本間昭光のMUSIC HOSPITAL 第9回 小林柊矢(前編)
小林柊矢が『柊』に込めたストーリー、愛を直球で伝える勇気とこだわり
2023.03.03 12:00
2023.03.03 12:00
「愛」を伝えるには歌が有効(本間)
本間 自分が愛を伝えた経験っていうのはある?
小林 愛って言葉なかなか使わないですね。詞で「愛してる」は書いたことあるんですけど。
本間 いまだに「愛してる」って言ったことない(笑)。日本人における「愛してる」っていうのはなかなか歌詞以外で言うことないんじゃないかなと思う。
小林 たしかに、英語の「アイラブユー」と全然違いますね。
本間 照れ臭さもあるし。だから実は最近の言葉なんじゃないかなって。だけどなんとなく伝わるじゃん? その伝わる媒体として有効なのが、歌なんじゃないかなと思ってて。難しい言葉であるんだけれども、それだけ特殊な表現なんだろうなって思う。
小林 人間に一番身近じゃないですか? 何をするにも愛があって、感じ方とか捉え方が違ったとしても、ちゃんと共通するものはあると思うし。難しいですね。
本間 「愛がなきゃ」って言われたらみんなわかっちゃう。たしかにそうだ、愛がなきゃダメだなって思うんだけども、じゃあ「愛」とは何なんだろうって。「愛情」と「愛」っていうのも日本語って難しいなあっていうのは常に思ったりしてる。
小林 ずっと一緒に仕事してるスタッフさんにも常日頃ずっと愛を感じてて、行動でもそうですけど、話す温度も感じるし。行動じゃ示せないものですよね、愛は。
本間 関係性があってこそということかな。このテーマを一曲目に持ってくるのも勇気が必要だし、でも歌詞がシンプルだから。そのシンプルな言葉っていうのは一番強いのかなと最近思うんですよ。この歌詞は、シンプルの中に奥深さがある。
小林 この歌詞もそうですし、飾らない鳥山さんのアレンジも。本間さんもそうですけど、レジェンドの方たちってよりシンプルなアレンジで、どれだけ豪華にできるかじゃないけど。厳選して作っていただけてるから深いというか。ザ・ストレートの「愛がなきゃ」っていう歌詞にも通ったアレンジをしていただいたなって印象ですね。
本間 小林くんはスタンダードなイメージがあるんですよ、すごく。この時代ってスタンダードって意外と敬遠されがちかなって思う部分があるわけ。TikTokとかInstagramで言葉をひねったりとか、おもしろいメロディの方が重宝されるような時代において、あえてスタンダードな直球で勝負している感じっていうのがすごく勇気があるなっていうか。素敵だなって思ってるんです。
小林 ありがとうございます。
本間 続いて、3曲目「笑おう」。MV観ました。子供たちかわいいね。
小林 めちゃめちゃかわいいですよね。イントロにも笑う声が入ってるんですけど。作り笑いじゃ嫌だから、僕がみんなの前で変顔したんですよ(笑)。
本間 笑い声が入ってよくなったね。イントロの頭。
小林 本当ですか? 最初か最後か迷ったんですけど。最初でよかった。
本間 この曲が柊矢くんとの初めてのセッションだったんだけども。どうでした? やってみて。
小林 僕がデモで作ってたのは弾き語りだったので、リズムが入ることによって、こんなにも温かい。本当に“笑おう”というタイトルに沿った、思わず踊りたくなるようなリズムが追加されて。すごい新鮮でしたね。
本間 構成おもしろいですよ。Aメロが1回しか出てこない。
小林 最初はあったんですよ。でも何回聴いても飽きない曲にしたくて削ったんです。
本間 自分の癖っていうのも分かったと思うんです。次から生かされていくことになると思う。いいセッションだったから僕も楽しかったです。
小林 ありがとうございます。コーラス頑張ったので、この後の「惑星」っていう曲も頑張ったんですよ。自分の中でも成長できた曲ですね。
本間 メッセージはシンプルだよね。「今笑ってますか?」みたいなこととか。コロナの時代ですから。ようやく快方に向かっていこうとしている。そして、次の「レンズ」。
小林 これは去年の誕生日に出したので、ちょうど1年前のやつですね。
本間 トオミヨウくんのアレンジと曲って合ってるね。彼は今の尖ってる音楽とスタンダードな音楽の真ん中を選ぶことができるような存在だと思いますね。それが良いバランスをもたらしているような気がする。この曲の一番伝えたかったことって?
小林 これは「レンズ」っていう題名から作ったので。フレーズをまず作ったんですよ。“⽬を背けてたものも 逃げてたことも全部 きっと君に逢うための 寄り道だったんだね”ここが自分で気に入ってる場所です。
本間 トオミくんの作り、後ろの方に真実をもってくるみたいな。そういうのを楽しみながらファンは聴くんだろうね。
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