタッグを組んだ映画『ひとりたび』は、今の二人だから描ける30代女性の停滞と再出発を描いた等身大の物語だ。
10代の頃のように無敵にはなれず、20代の頃のようなパワーもない。かと言って40代のような自信と開き直りを身につけるにはまだ幼い。そんな30代という年代を二人はどう捉えているのか。平成1桁世代にはたまらない共感ワード満載のガールズトークが始まる。

30代前半って “幸せの形”を目にする世代
──まずは今回お二人がタッグを組むことになった経緯からお聞かせください。
石橋 この『ひとりたび』の企画を立てたときに、主人公の美咲というキャラクターはできていたものの、今の日本の30歳前後の女優さんで誰ならしっくり来るだろうと考えたときに、なかなか該当する人が浮かばなかったんですね。そんなときに、以前拝見した『熱帯樹』という舞台での岡本さんを思い出して。一見病弱で儚げだけど、内面に沸々としたものを持ったキャラクターを的確に演じられた岡本さんなら美咲に合うんじゃないかと思って、お声かけしました。
岡本 実は直接お会いする前から、石橋さんが何かのインタビューで一緒にやってみたい女優さんとして私の名前を挙げてくださっていたのを読んでいたんです。だから、お話をいただいたときは純粋にうれしくて。しかも、なかなかない漫画での企画書だったんですよ。
石橋 実験的にそういうことをやってみようと思って、32ページ読み切りの漫画だとこうなりますみたいなのを、ココナラ経由で漫画家さんに依頼して描いてもらいました(笑)。
──すごい。ココナラでそんな案件が来るとは(笑)。
石橋 私の使い方が特殊すぎますよね(笑)。
岡本 そういうことをされるのって、作品を形にしたいという意志があるからだと思うんです。その情熱に感動しましたし、何より私でやりたいと言ってくださる方がいるなんて、それだけでありがたいこと。どうにか実現させようと思って、事務所に「こういうお話がありました。実現させてください!」ってすぐに電話しました(笑)。
石橋 共通の知り合いに中山求一郎さんという役者さんがいて。求一郎さんにお願いして、お会いさせてもらったんです。本当は禁じ手だと思うんですけどね。事務所を飛び越えて、直接ご本人にお声かけするのって。
岡本 そうなんですか。私はすごくうれしかったです。あれがもう6年前になるんですね。
石橋 早いですね、月日が流れるのは。
──岡本さん演じる美咲は32歳の女性です。同世代の監督・俳優同士だからつくれたという実感はありますか。
岡本 ありますね。MDプレイヤーもプリクラも、出てくる小道具がみんな自分たちが使っていたものばかり。撮影中も「懐かしいね」っていちいち盛り上がっていました(笑)。
石橋 インスタントカメラで撮った写真をポスカで落書きしてました、とか(笑)。
岡本 そうそう(笑)。
石橋 SWIMMERとかサン宝石とか(笑)。美咲の部屋にはそういうあるあるなアイテムがいっぱいあって。
──ドリームキャッチャーとか懐かしいなと思いました。
石橋 そうなんです! あとはよくわからないあみあみのビーズの小物入れとか(笑)。あれ、私の私物なんですけど。そういう細かいところで共感し合えるのは、生きている時代が近いからこそだなと。
──映画では、30代前半のつまずきというか、人生のままならなさが丁寧に描かれていました。
石橋 今回、お声かけをしてから企画の実現までに時間がかかったのもあって、岡本さんとちょこちょこお茶をしたりしていたんですね。そのときに、誰しも大層な夢や目標があるわけじゃない。私たちだって芸能という一見華やかな仕事をしているけど、実際にはそんな常に意識を高く持っているかと言われたら、そうでもない。不幸せではないが幸せとも言い切れないよね、という話をして。
岡本 しましたね。フリータイムのカラオケで(笑)。

──カラオケ?
石橋 じっくり話をしたかったから、なるべく人に聞かれない場所がいいなと思って。会議室だと改まりすぎだしということで、カラオケにしたんです。そこで、30歳くらいになってふと立ち止まったときになんだか自分の人生にぽっかり空洞ができることってあるよねという話をして。そういう思いはこの映画にも込められていると思います。
岡本 私の場合、一般的な30代前半の女性の感覚とはまた少し違うかもしれないですが、プライベートで友達がいろんな人生のステージを上っている姿を見ていると、30代前半ってある程度“幸せの形”を目にする世代なのかなという気がします。だからこそ、自分の幸せを自問自答してしまうし、自分で自分の人生の幸福度を評価してしまう。本当はそれって全然意味のないことなんですけどね。
石橋 今の話を聞いて思い出したのが、マツコ・デラックスさんが「人は自分以外の他者との比較で幸福かどうかを判断してしまう。本当はもっと他者を介在させない形の幸せを見つけるべきだよね」というようなことをおっしゃっていて。
岡本 それがいちばん難しいですよね。
石橋 難しいですよね。シンプルに見えて、いちばん難しい。
──自分を振り返っても、30代前半っていちばん錯乱してたなと思います。
岡本 迷走しますよね。自分の幸せを探し求めて。
石橋 周りでも婚活をしている子が増えたり。30までは勢いだけで突っ走ってこられるんですよね。でも社会人10年目とかになると、あれ、ちょっと待てよ、なにか考え直さなきゃいけないかもしれないという気になってくる。誰にも言われてないのに。
岡本 そう。誰にも言われてないのにっていうのがミソなんですよね。
石橋 なんか不思議と焦りだすんですよね。

──だから、ふっと人生に疲れて故郷に帰る美咲の気持ちもよくわかるというか。
岡本 でも故郷に帰ったら帰ったで、また別の意味で疲れるんですよね(笑)。
石橋 映画でも最初は久々に娘が帰ってきてウェルカムモードなんですけど、徐々に母親とかが面倒くさがりだして、「これからのことをちゃんと考えなさいよ」って小言を言われはじめるっていう。
岡本 私もそこは意識して、美咲も実家にいるうちにだんだん気が抜けた顔になっていくんです(笑)。
石橋 ワンちゃんのことをそう見てる岡本さんの表情が最高でした(笑)。
岡本 実感があるんですよ。実家に長くいるとそうなっていくなって。そこは結構リアルに体現しました(笑)。
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