本間昭光のMUSIC HOSPITAL 第9回 小林柊矢(前編)
小林柊矢が『柊』に込めたストーリー、愛を直球で伝える勇気とこだわり
2023.03.03 12:00
2023.03.03 12:00
CDで聴くこだわりを失くしたくない(小林)
本間 今はアルバム単位で聴くことがほぼなくなってるけど、『柊』はアルバムで聴いてほしいなあ。曲間の秒数とかも考えた?
小林 めちゃめちゃこだわりました!
本間 我々そこまでこだわって作ってるけど、今もうアルバム聴いてくれないし、サブスクだと関係ないじゃないですか。
小林 ロードとかもありますもんね。
本間 CDで通して聴いてほしいね。
小林 そうなんです! そのこだわりを失くしたくないですよね。
本間 小説読んでると繋がってる段落もあれば、ちょっとページが空いて、次の章に入るとかあるじゃん。それって小説家のこだわりだと思う。一緒なんだよね、曲間っていうのは。それがどんどん失われていることがすごく残念。
小林 残念ですね。
本間 単行本だと、装丁や帯、カバーの内側までこだわりがあったりする。それってアルバムだと思うんですね。なるべく単行本で読みたい。
小林 僕もいつも紙です。
本間 それが我々の音楽のアルバムの感覚。CDともしくはレコード。次の「白いワンピース」のアレンジはsoundbreakers。やっぱり「今輝いている人」だよね?
小林 そうですね。
本間 サブスクでもそうだけど、プロデューサー、アレンジャー表記は当然のことながら、エンジニア表記までもちゃんとすべきと思ってて。昔、自分はレコードを買った時にそこまで見てたんですよ。誰がやってるんだろうって。特に最近は家でミックスすることが増えてきたから、参考になると思う。
小林 正直、この仕事をするまでミックスっていうのを知らなくて。作詞作曲は誰がしてるんだろう? って、そこまでだったんです。
本間 特に最近そうなってるよね。AIが進化してるから。とりあえずこんな風にミックスしたいって、覚えさせれば、聴かせればできちゃう。
小林 そうなんですか?
本間 アレンジのデモでは僕もそれを使ってる。だけど、エンジニアって技術者ってことだから。なのでエンジニアとして録音技術の数学的なところまで分かってる人にお任せする。作品を音響数学的に分析して調整してくれるような人が本当のエンジニアだと思います。レコーディングエンジニアとミックスエンジニアは全然別だと思ってて。直に触れる機会が失われていることが残念。
小林 僕はめちゃくちゃ恵まれてると思います。
本間 そうそう、そういうのが蓄積して作曲もできるんだよね。アレンジもバランス、ミックスは当然バランスなんだけど、作曲も作詞もバランス。経験値によってどんどん入ってくる。そういう意味で1stアルバムでこれだけ、いろんな人とやってるのは恵まれてるね。「君のいない初めての冬」はいつ頃?
小林 1年半ぐらい前ですね。最初のフレーズで掴もうと思ってイントロに持ってきました。メジャーデビューするんだっていう、売れなきゃっていう焦りも出てて。たくさん聴いてもらわなきゃっていうので、自分の中で狙いに行きましたね。この曲で初めてトオミさんと一緒に組んだんですけど、いい感じに混ざった瞬間の曲ですね。
本間 やっぱりトオミくんは音楽家だから、ベーシックがある。スタンダードをやってる人は、実は腹の中はものすごい音楽的に変態な人が多いのよ。そのほうがちょうどいいバランスが取れる。
小林 でもそっちに行ってないと生き残れないと思うこともあって。スタンダードな人はたくさんいらっしゃるじゃないですか。僕も思いっきり尖ったほうがいいんですかね。
本間 僕は小林くんは尖ってると思ってるの。ずっとその感じがいいなと思ってて。ここから先、どうやって行こうかってことに関しても、いい形で周りを巻き込んでいる感じがあって。それって尖ってないと、なかなかできなかったりするから。こうありたいっていうすごく刹那な願望が強くて尖ってる。
小林 スカウトしてくれて二人三脚でやってきて、小林柊矢っていう像をずっと一緒に作ってきたマネージャーさんが会社を辞めてしまったんですよ。今後どうするんだろうって不安になったときに、これは自分に対しての試練だって。自分はこうなんだっていう柱をちゃんと立てるようにして過ごすことを最近になって意識し始めてます。だからそういう尖っている部分を大事にしていきたいなと思います。
本間 いいと思います。人の話もちゃんと聞いたほうがいいと思うし、柔軟にやりつつも、自分がこうだっていうのはちゃんと持ってないとね。
(後編へ続く)