2023.02.15 18:30
昼夜問わず聴ける曲を書かなきゃ
──今回のアルバムの「A面」を聴かせていただいて、歌とギターのバランスというか立ち位置が整理されてきたなと感じたんです。それぞれの方向を向いて突っ走っているわけでも、一致団結して走っているわけでもなく、それぞれの場所で自分がやるべきことをしっかりやって、それが上手く噛み合っているというか。
水上 一緒にいるうちにそうなっていったのかな。
岡田 ギターについて言うと今回のアルバム、私はヴォーカルを邪魔しないように、歌っていないところではメロディラインを動かしたりもするけど、歌っているところは静かに弾くようにしようとしていましたね。
──そうそう。だから歌とギターなんだけど、デュエットしているみたいだなと思ったんです。もちろん水上さんが歌っているんですけど、歌がやむと今度はギターが出てきて、ギターがちゃんと歌っているっていう。そういう形が今回確立したのかなって。
水上 4年間のときを経て、そうなりましたね。
──水上さんと岡田さんの人としての関係性も変わってきました?
岡田 お互い、歳をとったというか(笑)。いい意味で。
水上 そうだね。お互いの付き合い方がちょっとずつわかってきてるみたいな部分はあるかもしれないです。最初は結構バチバチになることもあったんですけど、今はある程度「ここは嫌だ」ってちゃんと言い合える感じになっていて。やっぱりどう転んでも人と人なんで、ぶつかるときはぶつかるんですよ。でもそこを差し引いて、お互いの存在が居心地がよくなるように意識し合っているような感じはあります。
──お互いを尊重するというか。
水上 そうですね。真逆なところはすごい真逆なんですよ、考え方が。だからやっぱり「どうする?」ってなるときはあるんですけど、そういうときにお互い歩み寄ったり、どっちかに寄ったり、そういうふうにうまい具合にやっていってるって感じですかね。
──そういう人との向き合い方みたいなのって、ふたり以外の人に対しても変わってきましたか?
水上 それこそ今メインでやってくれているサポートメンバーが、もう3年ぐらいの仲になってきたんですよね。なんかチームとして大きく人が変わってないっていう部分があるんで、なんかすごく安定してきて。結構もとが人見知りなんですけど(笑)、ライブでもレコーディングでもコミュニケーションはうまく取れるようになってきたかなって思ってます。サポートの利点って「こういうことをやりたい」っていうときにそれをやれる人を呼べることだと思うんです。じゃあ逆にサポートを変えない利点って何かというと、たとえば自分が「こういう間がほしいんだよな」っていうときにその間をわかってくれるんですよね。そういう人とやるのが私としては一番やりやすいなって思います。
──そういう意味では、今回は「ハレモノ」や「luna」に刄田綴色さんが参加していたりしますけど、そこはまた別の新鮮な体験という感じでしたか。
水上 刄田さん、ヤバかったね(笑)。
岡田 うん。
水上 デモ作りのときから一緒にやってもらったんですけど、曲がなんかすごい生き生きし始めた感じがあって。弾き語りのときにあった……私は詞を先に書く人間なんですけど、刄田さんはその詞への理解を深めた上で曲を広げてくれる感じがあって。歌を書いて歌う身として、一緒にやってて最高の人だなって思いました。新鮮でありながらも、やっぱり小さい頃から聴いていた人でもあるので、なんか馴染みもあって。
岡田 音を聴いていて感じるものと、実際に合わせて感じるものは全然違うんだなっていうのは、いちプレーヤーとして感じました。
──今話してくれたメンバー、サポートメンバーとの関係性もそうなんですけど、そういう人との向き合い方とか人を介した世界との向き合い方が大きく変わった感じが、歌詞にも出ていると思うんです。
水上 ああー。
──最初の頃のなきごとの曲って、びっくりするぐらい孤独だったじゃないですか。
水上 (笑)。やっぱり最初は自分1人で……今も自分1人で書いてるんですけど、やっぱり内側に矢印が向いた状態で書いていたんですよね。誰に何を言われるでもなく、好きに書いてた。だから夜とか1人とか孤独とか、そういう曲がどんどん増えていったんです。でもチームでやっていく中で「昼間の曲とかあったらアルバムの中で彩りが出るんじゃない?」とか「もっとこういうふうにしたらいいんじゃない?」っていうディスカッションもあって、そこからどんどん意識的に広げて書いていくようにしたんですよね。もしかしてそういうところかもしれないです。自分としても意識的に昼夜問わず聴けるような曲を書かなきゃなとも思っているし。
──性格的な変化も現れてきているんですか?
水上 あるかもしれないですね。
岡田 大人になったよね。歌詞の世界観が、とんがってるけど優しいとんがりになったみたいな感じがします。
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