Bezzy[ベジー]|アーティストをもっと好きになるエンタメメディア

アーティストをもっと好きになるエンタメメディア

INTERVIEW

EP『ラヴの元型』完成を経てツアーに向かう今のモード

浅井健一×UAが語る充実と変化、最新作で示したAJICOの“在り方”とは

2024.03.27 19:00

photo:ATSUKI IWASA

2024.03.27 19:00

全ての画像・動画を見る(全14点)

今は最高の曲が出来たと思ってる

──今回の制作はどのようなプロセスで?

UA 浅井さんが作曲したデモを元に、曲ごとのアレンジャーさんに一旦バンド用のデモを打ち込んでもらって。それを浅井さんが聞いて、ここは要らない。ここは好きという意見を伝えて、さらにブラッシュアップをするという感じかな。

UA(Vo) photo:ATSUKI IWASA

──新作では鈴木さんに加えて、UAさんのデビュー25周年の制作にも参加されていた荒木正比呂さんも合流されています。

浅井 荒木くんも正人くんもすごく冷静。俺とは真逆の世界の二人なんで、バランスが取れてよかったね。

UA 「徹底している」という点では、荒木くんはある意味、正人くんよりも徹底しているかもね。例えば「ラヴの元型」のBPM一つ取っても、当初のデモよりももっと速めにしたり、私と一緒になってかなり念入りに探ってくれましたね。この曲の歌詞は結構締切ギリギリに書いたんだけど、この勢いのあるテンポじゃなかったら、この歌詞は浮かんでこなかったと思う。

浅井 そう。俺には理解できないことを一生懸命やってたな。

UA 荒木くんは元々もちろんバンドをやっていたんだけど、どちらかというとエレクトロとかテクノ系、デジタル系が得意で、しかも名古屋出身で、ブランキー(・ジェット・シティ)もリアルタイムで観ていた人。音楽的に非常にスマートで、私たちのことを理解した上で、あまり言葉で説明しなくても、その時に必要なエッセンスを的確に見出してくれた。しっかりと時間を掛けて関わってくれましたね。ミックスエンジニアの奥田(泰次)くんとも仲良しなので、メンバーがスタジオに入る前からいろいろとセッティングしてくれいて。ドラムのチューニング、楽器のエフェクター、それぞれの音の質感まで緻密に練ってくれていましたね。おかげで、「ラヴの元型」は自分の想像を超えた新しいAJICOの曲になりましたね。

──たしかに新境地というか、めちゃめちゃグルーヴィーでダンサブルなアレンジですね。

浅井 「ラヴの元型」は、俺からデモを荒木くんに渡したんだけど、返ってきたやつを聴いて、スッコケたよ。心がズッコケた。全く変わっていてね。「元々のほうがかっこいいよ。こんなの絶対に嫌だ」ってUAにも言ったんだわ。でも進行していくうちに、これもいいなと思い始めて。今ではこれが正解だったんだと思ってる。

UA 荒木くんはアレンジを打ち込みで戻してくれるから、多分、浅井さんはその人工的な感じにびっくりしたんだよね。

浅井 そうそう、プラスチックだった。おもちゃみたいな感じで。まだちゃんと会ってなかったから「荒木くんってどんなやつなんだ?」みたいな感じだったもん。でも会ったらすごくいいやつで、今は最高の曲が出来たと思ってるよ。

AJICO – ラヴの元型 (Official Video)

──浅井さんのリフといい椎野さんのドラムといいTOKIEさんのベースといい半端じゃないグルーヴで。

UA 「ラヴの元型」のトッキーのベース、すごいよねえ。

浅井 すごいって言ったらMVのUAの踊りもすごいわ、ナイス52歳。ライブでも観たいよ。あれって練習したの?

