2024.03.19 17:00
2024.03.19 17:00
偉大なルーツも贅沢に味わえる最終日
最終日のヘッドライナーは音楽業界最強の兄貴率いるNOEL GALLAGHER’S HIGH FLYING BIRDSが登場。もはやGREEN STAGEの常連でありヘッドライナーも常連と言っていい兄貴である上、昨年末の来日ツアーも全公演完売と言う相変わらずの無双っぷりを見せつけてからの満を持してのフジ帰還である。しかもOASISでのデビューから数えて堂々の30周年であるタイミングでまたフジに戻ってきてくれることとなるとは、ここ日本、そしてフジロックと彼との長年の蜜月が呼び寄せたものに違いない。これには盛大な歓声とシンガロングでもって応える他ないのではなかろうか。
その他非常に興味深いのは新世代アメリカン・ハードコア(とはいえ結成は2010年)の旗本であるTURNSTILEと新世代アイリッシュ・ポストパンクの旗本であるFONTAINES D.C.が同日にラインナップされていることだ。どちらも近年における自国での活躍ぶりがめざましく、TURNSTILEは2023年に行われた第65回グラミー賞で「最優秀ロック楽曲賞」「最優秀メタルパフォーマンス賞」「最優秀ロック・パフォーマンス賞」の3部門にノミネート。FONTAINES D.C.も2023年のブリット・アワードで「最優秀インターナショナル・グループ賞」を受賞しており、同じ「パンク」をベースとしながらもより熱く陽性な形で発展させたハードコアのTURNSTILEとより冷たく官能的な形で発展させたポストパンクのFONTAINES D.C.が同時代にそれぞれの戦い方と音楽性で自国の評価を勝ち取っていく様はなんとも痛快であり、その対比がここ日本で同日に体験(時間帯が被ってなければ……)できるという、なかなかに挑戦的な采配だと筆者は見ている。
そういった対比構造でこちらも非常に興味深いのが、THE ALLMAN BETTS BANDとCELEBRATION OF THE METERS。どちらもルーツを追体験させてくれる非常にフジらしい采配で個人的には現時点のラインナップで1番アツい2組。前者はアメリカ南部フロリダから生まれたサザンロックの伝説The Allman Brothers BandのボーカリストであるGregg AllmaとギタリストDickey Bettsの実子が中心となって結成されたバンド。そして後者はこれまた南部ニューオーリンズ発のファンク史上最も偉大なバンドの一つであり、その後サンプリングソースとしてヒップホップの発展に多大なる影響を与えたバンドのオリジナルベーシストGeorge Porter Jr.が中心となって編成されており、そういえばと思って調べてみればThe Allman Brothers BandもTHE METERSもレコードデビューが同じ1969年であった。今から55年以上も前に近くの街で生まれ、そしてお互い独自の発展を遂げつつ今の時代になお色づくアメリカ南部ルーツミュージックの深淵が同日に体験できる(これもタイムテーブル次第ではあるが)、音楽好きにとって贅沢極まりなくそしてまたとないチャンスだ。しかし一つ心配なのはTHE ALLMAN BETTS BANDはThe Allman Brothers Bandを代表する楽曲も取り上げるとのアナウンス。「Mountain Jam」なんか演ってくれたら失禁モノだけどあの曲(正しくはその名の通りジャムセッションなのだが)33分あるからなあ……(笑)。
でもって対比といえばRIDEのAndy Bellは元OASISだし、なんならリアムのBeady Eyeの元メンバーでもあるしなあ、なんて思ったり。兄貴がいりゃあこっちもいるぞってなもんで元SONIC YOUTHのKIM GORDON姉貴も各所大絶賛のソロ2枚目を引っ提げて来日だしなあ……などと紐付け(こじつけ)始めたらキリがない最終日。2日目のGLASS BEAMSが気持ち良かったらサイケ枠としてYIN YINも絶対観た方がいい(こちらはよりファンクな音楽性なので、ルーツファンクなCELEBRATION OF THE METERSと現行ファンクなんて対比も楽しめます)し、クリープハイプ、キタニタツヤ、HEY-SMITHにtoeにbetcover!!と国内勢も超強力で台湾のNO PARTY FOR CAO DONGも去年の来日ツアー行けなかったから超観たいんだよなあと、イメージ(妄想)は膨らむばかり。
さあ、筆者の超私的な観点による注目アクト、現時点ではこんなところであるが、いかがだっただろうか。良い子のフジロッカーの諸君は引き続き更なる続報に胸を躍らせつつ、予習と貯金とイメージ(妄想)に励むとしよう。それではまた次の原稿(?)で。