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INTERVIEW

声優初主演作『クラユカバ』の裏側、講談界への思いに迫る

「好きなものをみんなに広げたい」神田伯山がさまざまなメディアに出続ける理由

2024.04.11 17:30

2024.04.11 17:30

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映像作家として個人で活動を続けてきた塚原重義監督による初めての長編アニメーション映画『クラユカバ』。昭和レトロ×スチームパンクとも言うべき独特の魅力に溢れたこの作品で、主役の探偵・荘太郎を演じるのは今やテレビやラジオなどさまざまなメディアでも大活躍の講談師・六代目神田伯山だ。

映画の話から、講談師としての自身の立ち位置、弟子を取ったことによる心境の変化……今やパブリックイメージとしての「講談師」という立ち位置を一手に背負う彼が今、考えていることとは?

神田伯山

“新しい挑戦”はいくつになってもやるべき

──もともとこの映画出演の話は、活動写真弁士の坂本頼光氏経由でオファーが来たとのことですが。

そうなんです。だから不思議な縁なんですよ。もともと私は頼光先生が好きなので光栄だなと思いまして。聞いたら塚原監督とは10年来の仲で、今回の役はぜひ伯山さんでお願いしたいと。私は自分には難しそうなオファーは、不器用だから基本断ってたんです。迷惑をかけてしまうなぁと。しかし今回ありがたいご縁があり、頼光先生も入っていらっしゃるし、これは引き受けるべきだなと思いました。

──前向きになれた理由は何だったのでしょう?

要求されたのが「圧倒的にできないもの」ではなかったから、ですかね。ほんの少しだけ可能性があるかもと。実はありがたいことに、お芝居とかのオファーもいただくんです。一度「サイコパスのパン屋」をやってくれというオファーが来まして、私は出ようと思ったんですが「濡れ場がある」という理由でうちのカミさんがNGを出しまして。そういう意味ではこれは別に濡れ場もないし(笑)お芝居だと相手がいるからうまくできないと迷惑をかけるけど、これは声で別撮りで出来ますし。私は声優という職業に大変敬意があるので、他の声優さんがなんとかしてくれるかもしれないと。最悪、上手くいかなくてもオファーした方に責任があるんだと強く思いましたね(笑)。

『クラユカバ』公開直前最終予告

──作品の世界観や内容的なものは判断理由になったんでしょうか?

あんまりそこは気にしなかったですね。今回の作品は探偵ものですが、そもそも「探偵もの」というと、江戸川乱歩が生み出した明智小五郎は五代目の神田伯龍先生がモチーフです。『D坂の殺人事件』ですね。それに「探偵講談」なんてのもありますから、比較的親和性は高いジャンルなんですよ。

──今作を観ていると、作品のセリフやナレーションの語調などが非常に講談ぽい部分が多いように思いました。

確かにそういう部分はありました。私もそんなにアニメを観ている方ではないので、断言は出来ないですが。こういう調子で喋っているのはあんまり例がない、いらっしゃらないかもしれないですね。そのことには皆さんに言われて気がついたんですよ。たくさんアニメを観ている人だったら「こういう特色のある映画だ」ってわかったんでしょうけど……ただ、要望として「できるだけセリフを少なくしてくれ」ってお願いした気がするんですが、思いのほか多かったという(笑)。全身全霊で素人が一生懸命やりました! そうとしか言いようがないです。もっとも出来上がったの観たら、周りの方のおかげでちゃんと荘太郎の声でした。

──今作は2回のクラウドファンディングを実施し、15分の冒頭部分を先行して制作した後に、冒頭部分を含めた全編が制作されたという経緯がありますよね。冒頭部分の収録には4時間かかったと伺いましたし、全編の収録もかなり大変だったと。

人間って、ある程度得意なことをしているときは時間が経つのは早いし、なんとかなるんですよね。ただ慣れていないことをするときは緊張とかいろいろあるじゃないですか。でも、「新しい事に挑戦をする」というのはいくつになってもやるべきなのかなとも思います。あと声優さんというものにたいしてとても敬意があって、自分なんかではという思いもあり。同時に自分がやったらどうなるのかなというドキドキ感もあり。これまでもいくつか声優のお仕事はやらせていただいてるんですが、今回は主役ですし。

神田伯山が演じた荘太郎 ©︎塚原重義/クラガリ映畫協會

──監督から「こんな感じで」という要望はあったのでしょうか?

ありました。明確なビジョンが凄かったです。ただ一切記憶にないですね……私の脳が消去したがってるんでしょうか。データの熱量と重さが凄すぎて。早めにラジオで言っておけば永久保存できたんですけど。最近、『ザ・ノンフィクション』という番組で婚活をテーマにした回を観て、今まで恋愛経験がない方が悪戦苦闘してたんですよ。それと同じ熱量で「声優をほとんどやったことない人」が悪戦苦闘してる感じはありましたね。「基礎の基礎」からやってるという。でもそういう情熱がある仕事場は最高です。

──でも序章の収録からは1年ほど間は空きましたよね。その間に上達したりとかは?

一切成長してなかったですね。それどころか「前はこんな声出してたか!?」ってなりました。というのもその1年間で少し自分の声が変わってるんですよ。プロだったらすぐに戻れると思うんですけど、自分は素人だからこれは再現できないぞ、と思って。でも監督が「大丈夫です」と。多分自意識が邪魔しているだけで、観ている人はそこまで気にならないはず、と言ってくださって。逆に言えば、つまらないとこを変に気にする癖はあるのかもしれないなと、と思いました。

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講談への「世間の変化」に感じること

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作品情報

クラユカバ

 ©︎塚原重義/クラガリ映畫協會

©︎塚原重義/クラガリ映畫協會

クラユカバ

2024年4月12日(金)全国劇場にて『クラメルカガリ』と2作同時公開
配給:東京テアトル ツインエンジン

公式サイトはこちら

スタッフ&キャスト

【スタッフ】
原作・脚本・監督:塚原重義
キャラクターデザイン:皆川一徳
特技監督:maxcaffy
操画監督:アカツキチョータ
美術設定:ぽち
美術監督:大貫賢太郎
音響監督:木村絵里子
音響効果:中野勝博
音響制作:東北新社
音楽:アカツキチョータ
主題歌:チャラン・ポ・ランタン「内緒の唄」
アニメーション制作:チームOneOne
製作:クラガリ映畫協會

【キャスト】
荘太郎:神田伯山
タンネ:黒沢ともよ
サキ:芹澤優
稲荷坂:坂本頼光
指揮班長:佐藤せつじ
松:狩野翔
トメオミ:西山野園美

【あらすじ】
「はい、大辻探偵社」紫煙に霞むは淡き夢、街場に煙くは妖しき噂…。今、世間を惑わす”集団失踪”の怪奇に、探偵・荘太郎が対峙する!目撃者なし、意図も不明。その足取りに必ず現る"不気味な轍"の正体とは…。手がかりを求め、探偵は街の地下領域"クラガリ"へと潜り込む。そこに驀進する黒鐵(くろがね)の装甲列車と、その指揮官タンネとの邂逅が、探偵の運命を大きく揺れ動かすのであった…!!

1983年6月4日生まれ、東京都豊島区出身。日本講談協会、落語芸術協会所属。2007年11月、三代目神田松鯉に入門。2012年6月、二ツ目昇進。2020年2月、真打昇進と同時に六代目神田伯山を襲名。持ちネタの数は200を超え、独演会のチケットは即日完売。講談普及の先頭に立つ活躍をしている。

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