加藤史帆、剛力彩芽、大窪人衛らハマり役の魅力も解説
伊野尾慧×森見登美彦作品の驚きの親和性!上田誠が巧みに舞台化した『四畳半神話大系』開幕
2026.05.21 21:20
2026.05.21 21:20
原作・アニメファンでも楽しめる演出の妙
個人的に舌を巻いたキャスティングは、「小津」を演じた大窪人衛。劇団イキウメに所属、独特の声と空気感を持ち、一度見たら強烈な印象を受ける俳優の1人だ。小劇場界ではよく知られる存在だが、そんな彼が演じた「小津」はある意味今作のヴィランでもあり、重要なポジションとなる役。アニメ版ではそれがひと目見てわかるようないかにも妖怪じみたビジュアルになっていたが、舞台版ではどうなるか……と思っていたところ、まさかのキャスティング! 今作を観てアニメを未見の人は、ぜひ一度観てみて欲しい。おそらく驚くと思うので。

ここで冒頭の疑問「あの作品をどうやって舞台化するんだろう?」の感想を述べると、「お見事!」の一言。原作小説とアニメの両方を知っていても、今回の舞台化は「その手があったか」なのだ。というのも、もともとの原作小説はいわゆる“並行世界”もの。しかし今作は原作のエピソードを基本的には踏襲しつつ、“ループもの”の構成にすることで、2時間ですんなり観られるエンターテインメント作品としてまとまっている。上田誠とループものといえば映画『リバー、流れないでよ』や『ドロステのはてで僕ら』、昨年演出を手掛けた音楽劇『MONDAYS』など、まさに得意分野。
また、上田誠が森見登美彦作品を舞台化するのは『夜は短し歩けよ乙女』に続いて2作目。上田は会見で「あまり舞台化に向いていないハードコアな原作なので、『夜は〜』に比べて随分難易度が高いかなと思いながらも、やっぱり内包されているエネルギーがすごいなと思ったので、これをなんとか舞台化できたらと思ったというのが今回の(企画の)始まり」と語ったが、アニメ版での脚本も手掛け原作を知り尽くした彼だからこそ、この舞台版の構成ができたのだろう。上田が言うように鬱屈したパワーの印象が強い原作に比べ、原作の良さを保ちながらもテンポよく楽しい作品という印象が舞台版では強くなっているのは、上田演出ならではだ。

一度観終わって再度思い返すと、“並行世界もの/ループもの”らしい伏線もいろいろと気付かされ、再度冒頭から観たくなってしまう。バンド「くるり」にまつわるネタなど、端々で出てくる京都らしい単語や小ネタも、上田誠とヨーロッパ企画、森見登美彦作品を知っているとフフッと笑えたり。魅力満載の新たな舞台版『四畳半神話大系』の誕生に、快哉を叫びたい。




