2023.08.14 17:00
泣ける。
最初から言っちゃいます。
こんなに安易に伝えたいわけじゃないんです。
漫画を読んでいても別に泣かせてやろうじゃないんです。
言い方を変えましょう。
沁みるんです。
まさに字面のごとく“心”に“水のさんずい”で沁みちゃうんですよ。
登場人物の心がお互いに沁み合った時の1コマがまたたまらん。
その1コマの絵が極上に優しいんです。
人間の芯の真の心に触れてくるというのでしょうか。
そう、今回の主人公の名前は真の心と書いて真心(まこ)。
真心君は見た目はおかっぱのような髪型の中性的にもみえる小児科医の男性。
趣味だか本気だかはわからないがYouTuberもやっているが少しもバズらないうえに悪意あるコメントに傷つくこともしばしば。
そんな彼は常に患者の事を最優先。
道端で出会った子の様子に気になる所があれば声がけすら厭わない。
そしてひたすらに優しい。
子供の病気を沢山の症例から瞬時に導き出す診断力はもちろんのこと、その家族や周りの人に罪悪感を抱かせないよう言葉をかけ心のケアまでもしてのける。
ああ何度でも言いたい。
優しい。
なぜにこんなに優しいのか。
どうやら幼少期における彼の家族の形が多分に影響してるようだ。
父親は元々大病院の院長。
そして母親は小児科医。
そしてその父親は一見心無いともとれる「医療も金だ」と、母の働いていた小児科をつぶしてしまう。
そんな父を反面教師としてなのか真心君は、患者さんの笑顔がみたい、病気を治すことだけが仕事じゃなく、子供とそのご家族の心のケアまで考えるの必要があるんじゃないかを信条としている。
そして、そんな絶縁状態の父からある手紙が届く。
「小児科を開業します」と。
そしてそこに足を運びみた景色はこれまでの自分の知ってる父親からは考えられないような、まさしく子供のために作られた病院の様相。
何年ぶりかに会うやいなや、一緒に働きませんかと言う父。
なぜ今あなたが小児科を、と問う息子。
『プラタナスの実』
物語冒頭にプラタナスの木の説明がある。
別名ヒポクラテスの木。
医学の父とも言われるヒポクラテスの名だ。
なるほど。
私なりに調べてみた。
プラタナス。
和名はスズカケノキ。
鈴懸とも書く。
主人公の名前は鈴懸真心。
なるほど。
病院の経営に夢中であったが、かつての母と同じ言葉を言った父。
患者思いの小児科医だった母。
その小児科医の道を歩み始めた真心。
そして父と同じく小児外科医の道を歩み日本に戻ってきた兄。
そんな鈴懸家の話しでもあるのですね。
医者も患者も誰しもがいくつになっても成長できる家族の話。
物語を通して読者の心と生活もいつの間にか診療してくれる新しい医学。
『プラタナスの実』。
真心くんの周りに染み渡る優しさであなたの心の芯も泣き沁みる。
にしても、心ってこんなにもちゃんと漢字に使われてるんですね。
かく言う私も悠来という名前です。
……下心ですが。
1話ごとに挟まれる扉絵(合ってるかどうか)も余すところなくお見逃しなく。