『メテオラ』から新作、次世代アーティストへの思いを語る
マイク・シノダ不変のアティチュード 新鮮さを失わずに“音楽を楽しみ続ける”秘訣とは
2024.01.19 18:00
2024.01.19 18:00
Linkin Park(リンキン・パーク)のメンバーで、ソロでも精力的に活動するマイク・シノダが12月に来日。その目的は、12月1日にリリースした新作EP『The Crimson Chapter』のリード曲「Already Over」を各国のミュージシャンたちとセッションするためだ。世界5都市を訪れたプロジェクトの最後となる日本では、演奏動画がYouTubeやTikTokで話題のかずき(Gt)、MINA(Ba)、マイキ(Dr)、よみぃ(Key)といったバラエティーに富んだ面々が集結。音数を大胆に詰め込んだアレンジで、ボカロ曲やアニソンなどで独自の音楽的発展を遂げた日本ならではパフォーマンスを見せている。
昨年はリンキン・パーク不朽の名作『メテオラ』のリリースからちょうど20年。21世紀で最も売れたバンドと評されながらなお、今も“新しい刺激”を求めるマイク・シノダの根底に流れるものとは。現代音楽シーンへの思いに触れたインタビューから感じ取れたのは、活動初期から変わらない“音楽を楽しむ精神”だった。
自分自身も楽しんで世の中に伝えたかった
──今回は新曲「Already Over」で国を跨いだ現地アーティストとのセッションするために来日されたとのことですが、この面白い取り組みはどこから生まれたのでしょうか?
レコーディングでは自分で全部の楽器を演奏したんだけど、それをどうやって世の中に伝えようかと考えたとき、自分自身も楽しみたかったから、ライブをやるにあたってはスタジオミュージシャンやツアーミュージシャンを雇うのではなくて何か変わったことがしたいと思ったんだ。
今回個人のSNSで発信していて、楽器自体で名を挙げている人たちを選んだのは、そういう人たちはドラムやギターの才能を長く磨いてきて、自力で世の中に名前が知られるところまでやってきた人たちだから。“インフルエンサー”と言ってしまうと今回安っぽい感じになってしまうんだけど、そういう人たちとやろうという発想だった。
──「Already Over」はミックスまで手掛けられていますよね。この曲は好きなギターで遊んでいる時にフレーズが思いついたと伺いました。曲作りについては頭の中で常に何か音楽が鳴っている状態なのでしょうか?
曲によって違うかな。楽器から入ることもあるし、歌詞が先に出てくることもあるし、あるいはメロディーが浮かんでくることもある。場合によってはトラックを完成させて、そこにボーカルを乗せることもあるし、いろんなやり方を楽しんでやっているよ。この曲に関しては、大好きなストラトキャスターをスタジオでいじっているうちにコード進行が浮かんできたんだ。サビは、いわゆる昔ながらの南カリフォルニアのパンク・オルタナティヴ系の雰囲気で、そこから曲が膨らんでいって。ギターを入れないで他のものにしてみる実験もしたけれど、イマイチだったのでベーシックなパンク・オルタナティヴ路線に戻ったんだ。
──近年、まさに西海岸のパンクがまた盛り上がりを見せていますよね。ブリンク 182やフォール・アウト・ボーイの新作も自分たちのルーツに戻ってくるような内容で、ラッパーのヤングブラッドもそういった音楽性を打ち出しています。2000年代のエクストリーム・ミュージックが盛り上がっていた頃の中心人物だったマイクが、西海岸のスタイルに再び手を付けることになったきっかけは何だったのでしょうか?
名前が挙がったような音楽は全て同じ音楽ルーツから枝分かれしていったものだと思う。それはきっと僕も子供の頃から聴いてきた音楽の一部で。ブリンク182のほかには、ラグワゴン、ランシド、オフスプリング、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンとか、子供の頃にロック系のラジオでガンガン流れていたので一通り聴いていたね。あと、グリーン・デイも言っておかなきゃ(笑)。ただ、僕は大ファンだったというよりは「好きだった」という程度だった。どっちかというと、あの頃はヒップホップとエレクトロの間あたりを聴いていたから、ポーティスヘッドなんかがいい例かな。そういう変わったものを結び付けて音楽を作っていくということをやってきた。だから「Already Over」は今までの中では割と直球かもしれない。ヤングブラッドもいい声しているよね。彼の提示しているペルソナ的なところは好きだな。
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