UA いやいやインプロビゼーションですよ。

──聞くところによると今回のEPはレコーディング全体で2週間も掛からなかったとか。制作期間と仕上がりの充実度は必ずしも比例するものではないかもしれませんが、これはかなり順調なケースだと感じられます。

UA うん。すごく短かった。2週間は掛かってない。平日で出来た、みたいな。

浅井 メンバー全員いたのは5日ぐらいじゃない? あとは俺とUAでダビングしていたし。

──『接続』から始まったAJICOの続きでもあって、6曲入りのEPだけどフルアルバムのような充実度が感じられて。あと、ミックスもいいですね。

UA 奥田くん、本当にいいですよね。演奏の方は皆さん腕前保証済だし、レコーディングはほとんどファーストテイク的なものばかりでしたね。

──先程も話題に上った表題曲「ラヴの元型」が象徴的ですが、今回はアプローチこそ6曲それぞれ異なるし、サウンドプロデュースも鈴木さん荒木さんのお二方がいるんだけど、全体としては今の世界や文明における“過剰さ”への思いが通底していますね。

UA そこはやっぱりコロナ禍以降のこの3年分で感じたこと。コロナ禍に入って『接続』があったわけだけど、特に「ラヴの元型」の歌詞に表れている通り、ここ2、3年のモードが大きかったですね。

浅井 俺は別にあまり何も考えとらんね。その時に出てきた自分の気持ちを書いている。

UA あと、J-WAVEとは別のラジオ番組でもこの話題になったんだけど、自分はやっぱり社会と向き合う上で“お母さん”であることが外せなくて。その時も話が長くてベンジー笑い出しちゃったんだけど、自分だって“お父さん”じゃん?って。やっぱ親なんですよね。お互い、まだ未来がはっきりと分からないティーンエイジャーを育てている最中なので、そこでの価値観なのか概念なのかは分からないけど、打ち合わせなんて一切しない間柄なのに、私は結構共通点があるんだなって思いましたね。

AJICO – 地平線 Ma (Official Video)

──「ラヴの元型」の作詞はUAさんですが、どのような思いと流れでこのリリックに着地したのでしょうか?

UA 多分、常日頃見ていることや学者さんとか教授さん、作家さんの本の言葉やYouTubeとかで拾った言葉が元になったかな。UAの時もそうだけど、最近の私は特に作詞において「こういうこと言いたいぞ」とか最初に全く考えない。特に今回のAJICOは意図的にもそうした。とりあえずは曲を聴きながら、言葉を思い付くままババーッと羅列していく。これはもう“感覚です”としか言いようのない領域だけど、そこから徐々に組み立てていくという感じですね。好きな本のページをバッと開いて、神託みたいに言葉を拾う場合もあるし。以前から好きな社会学者の宮台真司さん、生物学者の福岡伸一さん、解剖学者の養老孟司さんの言葉からも拾っていて。以前は延々と“神”ならぬ“紙”との対話みたいだったけど、最近は昔よりかなり気楽にやれています。言葉の画をデザインしている感じというか。そこに自信も付いてきました。長くやってきた甲斐があるって感じですね。

──書き進めていくうちに、言葉に詰まってしまうような場面はやって来ないんですか?

UA 詰まるようなイメージの曲は最初から手を付けない(笑)。そこの見定めも、長くやってきた経験で分かるようになったかな。

次のページ

最近の二人の「作詞へ向かう気持ち」

全ての画像・動画を見る(全14点)

作品情報

AJICO EP『ラヴの元型』初回限定盤

『ラヴの元型』初回限定盤ジャケット

『ラヴの元型』初回限定盤ジャケット

AJICO EP『ラヴの元型』初回限定盤

2024年3⽉13⽇(水)発売
CD+DVD
VIZL-2298/¥5,400(税込)

購入はこちら

収録内容

<CD収録曲>
1. ラヴの元型
2. あったかいね
3. 言葉が主役にならない
4. 微生物
5. キティ
6. 8分前の太陽光線

<DVD収録曲>
AJICO「Tour 接続」東京・中野サンプラザホール公演映像
1. 深緑
2. 美しいこと
3. すてきなあたしの夢
4. フリーダム
5. L.L.M.S.D.
6. Black Jenny
7. 接続
8. 惑星のベンチ
9. 金の泥
10. 悲しみジョニー
11. 地平線 Ma
12. 情熱
13. ペピン
14. 庭
15. アントニオの唄
16. カゲロウソング
17. 波動
18. 水色

