2022.10.17 12:00
2022.10.17 12:00
単にいいものだけを並べることを目指して作ってる
──そうなんですね。こういう言い方をするのも僕自身が大嫌いなんですけど、コロナ禍における二元論化へのアンチテーゼとして、ある意味架空の世界に逃げ込むっていう意味では、すごく批評的で批判的なアルバムですよね。
結局そうなんですよね。後からこうやって解説だったり説明をいくらでも加えることができちゃうんです。さっきの安い・早い・美味いみたいに、本当はただこれがBGMで流れてて、みんながなんとなくいいねと思えるものを作ったつもりではありつつも、喋ろうと思えばいっぱい喋れるっていう(笑)。なるべく攪拌してごまかしたんだけどね。
──それが志磨さんの作家性になっている気がします。二元論ではない可能性をずっと見ていたいし、そこにスポットライトは与えていくべきだと俺も思いますし。
多分昔は逆だったんだよね。絶対に僕が正しいんだ!みたいな。時代というと大げさですけど、10年前は世間の方があやふやで、何をそんなムキになってんのって言われても「こっちは命かけとんじゃ!」みたいな。それがいつからか、世間の方がいちいちムキになるようになって。そうなると僕は「どっちでもいいじゃん、そんなこと」っていう歌を作りたくなる。非常に天邪鬼な性格なので。
──なるほど。本当にちゃんと話を聞かないとやっぱわからないもんですね。とはいえ、音楽は音楽として知識を先行に多分聞いて欲しくない人だと思うんですよ。
うん。だからね、いつも、ただ単にいいものだけを並べることを目指して作るんです。同時に、それがいかにいいかっていうのは、ちゃんと言えないといけないと思う。
──あと、これは何回も聞かれる質問だと思うんですけど、『戀愛大全』の「戀」を「恋」にしなかったのはなぜだったんでしょう。
漢字4文字の中国とか香港の映画みたいなタイトルがいいなと思って。ウォン・カーウァイの『堕落天使』バーン!みたいな。これもさっきの漢字とひらがなの話じゃないですけど、「恋愛大全」って書いたら、急にanan感がでるじゃないですか(笑)。 いつも新しい曲とかアルバムのタイトルは他に誰か使ってないか調べるんですよ。で、今回も「恋愛大全」ってGoogleで調べたら、出てきたのは「恋愛テクニック大全」って本だけだった(笑)。
──あと一つだけ最後に聞きたいんですけれど、「#ラブソング志磨しか勝たん」(今作のキャッチコピー)というのは、どなたの差し金なんでしょうか(笑)?
差し金で言うと、まあ所属レーベルですけど。勝たんのでしょうか、大丈夫ですか?
──「#ラブソング志磨しか勝たん」で知って曲を聴いたら、かなしい歌いっぱいじゃねえか!みたいなね。
本当にね、僕のラブソングは縁起の悪い歌しかないですからね。たまに人の結婚式とか呼ばれて歌ってくださいって言われるんだけど、ないのよ。全部別れる歌だから。しょうがなく毛皮のマリーズの「愛のテーマ」を歌うことになる。
──そんなね縁起の悪い歌ばかり入っているアルバムですけれども。
だから、お客さんもいつも1人でくるのか。
──このインタビューでも一番太字にすべきところは、ライブに友達、家族、恋人を連れて来いよと(笑)。
マルチ商法みたいじゃん(笑)。