田村芽実、清水くるみを迎えさらにブーストした作品世界に迫る
これぞ根本宗子作品でしか味わえないカタルシス!『超、Maria』にみる音楽劇の醍醐味とは
2026.07.09 20:30
2026.07.09 20:30
吐き出せない感情に寄り添う根本宗子作品
今回の再演は、田村がこの『超、Maria』をやりたいと以前根本に言っていたのも再演のきっかけになったとか。そこで2チーム制での再演となったのだが、根本にとっては自分が演じている役を誰に託すかは悩んだそう。「自分の役は、自分が出ながら演出している部分みたいなものがあった。そこを1から一緒に考えて作ってくれる女優さんは誰かなと考えたとき、くるみちゃんが適任なんじゃないかなと」という理由で、根本作品にも多数出演し、田村とも親交の深い清水にオファーをしたのだとか。舞台上の2人の息のあった掛け合いも見どころだ。

舞台上に“俳優”はたった2人とミニマムな作品だが、観終わった後にそう感じないのは、俳優2人の熱量に加えて、生演奏のエネルギーも影響しているだろう。舞台上の背後には小春とカンカンバルカンのメンバーが常に控え、舞台上のすべての音楽はもちろん、効果音も演奏。ときに彼女らは登場人物ともなるという活躍ぶりだ。かなとゆうが白と黒の衣装なのに対し、背後の4人はグレーのワンピースなのもにくい演出。また、小春がセリフを喋るシーンもあるのだが、これがまた見事!(実はアコーディオン奏者としての舞台出演経験は、串田和美作品をはじめかなり多い)。
何よりも、ライブはもちろん、大道芸などでも鍛えた彼女らの演奏力は、しっかりと客席を掌握している。“チャラン・ポ・ランタン節”とも言える、絶妙なメロディーラインの音楽は、一度観ただけで耳に残る人が多いのでは。

実はこの作品、根本とチャラン・ポ・ランタンの2人ありきでスタートした企画のため、初演のときは「毎日3枚くらいずつ台本を書いて、その場で小春が曲を作っていく」という通常ではありえない形で作り上げられたのだという。会見で小春は「まだ知り合ったばかりでちょっと浅い関係性の2人が探り探り作った割には、だいぶ密な内容になっています(笑)。6年ぶりにこう客観的に見ると、本当になんかとんでもないものを6年前に私たちが作ったんだな、と」と語ったが、それを受けて根本も「その時に『ストックしてたメロディーを全部これに使った』って、小春ちゃんが言ってたのが印象的で。それぐらい本当は、きっとチャラン・ポ・ランタンでリリースしたかったであろうフレーズをいくつもくださったんだろうなと」と返すほど、印象的な良曲ばかりなのだ。

かつ、「チームエンジェル」に関しては、今や日本のミュージカル界で大活躍している2人が歌うだけに、オリジナルとはまた違う形で楽曲の良さが引き立つ結果となっている。なお、オリジナルキャストである「チームシスター」も6年ぶりの再演、かつWチームとなったことで、よりパワーアップしている模様だ(しかも、根本自身が女優として自作を演じるのは今やかなりレア!)。

物語の中で繰り返し語られる、「わたしの不幸は誰かの幸せ」という言葉。人を妬んではいけない、憎んではいけない、嫉妬してはいけない……そういった「きれいごと」で生きたいというのが理想だが、ときに人には予期せぬ不幸が降りかかるし、そういった感情から逃れられないこともある。根本宗子作品はエンターテインメントでありながら、どこか後者のような状況でもがき、他人には言えないような感情を抱えて自己嫌悪に陥るような人たちに、そっと寄り添ってくれるようなところがある。今作を観て、少し救われるような気分になる人は多いのではないだろうか?
演劇の魅力と、音楽劇の楽しさがおもちゃ箱のように詰められた今作。できればコンスタントに再演してもらい、いろんな演じ手での“進化”も観てみたい……そんな風にも思わされた作品だ。



