映画『シンシン アンド ザ マウス』で“宝物になった時間”とは
「一度大切にしたものは、ずっと自分の中にある」岸井ゆきのが役に重ねる過去の経験たち
2026.07.07 19:00
2026.07.07 19:00
もうちょっとカサついてる声が良かったです
──劇中、小さい頃に庭のビニールプールで遊んでいた場面がふっとよぎるじゃないですか。あんなふうに、親御さんを思い出したときにパッと思い浮かぶ景色ってなんですか。
なんだろう。今、パッと浮かんだのはよく家族で行った大型スーパーですね。その中にいくつかケーキ屋さんが入っていて。私以外、みんな誕生月が同じなんですね。その月になると、よく車に乗ってスーパーに行って、そのお店のケーキを買ってました。

──ちづみは旅先でもいちばんに母親に写真を送っていました。岸井さんもそんなふうに親御さんによく連絡をしたりしますか。
最近になってようやくですね。「実は今ここにいるよ」っていう感じで写真を送ってあげると、母親がよく「パアッ」って感じの無料のスタンプを返してくれるんです。それが好きで、よく送るようになりました。
──映画の中で「声」に関する話がありました。岸井さんは誰かを思い出すとき、五感の中で真っ先に何から浮かんできますか。
え。なんだろう。視覚?
──やっぱり視覚ですよね。その次は?
二番目は声だから、聴覚ってことになるかな。次は匂い。

──よく街中で懐かしい人の香水の匂いがして振り返るみたいな話がありますが、そういうことってありますか。
ありますね。でも、匂いの正体がよくわからないみたいなことのほうが多いです。なんだっけ、この匂い、めっちゃどこかで嗅いだことあるんだけど、みたいな(笑)。でも、東京ってどんどんいろんな匂いがするから、すぐ忘れちゃう。
──ご自身の声についてはどう思っていますか。すごく特徴的な声だと思うのですが。
いや〜、あんまり好きじゃないです。自分の頭の中で聞こえている声と実際の声って違うじゃないですか。私に聞こえているふうに聞こえててほしいなあと思っています。
──表に出る職業だと、自分の声を聞く機会も多いから慣れません?
SNSが発達してきてから、慣れてきました。
──どういうことですか。
告知とかで「×曜日の×時放送です」みたいなのをやるじゃないですか。あれのおかげでだいぶ自分の声に慣れました。
──ちょっと待ってください。ということは、つまり役を演じているときの声は、自分の声じゃないという認識ですか。
そうかもしれない。「TVerで配信中です。観てね〜」とか「××役の岸井ゆきのです」とかのほうが素の声って感じがして、「私、こんな声してるんだ!」ってなります。

──もうちょっとどんな声だったら良かったですか。
もうちょっとカサついてる感じが良かったです。
──岸井さんって、倍音がかった甘さのある声で、そこがいいのに。
私、すっごい低い声出せますよ。一時期、めっちゃ低い声の練習してたので。
──文字では絶対伝わらないんですけど、ちょっとやってもらってもいいですか。
(かすれた低い声で)これくらいかな。
──確かにその声の岸井さんを聞くことはないかもしれない……。
そうなんです。全然使えないんです。しかも、この声を出してると、ちょっと喉の下のあたりが痛いんですよね。たぶん無理をしてるからなんですけど。あとすごい肩がこる。こういう声を出せるって知ってもらうことで、いつか低い声の役が来たらいいんですけど。
──ただ、不思議なことに声を低くしても、岸井さんの特徴みたいなのはちゃんと残っている気がします。
そうなんですよ。せっかく低くしたのに「なんで!」って思ってます。

場面写真 ©2021 Banana Yoshimoto. Based on the novel by Banana Yoshimoto, published by Shinchosha. Rights arranged through ZIPANGO, S.L.
©2026映画「SINSIN AND THE MOUSE」FILM PARTNERS