AJICO EP『ラヴの元型』通常盤

『ラヴの元型』通常盤ジャケット

『ラヴの元型』通常盤ジャケット

AJICO EP『ラヴの元型』通常盤

2024年3⽉13⽇(水)発売
CDのみ
VICL-65935/¥2,200(税込)

購入はこちら

収録内容

<CD収録曲>
1. ラヴの元型
2. あったかいね
3. 言葉が主役にならない
4. 微生物
5. キティ
6. 8分前の太陽光線

イベント情報

AJICO Tour「アジコの元型」

AJICO Tour「アジコの元型」

2024年
3月17日(日) 広島・CLUB QUATTRO
OPEN17:15/START18:00
3月20日(水・祝) 札幌・道新ホール
OPEN17:15/START18:00
3月23日(土) 仙台・Rensa
OPEN17:15/START18:00
3月30日(土) 東京・日比谷野外大音楽堂
OPEN17:00/START18:00
4月6日(土) 金沢・エイトホール
OPEN17:15/START18:00
4月7日(日) 長野・茅野市民館マルチホール
OPEN17:15/START18:00
4月11日(木) 鹿児島・CAPARVO ホール
OPEN18:15/START19:00
4月13日(土) 福岡・DRUM LOGOS
OPEN17:15/START18:00
4月14日(日) 熊本・B.9 V1
OPEN17:15/START18:00
4月20日(土) 大阪・Zepp Namba
OPEN17:00/START18:00
4月21日(日) 名古屋・Zepp Nagoya
OPEN17:00/START18:00
4月24日(水) 東京 Zepp Shinjuku
OPEN18:00/START19:00

チケット:7,700円(税込)※会場により別途ドリンク代

AJICO Tour「アジコの元型」

UA:vocal
浅井健一:guitar, vocal
TOKIE:bass
椎野恭一:drums

2000年、BLANKEY JET CITYを解散した直後の浅井健一とUAが中心に結成。RISING SUN ROCK FESTIVAL 2000 in EZOに初登場し、アルバム「深緑」をはじめ、シングル3枚、ライブツアー「2001年AJICOの旅」の模様を収めたアルバムとビデオをリリース。鮮烈な印象を残しつつ、2001年3月20日に行った赤坂BLITZでのライブをもって活動休止。
2021年に再始動すると、EP「接続」のリリースやツアー「Tour接続」の開催の他、フジロックを始め数多くのフェス、イベントへの出演を果たす。衝撃の再始動を経て、2024年には2nd EP「ラヴの元型」をリリース。3月からは全国12カ所にてツアー「アジコの元型」を開催。

RANKINGランキング

RELATED TOPICS関連記事

  • 関和亮が監督したストイックな映像に AJICOの3年ぶりEP『ラヴの元型』本日リリース、UAがキレあるダンス披露する表題曲MV公開

    2024.03.13 11:00

    AJICOが3年ぶりとなるニューEP『ラヴの元型』を本日リリースし、1曲目に収録される表題曲「ラヴの元型」のミュージックビデオを公開した。 2000年の結成時と変わらない浅井健一、UA、椎野恭一、TOKIEの4人のメンバーが完成させたEP『ラヴの元型』は、前作『接続』から引き続き鈴木正人がサウンドプロデュースとして参加。さらに今作からは、UAのソロ作品やライブでもともに活動する荒木正比呂もプロデュースに加わった。 今作には表題曲「ラヴの元型」の他、浅井がメインボーカルをつとめる「キティ」「あったかいね」など6曲を収録。初回限定盤には、2021年に開催された「Tour 接続」より中野サンプラザ公<a href="https://bezzy.jp/2024/03/41636/">…

