稲葉友らキャスト陣の魅力、福原充則演出の“絶妙さ”を解説
Travis Japan・松田元太の魂の歌声に何を思う?全てのもがく人へ贈る舞台『俺節』開幕
2026.06.15 21:00
2026.06.15 21:00
ときどき、これは“演じる”というより“その人そのもの”と役柄が融合しているのでは? そうしないと演じることができないのではないか、それこそがこの作品で求められていることなのでは……そう思わせるような作品がある。今回の『俺節』、そして主人公コージを得じた松田元太に感じたのは、まさにそんなことだった。2026年6月10日、舞台『俺節』が東京建物 Brillia HALLで開幕。前日の9日に公開ゲネプロと記者会見が行われたが、そのゲネプロを観た感想だ。

歌手を目指して青森から単身上京したコージ(松田元太)は、抜群の歌唱力を持ちながら、極度のあがり症のせいで、実力を発揮できずにいる。お調子者のギター弾き・オキナワ(稲葉友)は、コージが抱く演歌へのたぎるような情熱にほだされ、自分が根城とするドヤ街「みれん横丁」に連れていく。と、偶然そこにヤクザから逃れようとする外国人女性、テレサ(キム・チャンミ)が駆け込んでくる。持ち前の正義感から彼女を助けようとしたコージは、ボロボロに殴られた末、無我夢中で歌い出し、周囲を圧倒する。


テレサは不法滞在中のストリッパー。彼女への想いが募れば募るほど、コージの演歌は強く、深くなる。やがてオキナワとのコンビで、流しの歌手としての修行を始め、コンテストへの出場を繰り返す中、デビューの話が持ち上がる。だがそれは「コージ1人で、ソロ歌手として」という条件付きだった——。

原作は、『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)にて、1991年~1993年にかけて連載されカルト的人気を博した土田世紀の漫画。2017年に福原充則が演出、安田章大主演で舞台化され、今回は再演となる。新たにTravis Japanの松田元太を主演に迎えた再演との報が出るとかなり話題となったが、それはこの作品の初演が非常に好評を博しただけでなく、ある意味“伝説”となっていたから。しかし、不安と期待を持って劇場に足を運んだ人の多くは、驚き、圧倒されたのではないだろうか?
コージという役の無骨さと、不器用さと、その内に秘めた優しさ、弱さ、野心。松田元太の持つキャラクターが、こんなにも合う役があるとは! 才能を持ちながらもけして順風満帆なサクセスストーリーではないこの『俺節』、いやむしろコージをはじめ登場人物たちには不遇な出来事ばかり起こるのだが、その中でもがく姿がとてもリアリティを持って迫ってくる。Travis Japanと彼のファンなら、彼らがどれだけの下積みと苦労を経てきたかをよく知っているだけに、重ね合わせてしまう人も多いのでは。「世の中とっくり返してやる」の言葉が、実感を持って耳に届いてくる。

そして改めて驚かされるのは、松田元太の“歌”だ。もともとダンスの能力に関しては言わずもがな、実は歌唱力の高さもファンにはよく知られていた彼。ただ、Travis Japanという全員が並外れたダンススキルを持つグループに所属していることもあり、あまりそこはフィーチャーされてこなかった印象だ。しかし今作で、コージが一声歌い出したときにファンも、ファンでなかった人も全員が驚くのでは? 普段彼が歌っているのとは異なる演歌や歌謡曲ジャンルの曲ということもあるが、身体全体を使って響かせるような圧倒的な声量と声質は、テレビはもちろん、ライブでの彼ともまた違う。演歌について「普段おじいちゃんといるときはよくおじいちゃんが歌ったりするので、馴染みがあった」と会見で語った松田。世代の割にそういう歌に親しんできたのが功を奏したのかもしれないが、彼の歌う「北国の春」をはじめ往年のナンバーがとても胸に迫り、新鮮に聞こえた人は多いはずだ。
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