関根勤のマニアック映画でモヤモヤをぶっ飛ばせ! 第21回
『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』公開記念、アクションの未来を切り開く谷垣健治との特別対談(前編)
2025.01.20 19:00
2025.01.20 19:00
『捜査官X』の悪いやつは僕なんです(笑)
谷垣 いまは誰に注目していますか?
関根 やっぱり、ドニー・イェン。『イップ・マン』シリーズがよかったです。

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谷垣 彼とは知り合ってもう30年。僕の師匠のような人です。
関根 ドニー・イェンの中でもとにかく好きなのが『捜査官X』なんです。ドニーが身分を隠して村で暮らしていると、悪いやつらが来て、そいつらをやっつけちゃう。
谷垣 その悪いやつは僕なんですよ(笑)。
関根 そうなんですか!
谷垣 2人いたうちのひとりです。
関根 それで、やっつけちゃうと、金城武が来るんですよね。
谷垣 表面的には偶然勝ったふうに装ってるけど……。

関根 金城武が「いや、ちょっと待ってくれ。こんな手練れの悪いやつらを普通の村民がやっつけられるわけがない」と。それから、実際にどうだったのかが回想でくるじゃないですか、あれがよくてね。そのあとにボスのジミー・ウォングが来る。(ジミー・ウォング主演の)『片腕ドラゴン』が僕は大好き。『片腕ドラゴン』のときは香港映画のアクションがまだ全部、中国拳法なんですよ。
谷垣 は!は!は!と。いわゆる2ビートのアクションですね。
関根 タイのキックボクサーも出てくるんですけど、動きが中国拳法。
谷垣 (演じているのが)台湾人ですからね。
関根 動きがダメなんですよ。
谷垣 『捜査官X』はアクションを作るときも『羅生門』の作り方を参考にしていて。こっちから見た事実と、あっちから見た事実で違うという。脚本を読んだときにすっげー!と思いました。
関根 複雑なんですよね。殺人集団は嫌だという白い心で生きていきたいのに、悪いやつがやってきたときには、どうしても昔身に付けた殺人技が出てしまう。ものすごい複雑。黒澤明監督が観たら「いい脚本だな」と思いますよ。
谷垣 それを13年前の宣伝のときに聞きたかったです(笑)。
関根 金城さんもよかった。ちょうどいまでいうと『ガリレオ』の福山さんみたいで。「う~ん、怪しいぞ」と。

ジャッキー・チェンの限りない魅力について
関根 ジャッキーのすばらしさって動きがすごいんだけれども、コミカルで子供から女性まで虜になる。ブルース・リーを好きになるのは男なんですよ。ガッチガチの男が多いんです、どっちかというと。ジャッキーは老若男女、広い。
谷垣 ジャッキーは動きに雑味を入れるのがうまいですね。「俺にもできそう」と思わせるところがいい。ジャッキー・チェンって皆、卒業していくんですけど、入学生もいっぱいいて。僕らが大人になって変わっていくだけで、子供はやっぱりいまだにジャッキーが好きなんだなというのは、親戚の子とかを見ても感じます。エンターテイナーなんですよね。ますます近年、バスター・キートン化していくというか。ジーン・ケリーとか。格闘よりもスラップスティックコメディが好きなんだなと。
関根 ジャッキーのファンはすごい多くて。うち(浅井企画)に梶原真理子ってタレントがいたんです。もう結婚して引退したんですけども。そのお兄さんが本当にしゃべらないらしいんですよ。全然、しゃべらないお兄さんにジャッキーの話を振ると、べらべらしゃべる。そういうファンもいるんです。

谷垣 関根さんは、ジャッキーとは何回も会ってますよね。
関根 ええ、僕はジャッキーのファンクラブの司会もしました。でね、海外の方が宣伝に来ると、ホテルの部屋を順番に回っていくんですけど、普通は10部屋くらい回ると疲れちゃって不機嫌になる。だけどジャッキーは10何社も平気でやるんです。体力があるから全然バテない。「はい、どーも!」って。ロビン・ウィリアムズもそう。あの人も全部、サービスしてくれる。
谷垣 ジャッキーは取材が終わってからもみんなをご飯に連れて行ったり、バイタリティの塊のような人ですね。
関根 結局、体力のある人間は強いですよ。でも、いまはあんまりアクションは求められなくなっちゃいましたよね。それに、コメディ色が弱くなった。昔は『Mr.Boo!ミスター・ブー』や『ピンク・パンサー』とかあったでしょう。
谷垣 アクションに関しては、最近リアル志向になってきてますね。皆、格闘技に精通するようになってくると、撮るほうもウソのつき方が下手になってきている気がしますね。
(後編へ続く)