    #AJICO

  • 浅井健一とUAの「THE KINGS PLACE」も3年ぶり復活 AJICO、ニューEP『ラヴの元型』初回限定盤封入の中野サンプラザ公演映像ダイジェスト公開

    2024.02.27 18:00

    UA、浅井健一、TOKIE、椎野恭一からなるAJICOが、3月13日(水)にリリースするニューEP『ラヴの元型』初回限定盤に付属するライブ映像のダイジェストを公開した。 『ラヴの元型』の初回限定盤には、2021年に開催された「Tour 接続」より中野サンプラザ公演の全18曲が収められたDVDが付属。また、AJICOにとって20年振りのリリースとなった前作『接続』以来の今作には、表題曲「ラヴの元型」を含む6曲が収録される。 さらに、J-WAVE(81.3FM)で毎週月~木曜25時から放送中の『THE KINGS PLACE』にて浅井健一とUAが3年ぶりにナビゲーターをつとめることが決定。2人は2<a href="https://bezzy.jp/2024/02/41032/">…

    #AJICO#UA#浅井健一

  • 冬ツアーのファイナル渋谷クアトロ全20曲の熱演をレポート 25周年を超え転がり続ける、ロックンロールバンド・SHERBETSの真骨頂

    2023.12.20 18:00

    まだまだがんばろうかなと思ってる ライブの終盤は、そんなSHERBETS流ロックンロールのつるべ打ちだ。再びキーボードでホーンの音色を鳴らした「LADY NEDY」から繋げたブルージーなギター・リフをたたみかける初期からの人気曲「アンドロイドルーシー」に拍手喝采を贈る観客にバンドは間髪入れずにアンセミックなサビが印象的な「チャームポイント」、さらにSHERBETS流のサイコビリーなんて言ってみたい「CRASHED SEDAN DRIVE」をぶつける。福士が鳴らすコンボ・オルガンの音色がサイファイなんて言葉も連想させる後者では、仲田の思い付きだろうか、全員が拳をぐるぐる回すという楽しみ方がSHE<a href="https://bezzy.jp/2023/12/38137/">…

    #SHERBETS#ライブレポート#浅井健一

  • 特集『UA 25th→→→30th』 UAロングインタビュー(前編)──歌への目覚めとサウンドの変遷

    第1回 2022.07.11 07:00

    何一つ変わっていないような自分がここにいる ──今日はUAさんの「過去と現在」を紐解くインタビューになります。「過去」がだいぶ多めになりますけど。 はい。かまいません。25周年なんで。 ──正確には、デビュー28年目ですよね。 6月21日から28年目です。 ──周年ということもあるのでしょうけど、ここしばらくは非常に活発な動きを見せていますね。単独ライブ、新EPのリリース、フェス出演、8月にはミュージカル初出演も。メディアにも多く出られて、ラジオ番組のパーソナリティも務められている。 お声をかけていただけるのは、ありがたい限りですね。自分も周年を迎えるにあたって周りにやる気を見せていたし、カナ<a href="https://bezzy.jp/2022/07/2850/">…

    #UA#インタビュー

  • 特集『UA 25th→→→30th』 UAロングインタビュー(後編)──東京の再認識から始まった新たな旅

    第2回 2022.07.19 07:00

    ザ・ショーというあり方への反感があった ──2004年3月には5thアルバム「SUN」をリリース。鈴木正人さんを除いて、レコーディングメンバーがそれまでとはガラっと変わりました。 内橋(和久)くんの存在が大きいですね。その次のアルバム「Breathe」で丸ごと内橋くんにお願いすることになるんですけど、「SUN」のときからもうバンマス兼ギタープレイヤーで参加してもらっていて。「泥棒」のあとのツアーは、「空の小屋」というライヴ盤でわかるように自分のアート心を120%満たすことができたんですが、毎回同じ楽曲をリピートしていかなくてはいけないというストレスに向き合ってもいた頃で。だから『情熱』も『水色<a href="https://bezzy.jp/2022/07/3770/">…

    #UA#インタビュー

OFFICIAL SNS

  • Twitter
  • instagram

COLUMN & SPECIAL連載&特集

ALL SERIES

RANKINGランキング

OFFICIAL SNS

  • Twitter
  • instagram