六角精児、清宮レイらも好演する“アナログ作品”の魅力とは
AI時代に響く、上田誠からの答えがここに?井ノ原快彦主演『世界の終わりかけとスリーコード』開幕
2026.10.18 20:00
『世界の終わりかけとスリーコード』ゲネプロ公演より(撮影/井上嘉和)
2026.10.18 20:00
上田誠が描くテクノロジーとアナログの共存
音楽の魅力はもちろんだが、それらを演じ、歌う俳優陣の魅力といったら。まずは何と言っても、井ノ原快彦。記者会見でも井ノ原・上田・六角精児の3人がとにかく感無量という感じで語っていたが、もともと井ノ原は10代の頃から六角と付き合いがあり、井ノ原の「フォークの師匠」なのだとか。アイドルとしてブレイク前の時代、当時下北沢で六角が雇われ店長をしていた店に井ノ原が入り浸っていたエピソードはたびたび語られているが、記者会見でも「まだ18歳の頃だったんですよね。よく六角さん家に終電がなくなると泊めさせてもらって。お礼に風呂掃除しますよ、なんつって」と井ノ原。要はこの作品は、彼がずっと一緒に付き合ってきた仲間たちと、上田誠が一緒にやってきたヨーロッパ企画のメンバーや関わってきた人たちが一体になり、この世界ができあがっているというわけだ。

そんな「ホーム感」がある作品というのも影響しているのだろう、とにかく井ノ原が楽しそうで、そしてのびのびと歌い、弾いている。さすがアイドルとして長年のキャリアがあるだけに見事な歌声なのだが、ヨーロッパ企画のオフビートで肩の力が抜けたような世界観にすんなり馴染んでいるのがなんとも面白い。
今作、とにかく「弾き語る」場面が多いのでキャスト陣は相当大変だったと思われるが、ヨーロッパ企画劇団員をはじめとした今作のキャストたちが見事にそのハードルをクリアしているのが凄い。特に、劇団員の藤谷理子。映画『リバー、流れないでよ』の主演でも注目を浴びた彼女、もともとダンスや歌の実力には定評があったが、今作でその歌声の魅力に改めて気付き、驚いた人も多かったのではないだろうか? ギターの腕前も見事だ。六角精児に関しては、もともとミュージシャンとしても長く活動を続けているだけに舞台上での曲披露もまったく危なげなく、流石の一言。


アコが行方を探すかつての相方・リンを演じたのは元乃木坂46の清宮レイ。上田誠作品には2024年の『鴨川ホルモー、ワンスモア』出演後2作目となる。ネタバレになるので多くを語れないのがもどかしいが、さまざまな曲を歌い、パフォーマンスするのは彼女も同じくで、その姿がなんともユニーク&キュート! コメディエンヌとしての魅力を今作で開花させたのでは?
しかし笑い、音楽を楽しみながら、いろいろと考えさせられる作品でもある。もともと演劇界の中でもSFやテクノロジーといったことを題材に取り上げ続けてきた数少ない存在である上田。リアルの世界で私たちはAIの発達という大きな転換点を迎える中、そういったテクノロジーとフォークソングや演劇などの「アナログなもの」がどう共存していくのか……そんなことへの彼なりの答えが、今作からなんとなく見えてくるような気がする。いや、そんな小難しいことを考えなくても、とにかくギターを弾いたり、聴いたり、音楽を楽しむというシンプルなことが結局は色々解決するのかもしれない。世界は、「スリーコード」でなんとかなるのだから。

上田誠、井ノ原快彦、六角精児(全ての写真:井上嘉和)


