フジロックにも出演する世界のトップランナーが旧友に語る
ルイス・コールにとって“良い音楽”とは?新作から辿る音楽遍歴と制作哲学
2023.02.03 12:30
2023.02.03 12:30
「変なこともイケてる」という風潮について
── ルイスの歌詞では社会に対するメッセージや自分の感情が表現されているけど、そのアウトプットの方法がジョージ・クリントンを彷彿とさせる。社会に対するメッセージもあるけど、それが面白おかしい比喩表現などで書かれてる。あまり直接的ではない表現だから逆に深く聞こえる。
それに気がついてくれたのが嬉しいよ。あまりにも真面目で真剣な表現になると、説教してるように聞こえるのもある。あとは直接的にそのまま投げかけるような歌詞を、自分のサウンドの上で上手く乗せる方法がまだわかっていない。特に僕のサウンドのヴァイブスだと、面白おかしい比喩表現にして伝えたほうが曲にも合うし、伝わると思う。
──そっちのほうが自分のメッセージが伝わるようにも思う。
僕もそう思うよ! 特に僕と君がやってるような音楽においてはそうだと思う。
──特にルイスは社会的なメッセージを伝えるにおいて、まるで「トロイの木馬」のようなやり方が上手いと思う。面白おかしいリリックで、知らない間にリスナーの内部に入っていたみたいな。
そういう書き方しかわからないし、もしそう伝わってるならいいな。
──リリックを書くのと曲を作るのどっちが時間かかる?
大体は曲のほうが時間かかるかな。でもリリックに時間がかかるときもある。「I’m Tight」とかはかなり時間かかった。
──「I’m Tight」の「You think I’m weird but still fucking here, that is why I’m tight(あなたは私を変だと思うけど、まだ私はここにいる。だから私はイケている)」とかはかなり強いパンチラインだよね。世の中、誰もがある意味自然に「変」ではあるけど、その「自然で変な自分=イケてる」というメッセージを伝えることによって、ルイスはリスナーや世界に貢献していると思う。ルイスのようなアーティストを見て、自分の変な部分をクールな要素として擁せるようになる人もいると思う。
それが本当だったら嬉しいな。確かに僕が小さい頃はもっと固定の「イケてる/カッコいい」のイメージがあって、クールであることの範囲が狭かったと思う。特に90年代は。今では、世間的に“変”なことでもクールになれることはある。人間なんてある意味全員“変”だしね。
──だからルイスは日本で愛されているのかもしれない。日本は今いろいろ価値観が変わってきている転換期な気がしていて、いわゆる前時代のマス的な「カッコいい」だけじゃなくて、もっと“変”を擁して色々なクールが認められるようになっていると思う。そのなかでルイスのような存在を見ると、自由に自分なりの「イケてる」を貫いてるように見えるから、そういうところも愛される理由なのかも。
それを聞くと確かに納得かもしれない。中学生のときイジメられたりしたわけじゃないけど、変なやつだってたくさん言われたし、バカにされたこともたくさんある。そのときにも「変なこともイケている」という価値観がもう少しあったらよかったのにって思うことはある。
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