2023.11.11 17:00
2023.11.11 17:00
マーベル・スタジオが贈る待望の劇場公開最新作『マーベルズ』が11月10日(金)に公開された。その吹替版で、サミュエル・L.ジャクソン演じる“アベンジャーズの創設者”ニック・フューリーの声を担当する竹中直人。
俳優としてこれまでの出演作品は数知れず。並行して監督業も手掛けるなど、長きにわたり日本の映像作品において欠かせない人物として愛される彼が、“声の芝居”に感じる魅力とは。2012年の『アベンジャーズ』以降、吹替版キャストとしてマーベル作品を支えて10年以上が経つなかで、幼少期から変わらない憧れのヒーロー像、自身のスタイルの芯に迫った。
役者のリズムに声を合わせていくのは楽しい
──ミュージカル『のだめカンタービレ』お疲れ様でした。ミルヒーからのニック・フューリーということで……。
本当に全然違いすぎますよね。
──『マーベルズ』では基本的には笑いなしのシリアスな演技で。
はい。僕が出演しているわけではないですが……(笑)。
──2012年の『アベンジャーズ』の時から担当してますが、最初にオファーが来た時の印象を覚えていますか?
『アイアンマン』でニック・フューリーの声は手塚(秀彰)さんが担当していましたので「僕で大丈夫なのかな?」という不安はありました。声優さんのお仕事は「この人だったら、絶対この人の声!」って定着しますよね。初めに聞いた声でインプットされますから。でもサミュエル・L.ジャクソンが好きだったし、ニック・フューリーのコスチュームにもたまらない魅力を感じていたので、ニック・フューリーの声を担当出来るのはとても嬉しかったです。
──レザーコートとアイパッチって男のロマン的なところがありますよね。
ありますね! ニック・フューリーはすごく背が高いしね! あの姿で颯爽と歩き、コートの裾がゆれる感じがたまらないです!
──作品を重ねるうちに、だんだんと自由奔放なヒーローに手を焼くシーンなどお茶目な一面も出てきましたね。
はい。『キャプテン・マーベル』からずいぶん印象が変わりました。『キャプテン・マーベル』のフューリーは非常に若かったので声の音色を作るのがとても難しかったです。いつものコスチュームではないスーツのニックでしたからね。声をどこまで若返らすかというのがとても苦労した点でしたね。でもその作業が楽しいんです。
──ニックの魅力を追うという意味でもマーベル・シリーズは面白いと思います。竹中さんから見る、現段階のニック・フューリーはどんな人物ですか?
常にどこか謎めいた雰囲気があり、常にクール。そして判断力に長けている。アベンジャーズの中でも、僕にとっては最強のヒーローです。ただドラマシリーズの『シークレット・インベージョン』では老いというものをかなり表現していたので、ちょっと心配していたんです。足を引きずって歩いていたりもしていたので。でも今回の『マーベルズ』ではとっても元気だったから安心しました。吹替とは言え、いろんなニックの面を見てきました。なんだか不思議な感じです。声の音色も聞き比べてみると、最初の頃とは全然違うかもしれないですね。でも年をとってるってイメージが全くない。
『シークレット・インベージョン』はトレードマークの眼帯もしていないし、あまりにも普段着で、いつものニックとは別の感じでした。最後にはちゃんとロングコート着てアイパッチもしてくれて安心しましたが、かなり老いを表現していたので、これからのニックはどうなってしまうのだろうと不安になりました。でも心配する必要はなかったです。『マーベルズ』ではとっても元気でした!『シークレット・インベージョン』はとても重く、ずしんと来る闇の部分が深かったような感じがします。『アベンジャーズ』シリーズの中でもタイプが全然違う、現実的なニック・フューリーを見たような感じがしましたね。
──竹中さんは、幼少期はどこか闇を感じるヒーローやモンスターに憧れていらっしゃったんですよね。
バットマンが大好きでした。モンスターも憧れでしたね。ベラ・ルゴシのドラキュラとか、ユニバーサルのホラー系はとても好きでした。クリストファー・リーも素晴らしいのですが、ベラ・ルゴシの表情がなんともたまらないんです。『吸血鬼ノスフェラトゥ』のクラウス・キンスキーもたまりませんね。それからボリス・カーロフが演じたフランケンシュタインの怪物のデザインにも圧倒されました!
“闇を抱えた”という意味ではフランケンシュタインがトップだったと思います。『大アマゾンの半魚人』とかすごいですよね! あんな素晴らしい造形物をあの時代に作れたなんて本当にびっくりです! あとブルース・リーも自分にとってはデザインされた美しい造形物って感じです。あの髪型とあの鍛え上げられたあの身体のライン! アクションというよりも李小龍のダンスを観ている感じがしましたね。
──ニック・フューリーもそのひとりだと思うのですが、そういった造形が出来上がっているキャラクターに自分の声を当てていく感覚はいかがですか。
吹替の仕事は子供のころから憧れだったんです。日曜洋画劇場とかアメリカのテレビドラマは吹替で見ていましたからね。吹替の仕事はずっと憧れでした。その俳優の表情やリズムに声を合わせていくっていう作業はとっても楽しいです。各シーンごとにがっつり集中して録っていく作業なんですが、ニックの口の動きにぴったり合った時は本当にうれしいです。でもニックの声を最初に当てた時、「あっ……僕の声だとニックの顔が僕の顔に見えてしまうんじゃないか」と心配になりました。それはとても不思議な体験でした。監督に「これで大丈夫なんでしょうか?」と確認したのを覚えています。
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