特別対談「日比谷音楽祭が目指す音楽の新しい循環」 #2
鍵はバーチャルとリアルのつながりに、亀田誠治×Ovall関口シンゴが語る変化と普遍性
2023.10.10 18:00
2023.10.10 18:00
ヒントはリアルなライブにあると伝えたい
──若いアーティストとも多くの仕事をされているお2人にお聞きしたいのですが、これからのミュージシャンのあり方は変わってくると思いますか?
関口 そうですね。最近アレンジとかお願いしてもらう10代から20代前半のアーティストって、「まだライブやったことありません」っていう人がすごく多くて。
亀田 それはコロナとかの影響ではなくて?
関口 多少関係はあるのかもしれないですけど、自分でパソコンで制作してそれをSNSにアップしてたらフォロワーが増えて声がかかって、で、デビュー盤作ります、でもまだライブ一回もやったことないですみたいなパターンもあったりして。ちょっと前の自分だったら「ライブやってないの?」みたいな感覚があったのかもしれないですけど、コロナを経て、自分でもインスタライブだったりギター動画をSNSにアップしたり、積極的に活用して見たら、予期せぬ海外や自分とは接点がない10代の子だったりに届いていて、そこにものすごい可能性も今感じたんですね。ただ同時に今回の日比谷音楽祭に出させていただいて、生の重要性、人が集まって出会う時に生まれるパワーみたいなのが、「あ、これやっぱ生でしかないんだな」っていう再発見を最近してる感じもありますね。
──SNSと生の現場の両軸であると。
関口 それで言うと、今回の日比谷音楽祭ですごく嬉しいことがいっぱいあって。ライブの何日か前にロンドンに単身赴任されている方からインスタにDMが送られてきて。ロンドンのバーで気に入った曲が流れてて「日本人のShingo Sekiguchiだ」だって教えてもらったそうなんです。で、息子さんがラップやダンスをやったりしているので、そのことを教えてあげたそうなんですよ。そしたら息子さんがすぐ調べてくれて、Ovallにたどり着いて、MVを見てくれて。「Come Together」って曲なんですけど、そのMVに世界大会で優勝したTHE D SoraKiくんってダンサーの子が登場していて息子さんがダンス仲間だったらしいんですよ。
亀田 へー!
関口 「これライブ観たい」ってなって、日比谷音楽祭が3日後くらいにあるとわかって本当に来てくれたんですよ。しかも、ライブ後、声かけてもらって。「お父さんがDMしたもので」って、中学生2人で見に来てくれたんですよ。2人ともすっごい興奮して。多分そういうライブ見るの初めてだったと思うので、めちゃくちゃ興奮して「写真撮っていいですか?」ってすぐお父さんにメールしたら今度お父さんから僕のDMに(笑)。
亀田 「息子がー」みたいな(笑)。ロンドンから?
関口 そうなんですよ。僕も中2の頃とか思い出すと、そういう出来事って今でもビビッドに思い出せるんですよね。だからその日見たライブのことは彼にすごい影響を与えるんじゃないかなと思いました。でもそれって彼がSNSだけじゃなくて、足を運んだっていうことで、ものすごい飛躍をしてるんじゃないかなって思って、だから当たり前ですけど両方大事なんですよ。SNSがなかったら僕はロンドンのお父さんと連絡が取れなかったし、Spotifyがなかったら僕の曲はそのバーではかかってなかったと思うんです。ただそこで会いに来てくれたことで、何かまた別の次元につながっていくような体験をしたので、リアルな場の重みとSNSの伝達の凄さっていうのがこれからは何をやるにしても鍵になってくるのかなと思いますね。それは若いアーティストにもそこがヒントだろうなっていうのを伝えたい。インターネットとかSNSとかに関しては僕が何を言う必要もないものだと思うんですけど、やっぱりリアルのそのライブだったり実際に会うことの影響力っていうのヒントなんじゃないかなって思ってます。
──関口さんが改めて日比谷音楽祭で感じた可能性ってなんでしょう?
関口 初めてこの日比谷音楽祭で公園に来たって方もきっといらっしゃると思うんですよね。やっぱりこうやって歩くと東京のど真ん中にこんないいところがあるんだって思うだろうし、よりその都会の中にあるそういう自然の大切さというか、なんか憩いの場じゃないですか。そういうところに関心を向けてもらえるんじゃないかなと思って。いやほんと素晴らしいイベントを運営されてらっしゃるんだなと思って。改めて自分が参加してより一層思いました。
亀田 ありがとうございます。
関口 ライブやってる目線でも普段いないであろうお客さんの層をすごく感じるんですよね。サイン会やらせていただいて、「初めて見ました」って方も結構いらっしゃったんで、アーティストにとってもすごい貴重な場だったと思います。
──都会の公園という意味で、亀田さんは夏のセントラルパークに思い入れがあるそうですね。
亀田 毎年夏にSummer Stageっていう音楽ライブと、デラコルテシアターってシェイクスピアの演劇の2つが野外ステージで無料で開催されてるんですよ。そこに今から9年前に行って、「わー、こんな景色を東京でもやりたいな」っていうのがずっと心の中にあった中で、この日比谷音楽祭をやりませんかっていうオファーが来たので。
関口 なるほど。そうだったんですね。
亀田 なので僕にとってはもう運命の出会いというか、この役割に出会ってしまったっていうことなんです。