フジロックにも出演する世界のトップランナーが旧友に語る
ルイス・コールにとって“良い音楽”とは?新作から辿る音楽遍歴と制作哲学
2023.02.03 12:30
2023.02.03 12:30
重要なのは仕事に真摯に向き合う心
──今まであまりドラムについての質問をしたことがないから聞きたい。ジャズ上がりのドラマーは、結構クオンタイズされていないスウィング感があるドラマーが多いと思うんだけど、ルイスのドラムは完全にグリッドにピッタリ合った“カッチリ”としたドラムだ。
そうだね。昔はジャック・ディジョネットのように、グリッドに全くピッタリじゃないドラムを叩いていた。彼のタイム感は緩くて最高なんだ。昔はそういうドラマーになりたくて、彼のスタイルをコピーしていた。でもそこから自分で曲を作りはじめて、自分の曲のスタイルにはそういうドラムが合わないと思ったんだ。だから作る曲のスタイルに合わせて、ドラムのスタイルを変える必要があった。そこからもっとメトロノームに沿った、グリッドにピッタリなグルーヴを叩き始めたんだ。
──ドラマーとしてキャリアをスタートさせたルイスだけど、ドラムが曲作りに影響するのではなく、逆に曲作りによってドラムのスタイルが変わったのが興味深い。私もそれは共感できて、私の場合はラッパーから“アーティスト”になる上でラップのスタイルも変わったと思う。
完全にそうだね。しかも自分でミックスをしているおかげでドラムが上手くなったのもある。「もしかしたらここのパートはもっと優しく叩いたほうがいいのかも」って気がつくことができるからね。君はラップにおいてかなり多様なスタイルを持ってるよね。一般的なヒップホップサウンドだけじゃなくて色んなスタイルに広がってるからとてもクールだよ。
──ドラムのスタイルもそうだけど、昔のゲーム曲からも影響されてるよね?
もちろん! 昔の『スーパーマリオカート』とか『ベア・ナックル』とかの音楽を聴くと、短くてスタッカートなシンセフレーズが多くて、影響されていることがわかる。やっぱりスーパーファミコンの『スターフォックス』とか『スーパーマリオカート』とかにはかなり影響されたよ。
──それも日本のファンに愛される要素かもしれない。
確かにそれはあるのかもしれない。もしかしたら日本のファンが多い理由がこのインタビューでわかったかもしれないね(笑)。
──これはインタビューをする度に全員に聞くし、前回インタビューしたときも聞いたと思うんだけど、今カムアップしているアーティストにアドバイスを伝えるとしたら?
音楽で成功するのは本当に難しくて。だってみんなの夢だし、もし成功できたなら、それは最も素晴らしい人生だと思う。成功した場合、本当に運が良かったと言える。もしたくさん努力をしたとしても、努力をしたくて、努力ができる環境だったという意味でも運が良かったと言える。
だからもし制作が楽しくなくなってしまっても、音楽を毎日愛せる方法を探そう。大きい視点で見たらもちろん全部楽しいんだけど、僕も作業が楽しくなくなるときがある。常に楽しいわけじゃなくて、ベッドから起き上がるのが辛いときもある。そのなかでも、どうにかして制作のプロセスを愛せるように、音楽について愛している要素を見つけたり、再確認しよう。
これはたくさん経験があるミュージシャンにも言えることだけど、「音楽を仕事にするためにはこういうスタイルで演奏しないといけない」みたいな風潮がある。でも正直、自分が愛していて、最も熱意を持った要素にフォーカスしたほうがいいと思う。自分のテンションが最も上がる音楽を極めたほうがいい。あとはちゃんと仕事や制作に対する理念を持って、真摯に向き合うことかな。
──それはルイスから学んだことでもあるな。前にルイスの家に1週間泊まったときも、ルイスは毎朝起きて数時間ドラムを練習してたもんね。かなり刺激的だった。
やりすぎて、最近はちょっと落ち着いたほうがいいのかもしれないって思うようになってきたよ(笑)。でもそこまで練習したおかげで、今の自分があるわけだし、なぜか自分のなかにここまでの熱意があることに感謝している。そのおかげで前に進み続けることができたから。