本間昭光のMUSIC HOSPITAL 第10回 小林柊矢(後編)
小林柊矢の音楽美学、今こそ必要な“ひとりじゃない”空間
2023.03.04 17:00
2023.03.04 17:00
外れも全部蓄積になる(本間)
小林 そこまでアレンジをしてると、似通っちゃったりしないんですか?
本間 いや、もう全然似ないし全部違う作りになる。楽曲から誘発されるものを結局やるんで。あとはリクエストがあると自分の中の引き出しから出してくる。自分にないリクエストをされたときは研究する。
小林 逆におもしろいというか、楽しいんですね。
本間 ちょっと深掘りしたくて、昔はそれでCDショップに行ってた。当たりもあれば、外れもあって。でも全部蓄積になるから。
小林 なるほど、研究とか吸収は大事ですよね。
本間 トオミ君くらいの年齢が良いんだよね。丁寧にもできるし尖ることもできる。アレンジャーの年齢によるアレンジの方向性というのはどんどん変わっておもしろい。
小林 レジェンドになるにつれ、絶対外れのアレンジしないってこっちも任せている節もあるじゃないですか。プレッシャーもあるだろうし。自分はあまり出せないっていうのもありますか?
本間 いや、そんなことないのよ。絶対爪痕を残すんだけれども、40歳の時のアレンジ、50歳の時のアレンジで全然変わってくるんだよね。ツールも変わってるし。
小林 本間さんって一番移り変わりを経験なさってる世代じゃないですか?
本間 スタジオでみんなでやってたこともあるし。今の人たちに経験させてあげたいって思うのは、譜面一発でやるっていう事。その時にどういうリクエストを伝えるかっていう事。ここで話術が磨かれるんです。
小林 難しい!
本間 言ってること分かるでしょ? 知ってるでしょっていう感覚。逆に言うと、自分がそれを知らなかったら恥ずかしいっていうぐらいの。
小林 皆さんすごい研究するんですね。
本間 エンジニアにリクエストするにしても、あの楽曲の感じのとか。今の人たちは判断するのに、デモテープがほぼ完成形じゃないと判断できなかったりするんだけど、僕らは譜面だけで判断してくれてたから。
小林 えー! 譜面だけで!
本間 今はアーティストもそうだし、ほぼ完成形を聞いて判断するっていう。便利でもあるけれども、化学変化は少ない。
小林 振り幅っていうのがすごく小さくなっちゃいますね。
本間 どっちがいいかわかんないんだよね。いいこともあるし。次の「惑星」を編曲されてるGRPってどんなかた?
小林 僕の曲も結構やってくださってるかたで、30歳後半ですかね。ひとりだと思います。
本間 おもしろいね。
小林 これもファンの皆さまに書いた曲です。死は絶対免れないし、絶対大切な人との別れって訪れるじゃないですか。その時に誰かと悲しみを分かちあって乗り越えていくから。ステージっていうちょっと華やいだ場所に立ってる僕でも同じ人間だし、同じ悲しみがあるし。同じ弱い者同士埋め合っていこうっていう意味で書いたんです。
本間 覚える歌詞がたくさんあるね。ライブでプロンプター禁止ね(笑)。
小林 でも覚えてます!(笑) みなさんも覚えてくれるかな、ちゃんと。
本間 覚えて来てくれるぐらいの人は全部大好きなんだけど、グレーゾーンの方も来るから、その人にやっぱりいい言葉を残す。もっと応援したいって思ってもらうっていうのが、腕にかかってるもんね。
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