2023.07.26 18:00
2023.07.26 18:00
デビュー当時と同じように精一杯生きてる
──愛美さんは普段自分の心情に素直な歌詞を書かれるので、タイアップ作詞2作目でこれだけ作品の本質とご自分の感情を、聴き手を選ばない表現に着地させる歌詞をお書きになれることに驚いて。
ありがとうございます。作詞は大好きなんです。もはやフェチなんですが、ここはカタカナにするのかひらがなにするのか、ここにスペースを開ける場合は半角か全角なのか、「!」も英語の後ろにつける場合は半角なのか、敢えて全角にしてみるとか……。そんなことも一つひとつ考えることがほんとに楽しくて。表記も含めて言葉の細かいニュアンスを考えるのが好きです。
──それは作詞をするなかで培われたものですか?
というよりは、声優としての経験だと思います。たとえばアニメに出てくるキャラクターが同じ内容や気持ちを話していたとしても、語尾がちょっと違うだけでその子っぽさが出なくなることがありますよね。駆け出しの頃からよく、アフレコ現場で監督さんや音響監督さんと先輩声優さんたちが「このセリフはこういう言い回しの方がいいんじゃないかな?」みたいなディスカッションをしているところを見てきていたんです。自分も経験を積んでいくなかで「あ、このキャラクターはもしかしたらこっちのワードのほうがハマるのかもしれない」と思ったりするようになりました。
──客観的な視点や、キャラクターへの理解度が深まっているからこそ気付けることですね。
監督さんに「じゃあどういうのがいいと思う?」と聞かれたとき、キャラクターや物語への理解の度合いで提案できる内容も変わってくることを実感したし、1文字変わるだけでキャラクターの印象や感情表現が変わるのがすごく面白いなと感じて。そういうことを考えられるようになってきたらどんどん言葉に興味を持つようになって、音楽の歌詞がどんどん面白くなってきて。声優をやっていなかったら、こんなに作詞を好きになってなかっただろうなと思います。
──10年というキャリアは愛美さんに豊かな変化をもたらしているようにお見受けしますが、ご自身としてはいかがでしょうか。
自分としてはいつもデビュー1年目みたいな気持ちというか、どの現場に行っても毎日緊張していて(笑)。だから自分がいちばん年上の現場とかが増えてきたことが不思議で……それこそ『てんぷる』もそうなんですよね。ヒロインの声優の中だと一番年上で。でも自分としてはデビュー当時と同じように毎日精一杯生きていて、なのに確実に周りの反応が変わってきていて。『てんぷる』の現場で蒼葉月夜役の芹澤優ちゃんに「お互いもっと売れたいよね!」みたいな話をしたら、「あいみん充分売れてるのにまだ売れたいの!?」と言われちゃって。そういうときに世間と自分の認識のギャップを感じるんです。
──そのギャップというのは、「まだまだやりたいことがある」「できるようになりたいことがある」ということですか?
うん、そんな感じだと思います。
──ということは愛美さんの言う「もっと売れたい」は、「もっと自分の実力を高めて、様々な作品に出演したい。活動の幅を広げたい」ということかもしれませんね。
そうかもしれないです。自分としてはいつも「自分に力が足りないから頑張ろう」とか「求められている域に達してないから頑張ろう」という気持ちだし、どんなことにもそう感じてしまうんです。
──これは仮説ですけど、そう感じてしまうのは活動すべてがご自分の好きなことだからではないでしょうか?
それだ! それですね。それで「こうなりたい」「こうありたい」という理想がありすぎちゃって、自分の力の足りなさに悩んでしまうのかも。ギターもそのうちの一つです。
──愛美さんとギターというと、メディアミックスプロジェクト『BanG Dream!』戸山香澄役としてのPoppin’Partyのギターボーカルや『アイドルマスター ミリオンライブ!』のジュリア役が印象的ですよね。
「ライブでもギターを弾いてみない?」と提案されたときに、高校でもギターを弾いてたし楽しそうだなと思って引き受けたんですが、結果として大舞台でギターボーカルデビューをすることになりました。その反響がPoppin’Partyのギターボーカルをさせていただくことにもつながっていったんです。ギターは人生のターニングポイントになっているんですよね。
──『煩悩☆パラダイス』のc/w曲にも触れていきたいのですが、まず「SOS_SOS」は乙女心が綴られたとてもキュートな曲で。
歌詞の内容も共感できるし、ここまで乙女心を出した曲は愛美としては珍しいので、そういう領域もチャレンジしたかったんですよね。それこそ『煩悩☆パラダイス』のどピンクな衣装やジャケット写真も挑戦なんです。ピンクは私服でもほとんど着ないから。
──この取材も、愛美さんは黒いお召し物ですしね。
黒は落ち着きます(笑)。「煩悩☆パラダイス」も『てんぷる』の力を借りて色んな表現が出せましたし、ジャケットも「SOS_SOS」みたいな世界観も、興味はあったけどやってこなかったので、すごく楽しかったです。関わってくださる方々や作品のおかげで色んなことに挑戦できるのは楽しいですね。「SOS_SOS」も作詞作曲編曲をしてくださったacane_madderさんの仮歌を聴いて「わたしもこの歌唱表現に挑戦してみたい!」と思って、エッセンスをお借りして。歌い方のテクニックや仕掛けが面白くて勉強になりました。
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