2024.06.12 18:00
考察してくれているのを見るのは面白い
──「Kajiura」という曲のスリップビートっぽいのはどこから? ドラムがちょっとズレるというか。
橋本 平川くんに変なことやってって言われて。「どうしよう」って家に帰って必死こいて考えて考えて。一回スタジオで録ったのは、もっとワーってやってるやつだったんですけど「違う」って言われてもうちょっと減らして今の感じになりました。
平川 ギターソロを弾いてみたいな感じ。で、変だと嬉しいなって。僕がドラムやってないから思いつかないので、最初のはギターで言うとちょっと弾きすぎだなって。
──めちゃいいですね。あんまりそんなアナログな曲の作り方してるバンドはいない気がする。歌詞の散文詩的なこともさることながらですけど、曲名がすごく変で。「Kajiura」って?
平川 好きな女優さんの本名です。曲名つけるのがめっちゃ苦手で。たまたまそのときその方の動画をみんなで「かわいい」って共有してて、橋本くん家に集まってたとき、黒板があったんで、“かじうら”って英語で書いたらかっこいいって。
橋本 それで「Kajiura」だーって言って。
平川 違う歌ではマンガのタイトルを全部逆にしただけで。
中塩 『同じ月を見ている』っていうのから、「違う月を見ていた」に。
平川 あれはジャケがカッコよくて好きなんです。
──サブカルよ、あの漫画は(笑)。
平川 たまたまネットで見つけて。めちゃいいマンガです。曲名決めるのはほんと難しいです。
──「Sal Ulso」(1stアルバム『Janome』収録)ってのは?
平川 野球選手です。僕、Wikipediaを見るのが好きで、関連でどんどん飛んでいって。そこで日本に1年しかいなかった野球選手がいるって。サルバトーレ・ウルソーっていうのが本名なんですけど。サルバトーレってヨーロッパ風の名前も野球選手に珍しくて面白かったんでつけたら、別に誰も気にならないかなって。「Undercurrent」の曲名もそんな感じだよね?
中塩 あれはビル・エヴァンスのアルバムがかっこいいと思ってつけた。アルバムを聴いてて、“Undercurrent”ってなんだろうと思って検索してたらスピってる感じのブログが出てきて。底流は運の流れみたいなのがありますみたいな、それを掴んでいきましょうみたいなブログがあって。信じてるわけじゃないけど、あんま運とかで人生を考えたことがなかったので、そういうのってあるんだな、面白い考え方だなと思って。勢い余って曲名に(笑)。
平川 運を信じてる人でも信じてない人でも、それを聴いてて。信じてない側も聴いてるし、信じてる人も聴いてる合流地点みたいな。
中塩 ジャズ系は意味深なタイトル多いですよね。フリージャズとか特に哲学的な単語がアルバムのタイトルに。
──ほかのみなさんからは曲名や歌詞に関しての注文は特にないんですか?
橋本 まったくないですね。
──今はファンが深く聴いて考察してくれて、それをブログに書く人もいるじゃないですか。そういうのを煙に巻きたい気持ちはあったりします?
中塩 煙に巻きたいとかはないけど、思ってる以上のことを考察してくれているのを見ると、逆に面白いなって。気持ち込めて、これはこのことを比喩してるんだってのもあれば、それとの繋がりで生まれた一節があるじゃないですか。それを考察されていたりすると面白いなって。そういう瞬間はあります。
──本来であれば、曲名ってただの記号なわけで。でも世にでる機会が増えれば増えるほど、「あれはどういう意味があるんですか」と言われるから。
平川 ウケたいから、毎回違うことを言えたらいいんですけど。お笑い芸人さんで50音で全部カリスマみたいなこと言えますって人いるじゃないですか。それぐらいの適応力を持っていけば、「Kajiura」もずっと……あれ、僕、合ってますか話?
黒羽 合ってる(笑)。
平川 そしたら永続的に「Kajiura」の意味を伸ばせるから。
黒羽 楽曲が公に出すつもりでやってるというかは、そのときの自分の気持ちを出してる。
平川 そうですね、「今これ好き」ってのに近いですね。
──その気まぐれ感が伝わるというか。だから各楽器の危ないバランス感だったり、本当に読めない曲の展開もあって。アレンジはどういうふうに?
黒羽 こういう感じの入れたいよねっていうのは、楽曲を作った人がイニシアチブを持っていることが割と多いです。たとえば、ここ展開入れたいんだけどどうかな、ってみんなに振って、「じゃあこういうのはどうかな」って誰かが言って、試してみて、みんなの総意で一番ハマるのはこういうのだよねってのを演奏しながら作っていくというプロセスですね。
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