2025.06.27 18:00
2025.06.27 18:00
住むところはどこでもいいし、それだったら地元がいい
──ちなみに今回Rin音さんが主題歌を手がけたのは、松居大悟監督の希望だったそうですが、松居監督とは面識は?
一回ラジオでお話をさせてもらいました。それ以降は特に交流はなかったのですが、先日、松居監督が演出を手がけた万能グローブ ガラパゴスダイナモス×ゴジゲン×小山田壮平『見上げんな!』を観させてもらって、最後に少しお話しさせてもらいました。でも交流は正直それくらいです。
──お二人とも福岡出身ですが同郷ということで何かお話があったりとかそういうことは?
『リライト』の舞台が福岡とかそういうことでもないので、別にそこに対して何かということはないですけど、シンプルに松居監督も福岡出身というのはうれしいです。僕はいまだに福岡に住んでいるので、福岡出身の方の活躍はすごくうれしいし、勉強にもなる。福岡出身の方が活躍してくれることで、自分が福岡にいる理由の一つにもなるというか。

──そもそもRin音さんがいまだに福岡で活動を続ける理由は何なんでしょうか?
シンプルに東京が合わないから(笑)。それに、福岡って空港も都市部から近いから東京に行こうと思えばすぐに行けちゃうし。自分自身、たくさんの人に聴いてもらえるようになったのはコロナ禍だったので、リモートで音楽活動を行うのが自分のペースになっちゃって。だったら住むところはどこでもいいし、それだったら地元がいいなって。
──昔から福岡出身のアーティストや文化人は多いですが、実際に福岡で活動するRin音さんから見て、福岡という街は、カルチャーという目で見るとどういう場所なのでしょうか?
自分のことで言うと、自分はゴリゴリのヒップホップがルーツなんですけど、それって当時の福岡のクラブシーンからするとちょっと異色なタイプで。その頃、ブーンバップとかトラップミュージックが流行っていたので。だけど、そういう自分を受け入れてくれるような器の広さが福岡のクラブにはあって。そういう異質のやつが出てきても、フラットに良ければ良いものとして扱ってくれる感じがあるんですよね。その器の広さって、たぶん……天神くらいしかクラブがないからなんだと思います。みんなそこに集まって音楽をするしかないから、いろんなやつが一つの箱に集まって。この間もKieth Flackにイベントを見にいきましたけど、やっぱりいろんな音楽が流れていて面白いなと思いました。
──ちなみに、東京に住む友達が福岡に遊びに来たら、どうおもてなします?
福岡って観光するようなところがあんまりなくて……。とりあえず車を出して、糸島のほうに行って、カフェとか牡蠣小屋に行って。その後、天神に戻ってきて、車を置いて飲みにいく、かな。福岡はご飯がおいしいところが強みだと思うので。自分の思うベストラーメンとか、自分の好きな店へと連れ回します(笑)。
──そして6月25日にはニューアルバム『error clock』がリリースされました。こちらはどんなアルバムになっていますか?
たまたま昔のパソコンを開いたときに、パソコンの時計が止まっていたんですね。そのせいでネットの検索履歴を見ようと思ったらネットが開けなくて。どうやらパソコン本体の設定時間が狂っているとうまく作動しないらしくて。時計を今の時間に戻したらネットも見られるようになったんですけど、それと同じように、自分の心の中の時間が昔に合っていると、うまく現実が運べないことってあるよなと思って。何か思い出に浸っていると、うわの空になって仕事をしているみたいなことってあるじゃないですか。それが面白いなと思ってそういうアルバムにしたいなと思いました。
──つまり、いろいろな時間、いろいろな感情が歌われていると。
はい。あと夏の曲の次に春の曲が来るようにして時間が遡っていると表現したりしていて。曲順にも意思を込めているので、そういうところも楽しんでもらえたらうれしいなと思っています。
──新譜含めて、この先、どんな音楽をやっていきたいと思っていますか?
昔から言っていることなんですが、自分が面白そうだなと思うことは、固定概念にとらわれずにやっていきたいですね。「存在するジャンルなのか」とか「音楽理論的に間違っている」とかそういうのは全部抜きにして、“良ければ良い”の考え方で活動していきたい。例えば曲を作っていて、音楽理論がわかる人に「音がぶつかっている」と言われたとしても、「ぶつけとけ!」って思うし(笑)。形とか理論とか、そういったものにこだわらずに、自分ができる表現をし続けていきたいです。
──そうやって生み出した音楽は、聴いた人にとってどんな役割を担ってほしいですか?
うーん……。
──聴いた人にとってどうということよりも、自分が曲を作るということに面白さを感じている?
そうですね。「人に勇気を」とかあまり考えていないかも。もちろん最終的にそういうものになっていたらうれしいですし、そういう感想をいただくのはすごくうれしくてやりがいになっていますけど、あくまでも自分にとっては自分の楽しさでしかないというか。いろいろなことを意識しすぎて思うように活動できなかった時期もあったので、今は自分に素直に、自分がいいと思うもの、楽しそうだなと思うものをやっていきたいです。
