特別対談「日比谷音楽祭が目指す音楽の新しい循環」 #3
この時代に生きる“送り手”として、亀田誠治×秦 基博が考える多様さがもたらす効果と希望
2023.10.23 17:30
2023.10.23 17:30
下の世代が作る音楽が楽しみでしょうがない
──そして、11月5日(日)には日比谷野外大音楽堂100周年のクロージングイベントも開催されますね。このイベントはどんなものになりそうですか?
僕と武部聡志さんの共同プロデュースのもとに次の100年を担う若手アーティストがYAON FESに集結します。今まで100年、常に新しい音楽文化を受け入れてきた野音。その野音のステージに宿り続ける先輩アーティストの尊い音楽と思いを未来に繋げたいと思います。
──では、これからアーティストや音楽業界を目指そうとしている若い方へメッセージであったり考え方があればお願いしたいです。
亀田 それ聞きたい。
秦 今の音楽の聴かれ方って、新旧が関係ないじゃないですか。昔の曲も今の曲も本当に並列に並んでるし、洋邦も世界中の音楽が本当にフラットで、だからたぶん僕の下の世代というか、子供たちとかも含めて、その辺の垣根が本当にないと思うんですよ。そういう人たちにとって、多分サブスクで洋楽のトップチャートを聴くのもオールディーズ聴くのも邦楽聴くのも全部同じなんで、そんな人たちが作る音楽が楽しみでしょうがないっていうか。本当それだけですね。アドバイスとかっていうことじゃなくて、その時々で音楽の形とか、作る環境とかは変わっていくと思うんですけど、その中で生まれてくる新しいものが自分はただただ楽しみですね。
亀田 素晴らしいですね。
──どういう心構えとかは全くなく?
秦 僕とかが言う心構えがもはや関係なくなっててほしいというか。僕がデビューした頃は5年経ったらもうCDのあり方とか変わっていって。
亀田 ああそうだったね。そんな感じでしたね。
秦 今やもう全然違いますから、またどうなっていくか全然わかんないですけど、ただ、その中でもやることは変わってない気がするんですよ。自分がいいと思う音楽をただやるっていうだけでしかなくて、それをどう聴くかは聴き手の自由なんで。ライブで体感したい人もいるし、持って歩きたい人もいるし、アナログで聴きたい人もいるっていう、そこは自分の範疇じゃないと思ってて。僕もやりたいことをやるだけだなと思ってるんですけど、そんなふうに「こうしたほうが良い、ああした方が良い」ってことよりはやりたいようにやってほしいし、そういう音楽を聴きたいなと思いますね。
──では最後に来年の日比谷音楽祭、さらにはその先というところで、この先に残して行くためにどういうことを大切にしたらいいのかについてお考えを聞かせてください。
秦 初めて参加させていただいて、東京のあの真ん中で、あんなに素晴らしい音楽が鳴っているっていう、で、みんなが参加できる芸術の開かれた場所であるということの素晴らしさを体験したので、ずっとあって欲しいです。ただそれだけ(笑)。今回、亀田さんのお話を伺ってて、音楽をやるということに対していろんな社会、経済、いろんなものが一つになって音楽を届ける、そして、そういうパワーを皆さんが感じてくれるってことはすごいことなんだなあっていうのを改めて思いましたね。聴き手に与えるだけじゃなくて、送り手が絡んでいくというか。
亀田 いいですね。日比谷音楽祭を知ってもらうっていうことと、あとはやっぱり応援や賛同してくれる、それは出演者もそうですし、サポートしてくれる人の輪を広げていくっていうことに尽きるでしょうね。僕自身、公園で風に乗って流れてくる音楽を聴くと幸せな気持ちになります。シンプルに気持ちがいい。これってある意味ウェル・ビーイングだと思うんです。だからこれからはミュージシャンだけでなく、たとえば企業の方もそうですし、お客さんの中でもそういう音楽文化をサポートしようという気持ちが、どんどん広がっていくと思います。なので次の100年に繋がっていくっていうのはそういうところじゃないのかなっていう。そのためにはやはり秦さんのような唯一無二のアーティストの素晴らしいパフォーマンスを見てもらうとか、さまざまな音楽がジャンルを問わず鳴り響いていくということを積み重ねていくのが大事なのかなというふうに思いますね。