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自分を重ねたくなる脚本と演出、豪華役者陣の“絶妙さ”とは

その“モノガタリ”は誰のもの?江口のりこ主演『ワタシタチはモノガタリ』開幕

2024.09.09 12:00

2024.09.09 12:00

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PARCO PRODUCE 2024『ワタシタチはモノガタリ』が、9月8日に東京・PARCO劇場で開幕した。今作の脚本を担当したのは、近年大手プロデュース作品への書き下ろしも続く注目の劇作家・横山拓也。PARCO劇場には初めての書き下ろし作品となる。

肘森富子(ひじもりとみこ/江口のりこ)と徳人(のりひと/松尾諭)は中学校時代の文芸部の同級生。中学3年の夏、徳人が大阪から東京に引っ越してしまってから15年間、二人は文通を続けていた。二人は手紙の中で「30歳になってどっちも独身だったら結婚しよう」という約束を交わしていたが、徳人は30歳を迎える年に結婚を決める。その結婚式で15年ぶりに徳人と再会した富子は、彼を祝福しながらも彼に書いた手紙をすべて返してもらうのだった。

徳人役の松尾諭と富子役の江口のりこ

その後、その往復書簡を利用してインターネット上に小説を投稿した富子。「富子」を「ミコ(松岡茉優)」に、「徳人」を「リヒト(千葉雄大)」という名に変え、かなりの脚色を加えたその小説は、富子の予想を遥かに超えた大ヒットとなる。出版、映画化の話も動き出したものの、ネックは徳人に内緒で小説を書いていたこと。小さな出版社の編集者として働いている徳人は、自分が書いた手紙がそのまま小説に利用されている事実を知って激怒するのだが……。

千葉雄大演じる「リヒト」と松岡茉優演じる「ミコ」

PARCO劇場で「幼馴染」「文通」といえば、朗読劇の名作『LOVE LETTERS』のシリーズが思い浮かぶ。そんな先入観で「手紙を軸に登場人物たちの変遷が描かれていく」のかと思いきや、話はいい意味で予想外の方向へと転がっていく。徳人と富子の往復書簡、そして小説がいつしか大勢の人を巻き込み、「作品は誰のものか?」という創作論にも近い問いが舞台上に巻き起こる。そこには富子のイマジナリー彼氏である「リヒト」や富子の理想像である「ミコ」も関わってくるわけで、舞台上では脳内と現実、過去と現在がしょっちゅう入れ替わり、ときに入り交じる。

富子の小説に惚れ込み、映画化を目論む俳優の川上丁子(松岡茉優・2役)には、彼女と同棲している売れない映画監督の間野ショージ(入野自由)にまたやる気を出して欲しいという気持ちもある。一方、富子がファンである現代アーティストのウンピョウ(千葉雄大・2役)は、ひょんなことからこの映画に関わることになるが、彼自身もいろいろと自分の表現について思い悩んでいる様子。

松岡茉優演じる川上丁子(左)

ヒット作をめぐり様々な人の思惑や欲望は入り交じるが、登場人物たちはどこか憎めない。それは、根に「切実さ」を抱えているように思えてしまうからだろう。それを感じさせる丁寧な脚本と、そしてこの複雑な構造の作品をテンポ良く、繊細に仕上げた演出・小山ゆうなの手腕に拍手をしたい。

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作品情報

PARCO PRODUCE 2024『ワタシタチはモノガタリ』

PARCO PRODUCE 2024『ワタシタチはモノガタリ』

東京・PARCO劇場:2024年9月8日(日)〜9月30日(月)
福岡・キャナルシティ劇場:2024年10月5日(土)・6日(日)
大阪・森ノ宮ピロティホール:2024年10月11日(金)〜10月14日(月祝)
新潟・りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場:2024年10月18日(金)・19日(土)

【チケット(全席指定・税込)】
東京:土日祝12,000円/平日11,000円/U-35チケット6,000円/U-18チケット3,000円
福岡:S席11,000円/A席8,000円/U-35チケット5,500円
大阪:12,000円
新潟:S席11,000円/A席8,800円/B席5,500円

公式サイトはこちら

スタッフ&キャスト

作:横山拓也
演出:小山ゆうな
出演:江口のりこ 松岡茉優 千葉雄大
/入野自由 富山えり子 尾方宣久 橋爪未萠里/松尾諭

美術:乘峯雅寛 照明:日下靖順 音響:清水麻理子 映像:大鹿奈穂・上田大樹
衣裳:伊藤佐智子 ヘアメイク:宮内宏明 ステージング:田井中智子 演出助手:畑田哲大 舞台監督:齋藤英明・幸光順平
宣伝美術:榎本太郎 宣伝写真:伊藤大介 宣伝衣裳:伊藤佐智子 宣伝ヘアメイク:谷口ユリエ・岡澤愛子(松岡茉優) 宣伝映像:尾野慎太郎 宣伝:吉田プロモーション
制作:沢田侑穂・掛田裕子 プロデューサー:祖父江友秀・山家かおり 製作:小林大介
制作協力:ニベル 企画製作:株式会社パルコ

江口のりこ

アーティスト情報

1980年4月28日生まれ、兵庫県出身。
00年に劇団「東京乾電池」に入団し、同劇団の公演に参加しながら02年『金融破滅ニッポン 桃源郷の人々』(三池崇史監督)で映画デビュー。『月とチェリー』(04/タナダユキ監督)で映画初主演。
『事故物件 恐い間取り』(20/中田秀夫監督)で日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。
近年の主な出演作に『愛がなんだ』(19/今泉力哉監督)、『ツユクサ』(22/平山秀幸監督)、『川っぺりムコリッタ』(22/荻上尚子監督)、『BAD LANDS バッド・ランズ』(23/原田眞人監督)など。今後の公開待機作として主演作『あまろっく』(24/中村和宏監督)がある。
TVドラマ「時効警察」シリーズ(06・07・19/テレビ朝日)、「半沢直樹」(20/TBS)、「ソロ活女子のススメ」(21/TV東京)、「SUPER RICH」(21/フジテレビ)などでも個性を発揮し、人気を博している。

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