初挑戦した長編映画『さよならエリュマントス』が絶賛公開中
「見える世界がどんどん変わるのが楽しい」真摯に芝居と向き合う斉藤里奈が想う“日々の尊さ”
2023.08.26 17:00
2023.08.26 17:00
ミスマガジン2022に選ばれた6人が主演を務め、『ウルフなシッシー』『辻占恋慕』などを手掛けた新進気鋭の大野大輔監督がメガホンを取った映画『さよならエリュマントス』が全国順次公開されている。
チアリーダーが題材、主演がミスマガジン6人とくれば、この映画は爽やかな青春物語……と思いきや、そこは侮る勿れ。本作で描かれているのは、小銭稼ぎに地方をドサまわりする“やさぐれチアリーダーズ”を巡る、なんとも土臭い世界。そのチアリーダーズのリーダー・リナを演じるのが、ミス少年マガジン2022の斉藤里奈。ひときわ輝く名演を見せ、この作品が一本筋の通った“映画”として完成するために欠かすことができない存在感を残している彼女。その輝きの秘訣を聞くと、誰よりも考え抜き、成長のために努力を惜しまない姿勢を感じ取ることができた。
──初登場インタビューということで、まずは斉藤さんがこのお仕事を始めたきっかけをお聞きしてもいいですか?
元々は女優志望ではなく、アナウンサーになりたいと思っていました。大学生の時に近道になればと思ってミスコンに出て、それがきっかけで事務所にスカウトしてもらって、「アナウンサーになるつもりです」っていうのも伝えて入って。そしたら演技のレッスンがあって……最初はお芝居に関心もなかったですし、できるわけないと思ってたんですけど、いざやってみたらすごい面白くて、知らない世界すぎて、久々に意欲的に学びたいと思ったんです。
──具体的に、お芝居のどこに面白さを感じたんですか?
自分なんだけど自分じゃない人の人生を体験することができるって、特別で面白いなって思って。それに、人によって過ごしてきた人生が全然違うので、同じセリフでも言い方が千差万別になる面白さもあるし。お芝居やり始めてからいろんな作品を意図的に見るようになって、お芝居で人の心を動かすってすごい尊いなって。そこにすごく価値を感じました。
──元々志望していたアナウンサーの技術はセリフの発音などに活かせたり?
本当にその通りで。アナウンサーになろうと思ってたのでアナウンサースクールにも通ったんです。そこで発声や腹式呼吸も学んでいたので、この映画の撮影中も音声さんに「すごいセリフが明瞭で録りやすくて嬉しい」って言ってもらって(笑)。だから本当に活かせてるって思います。
──じゃあ、共演者の皆さんにも発声方法を教えたりも……?
いや、それは特に(笑)。でも腹式呼吸の話とかはちらっとしたりはしてましたね。腹式呼吸って発声だけじゃなくて、ボディメイク的なことにも役立つんですよ。常に腹式呼吸意識するとか、お腹に力入れてるとインナーマッスルを鍛えられるし、それで声にいい影響が出ているのかも知れないんですけど、そんな話はちょっとしました。
──アナウンサーと全く違う点は台本に自分なりの感情をつけていくことだと思うんですが、経験したことがないし、やるとも思ってなかったからこそ新鮮な驚きがあったということですよね。
そうですね。お芝居ってもっと簡単だと思ってたんです。すごく浅はかなんですけど、ただ演技して、撮ってみたいな。でもそうじゃなくて、お芝居をメソッド的に分解して、一から学ぶのを初めて体感してびっくりして。私が演技のレッスンに通っているところは座学的なこともやるんです。ただ台本やってエチュードやってじゃなくて、どういうふうにやっていくかっていう組み立てまでをきちんと教えてくれるところだったので、それがすごい面白くて。こんなに時間をかけてやってるものなんだなっていうので、楽しくなりましたね。
──対象を分析するのが元々好きだったんですか?
論理的な思考ってよく言われるので……お芝居でそれが仇になる時もあるんですけど。なんでなのかとか、原因が気になるタイプなので。台本渡されて「はい、やって」って言われても、私みたいな素人じゃやり方もわかんないまま手探りでやっていくだけだと思うんですけど、メソッドを知れたっていうのは大きい気がしますね。
──役作りに関しても、そういう思考だと深く入り込めそうですよね。
はい。『さよならエリュマントス』の台本をもらった時に自分のシーンで何を見せたいかっていうのも考えられるようになったのも、演技のレッスン通ってるおかげかなって感じがします。
──とは言え、いただいた脚本、だいぶびっくりされたんじゃないんですか?
そうですね! 可愛く踊って、みんなで上を目指そうみたいな物語かなって思ってたんですけど(笑)。私、短編映画は出たことがあるんですけど、長編の映画はこれが初めてなのに、エッジ効きすぎてて「これが初めての作品大丈夫かな?」みたいな(笑)。でも、完成したのを見たら、たくさんの人に届いて欲しいと胸を張って言える作品になっていました。
──自分の中にもああいう一面もあると再確認しましたか? それとも役だからこそ出し切れたという感じでしょうか?
張り手くらわすシーンとか蹴り入れるシーンは芝居ですよ!って話なんですけど。張り手7発ぐらいやるんですよ(笑)。でも、それ以外のシーンは割と自分のタイプと近しい役だったので、特に役作りはしてないですね。
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