ドラマ『世界で一番早い春』主演俳優が語るルーツと覚悟
「やるからには中途半端なことはしない」吉田美月喜が“立ち止まらない”と決めた理由
2025.07.17 19:00
2025.07.17 19:00
10代は無限の可能性があると大人は簡単に言うけれど、実際のところ10代なんて自分の才能が信じられなくて、周りがみんな輝いて見えて、悩んで立ち止まってばかりの鈍色の季節なのかもしれない。それでも、ほんの少し勇気を出してみるだけで何かが変わる。放送中のドラマ『世界で一番早い春』は、不思議な力で高校生活をやり直すタイムスリップラブストーリーだ。
主人公・晴田真帆は『リバイブライン』という大ヒット作を抱える人気漫画家。だけど実は、『リバイブライン』は高校時代に亡くなった漫画部の先輩・雪嶋が遺した設定ノートから描き上げたものだった。自分と違って、才能も、夢を形にする行動力も持ち合わせている雪嶋。真帆はずっと雪嶋のことが眩しかった。もしも人生をやり直せるなら、『リバイブライン』を雪嶋先輩に返して、自分の力で漫画を描き上げてもらいたい。そんな真帆の願いに応えるように、今、時計の針は逆方向へと進みはじめる。
真帆を演じた吉田美月喜もまた、自らの才能と向き合いながら女優の道を歩いている。自分を信じられなくなりそうになったとき、彼女を支えたのは大好きな母からの言葉だった。

仕事にすべてを注ぎ込む覚悟が決まりました
──高校時代の真帆は、漫画を描くのは好きだけど、プロの道へと踏み出す勇気を持てずにいました。そんな真帆の気持ちは、吉田さんもわかるところがありましたか。
そうですね。特に真帆の場合、身近に雪嶋先輩という自分より絵が上手い人がいるので。プロになれば、もっとすごい人がいっぱいいる。それなのに、この時点で雪嶋先輩にも負けている自分がプロなんて……という気持ちはすごくわかるなと思いました。
──雪嶋先輩みたいに、世代の近い同業者で「こんなに上手い人がいるんだ」と衝撃を受けた人はいますか。
(河合)優実さんですね。いやあ、かっこいいですよね……。
──同業者でもそう思うんですね。
私、同世代の女優さんに悔しいという思いはなくて。みんなそれぞれ色が違うので、悔しいというより、自分にはない個性に対して尊敬の気持ちがあるって感じなんですけど、優実さんに関してはただただ圧倒されました。最初にドラマでご一緒したときから雰囲気があるなと思っていましたし、声も好きで。今のご活躍もいろいろ見させていただいています。『ルックバック』で一緒にお仕事ができてうれしかったなと思うし、またいつか絶対に一緒にやりたいと思う女優さんです。
──『ルックバック』のあとも連絡をとったりしてるんですか。
一緒にご飯に行きました。すごくいろいろな話をして、お互い刺激になるし、楽しいです。
──そういう意味では、「一人で好き勝手に描いてるときは、ちょっと自信もあったのに……今は、自分の才能のなさに、がっかりしてばっかりなんです!」という真帆の台詞には思うところがあったのではないでしょうか。
私も自分には才能がないと思ったことがありました。でも、その考えにとらわれちゃうと何もできなくなる。特に演技は、これが正解ですというわかりやすいものがない世界。なので、そこはもうポジティブに捉えるしかなくて。自分に才能がないと思っても、じゃあアップデートするために頑張らなくちゃって、最近やっと気持ちを切り替えられるようになりました。
──最近やっと、ということはそれまでは心が砕かれる時期も?
特に事務所に入ったばかりの頃はオーディションに落ちるたびに「またダメだ」「またダメだ」ってズンと沈んでいました。

──いちばん底だったのって、どれくらいの時期ですか。
正直に言うと、デビューしたての頃はそうでもなかったんです。初めて受けさせていただいたオーディションが広告のお仕事だったんですけど、ありがたいことに受かっちゃって、そこで謎の自信がついてしまったんですよ(笑)。でも高2とか高3くらいの時期かな。続けていくうちに「あれ?」「あれ?」と思うようにいかないことが増えてきて。ちょうどコロナ禍も重なって、このまま仕事ができなくなったらどうしようって悩んだり、大学に進学するべきなんだろうかとか、自分の将来に対して心が揺れていました。
──そこから突破口を開くきっかけになったのは何があったんでしょう。
私、この仕事を始めるまで将来の夢がなかったんです。小さい頃は心臓のお医者さんになりたいとか思っていましたけど、全然本気ではなくて。本気で頑張りたいと思ったのは、この仕事が初めてです。「その年でそんなやりたい仕事に出会えることなんてないんだから」と母が言ってくれて。母の後押しで、そうだ、私からこの仕事をとったら何も残らない。だから、この仕事がなくならないように、仕事にすべてを注ぎ込むのが正解なんじゃないかって覚悟が決まりました。
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