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REPORT

丹生明里、映梨那、中村里帆らが織りなす物語の魅力とは

時代を超え、“道を切り開く”少女たちに胸が熱くなる 舞台『フラガール』がくれるエネルギー

2025.05.27 20:15

2025.05.27 20:15

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変わりゆく時代に立ち向かったフラガール

何と言っても、卒業後初の単独主演にして、紀美子を見事を演じあげた丹生明里に喝采を贈りたい! 紀美子はもともと親友に誘われたという理由でフラガールになり、とある事情からリーダーになってしまうも、落ち込んでしまい踊れなくなることもある……そんな等身大のキャラクターだ。彼女の天真爛漫なキャラクターが、紀美子という役のチャーミングさに魅力を増している。また、それでいて“芯がある”存在感というのだろうか? 膨大なセリフ量と運動量、そしてフラダンスのスキルが求められるこの作品で、よく通る声と安定した体幹で、危うげなく舞台の中心に立ち続けている。日向坂46時代に舞台作品は経験しているが、実は舞台自体はおよそ6年ぶり。とてもそうは思えないし、今回の彼女を見て、今後も舞台出演を続けてほしいと思う人は多いはずだ。

彼女を取り巻く他のフラガールたちも魅力的。真っ先に、「この生活を、自分を変えたい」という理由でフラガールのオーディションに飛び込む早苗役の中村里帆は、芯の強さと優しさを兼ね備えたキャラクターを見事に演じている。シングルマザーの初子を演じた木﨑ゆりあは、舞台出演も多いだけにさすがの安定感。シングルマザーならではの強さとコミカルな部分のバランスが絶妙だ。菅原りこが演じた和美は、舞台オリジナルのキャラクター。反対派とハワイアンセンター建設への賛成派の間で思い悩むリアリティを持つ役柄を繊細に演じ上げた。

和美役の菅原りこ

また、舞台上で大きな存在感を放つのがまどか役の映梨那! Netflix『悪役女王』のジャガー横田役で鮮烈な印象を残した彼女だが、もともとはE-girlsのメンバーとして活躍していた経歴を持ち、グループ内でも屈指のダンススキルで評価されていた。ダブルダッチの世界大会で優勝経験を持つなど身体能力の高さは折り紙付きだが、それでも今回はフラダンスの講師という役柄。慣れないダンスの習得は相当大変だったと思うのだが、彼女がフラガールたちの前で初めてダンスを見せるシーンは圧巻の一言! ぜひ、楽しみにしていてほしい。

まどか役の映梨那

今作、フラガールたちを支える“大人”のキャストたちに手練れが多いのも安心して見られる理由の1つだろう。前回出演のときはヤクザの取り立て役で今回は紀美子の兄役、まどかとの関係性に繊細な演技を見せた細貝圭。物語の舞台となっているいわき市の出身だけに、今作への出演にひときわ熱が入る神尾佑は、構成・演出をつとめた岡村俊一作品の常連。出てくるだけで作品全体のトーンが引き締まるようだ。また、紀美子の母・千代役を演じる有森也実の“母ちゃん”ぶりも見事だ。

紀美子の兄を演じた細貝圭

『フラガール』という作品自体、常磐ハワイアンセンター……現在のスパリゾートハワイアンズの誕生までの経緯を描いた実話ベースのものだ。物語の舞台になっているのは昭和40年、1965年。明治から大正、昭和に至るまで、日本のエネルギーを支えたのは「石炭」であり、「黒いダイヤモンド」とも呼ばれたほど。昨年放送されたドラマ『海に眠るダイヤモンド』でその時代と炭鉱のことを知った人も多いのではないだろうか?

衰退するまでの炭鉱は危険な作業を伴いながらも莫大な富を生む場所であり、炭鉱の運営会社と従業員の家族は強い絆で結ばれている、それを象徴する言葉が舞台中にもたびたび出てくる「一山一家」。炭鉱で働く人々は全員が“家族”という考え方だ。しかし、時代の流れとともに石炭の価値は下がってしまい、炭鉱採掘会社「常磐鉱山」の業績も下がっていく一方。常磐ハワイアンセンターの設立はそんな時代だったため、社員の解雇が相次ぎ、会社への不信感も募っていく。観る人の中には「なんでそんなに建設反対を?」と疑問に思う人がいるかもしれないが、ハワイアンセンターの建設にはそんな背景がある。それを考えると、少女たちがどんなものに抗い、自分たちで道を切り開いていったかがリアリティを持って迫ってくるし、より物語の展開に胸を熱くしてしまう。

記者会見で河毛は「懐かしいエンターテイメントをやる話ではなく、今の時代を生きる人々の物語として演出したつもり。石炭産業というものが斜陽を迎えて滅びていく中で、エンターテインメント産業への転換、ものすごく大きな産業構造の変化の中で、今の言葉で言うとリスキリング……もがきながら、自分の道を見出してきた人たちの物語」と語った。変わりゆく時代の中で、失われるものへの悲しみと、変化しなくてはいけないことへの恐怖……これはどんな時代にも起こり得ることで、まさに今私達も直面しているものでもある。フラガールたちが立ち向かったのは、そういった恐怖心にしがみつく人々と、時代そのものでもあるのだ。笑って、泣けて、華やかなダンスシーンにまた涙する。そんな舞台上からのパワーに日々を乗り切るエネルギーをもらえるような、そんな作品だ。

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作品情報

舞台『フラガール - dance for smile ‒ 』

舞台『フラガール - dance for smile ‒ 』

2025年5月22日(木)〜6月2日(月) 全13公演
会場:新国立劇場 中劇場
5月27日(火)18:00 ・29日(木)18:00 抽選会
5月28日(水)13:00 ・30日(金)18:00 トークショー

公式サイトはこちら

スタッフ&キャスト

作:羽原大介 李相日
総合演出:河毛俊作
構成演出:岡村俊一

【出演】
丹生明里 映梨那 中村里帆 木﨑ゆりあ 菅原りこ
大串有希 飯田桃子 夏生ひまり 吉川真世 尾崎明日香 大田和歩 古橋早紀子 雛田みかん YUKA MEGUMI
細貝圭
久保田創 濱田和馬 工藤潤矢 大石敦士 河本祐貴 松本有樹純 近藤雄介 杉野豊 黄類 黄萌奈
神尾佑
有森也実

協力:ジェイ・シネカノン
制作:アール・ユー・ピー、エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ
主催:舞台「フラガール」製作委員会

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