六角精児、清宮レイらも好演する“アナログ作品”の魅力とは
AI時代に響く、上田誠からの答えがここに?井ノ原快彦主演『世界の終わりかけとスリーコード』開幕
2026.10.18 20:00
『世界の終わりかけとスリーコード』ゲネプロ公演より(撮影/井上嘉和)
2026.10.18 20:00
上田誠が作・演出を手掛けるヨーロッパ企画特別興行『世界の終わりかけとスリーコード』が10月13日より東京・サンシャイン劇場で上演中。同日、公開舞台稽古と記者会見が行われた。
『世界の終わりかけとスリーコード』は、2020年に劇団のラジオで配信した同名のフォークソングラジオドラマをベースに、近未来のフォークソングロードムービー音楽劇として再構築した作品だ。主演の井ノ原快彦と上田誠がタッグを組むのは2008年の『昭和島ウォーカー』、2011年の『芝浦ブラウザー』に続き3作品目で、なんと15年ぶり。

物語の舞台は、AIの暴走により、文明が崩壊した近未来。世界から電気がなくなり、空前のフォークソングブームが巻き起こる中、ギターとともに京都から上京してきたアコ(藤谷理子)は、海外の放浪から帰国したばかりだというフウ(井ノ原)と横浜で出会う。かつての相方を探しているというアコと一緒に行動することを決めたフウ。横浜のミュージシャン・ハルヒコ(亀島一徳)らとともに手がかりを探して東京に向かった3人は、吉祥寺や新宿、渋谷でさまざまなミュージシャンたちと出会いながら、やがて「電気」を取り巻く為政者の動きに巻き込まれてゆく……。
公式サイトには「ポストアポカリプスSFロードムービーフォークソング劇」という言葉が載っており、なんのこっちゃ……と思うも、実際の舞台は見事に「その通り」。まず電気文明が崩壊したあと、電気を使用しないアコースティックギターが流行っているというのが、バカバカしくもどこかで「ありそう」と思わせてくれる絶妙なラインだ。こういった設定と世界観を緻密に作り込み、そのなかで箱庭のように楽しませてくれるのがヨーロッパ企画の得意技! が、今作はそれだけではない。中に出てくる音楽が、とにかく楽しいからだ。

というのも、アコとフウが出会うミュージシャンたちは「フォークソングのミュージシャン」であっても、全員見事にジャンルがバラバラなのだ。青春フォーク、四畳半フォーク、パンクフォーク、アングラ、ネオアコ……次々と出てくる個性あふれる楽曲とミュージシャンたち。「アコースティックギター一本でこんなにも多様な音楽があるのか!」と、観ながら感心させられるやら、驚くやら。それぞれのミュージシャンに微妙にモデルが垣間見えるので、音楽好きであるほど懐かしかったり笑えたり、かなり忙しい(個人的には渋谷系の描写に特に大爆笑してしまった)。ちょっとした「フォーク音楽史振り返り」の様相とすら言える。
ポイントは、四畳半フォークやアングラ、フォーク集会などのシングアウトの光景など今見るとちょっと笑ってしまう「その時代ならでは」のものも、基本的にコメディとして面白おかしく描きながらも、けして根本から冷笑したり、バカにはしていないこと。作・演出の上田誠が基本的に音楽への全方位の愛を根底に持っているのが、この匙加減に影響しているのだろう。記者会見でも「今、昔のフォークソングブームの時代のフォークを聞くと、めちゃくちゃ面白くて。人の声と演奏と、もう本当に人間そのものが出るようなそういう音楽」と上田は語っていたが、その新鮮な驚きと興味がダイレクトに今作に出ている気がする。そもそも劇団の旗揚げ時から舞台で使用する音楽にはこだわり、コアなミュージシャンの作品をセレクトし続けてきた上田らしい。

今回、幅広いジャンルの音楽を書き下ろしたのは、ヨーロッパ企画第44回公演『インターネ島エクスプローラー』でも音楽を担当したミュージシャンの王舟だ。最近はドラマや映画等の劇伴でも活躍する彼だが、本来はアコースティックでのライブに定評があるミュージシャン。舞台中で新たなミュージシャンと出会い、新たな歌が流れるたびに、彼がこんな曲を!? ということにも驚かされる(劇中歌もかなり多いだけに、相当大変だったのではと思われる……)。なにより、これがどれも名曲揃いなのだ。上田が書き下ろしたという歌詞にも要注目。
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