2023.04.08 20:00
YONAWO YAON 2023年3月18日 日比谷野外大音楽堂/Photo by Toyohiro Matsushima
2023.04.08 20:00
yonawoがメジャーデビュー3周年を祝した記念ワンマンの会場として選んだのは、つい先日開設から100年を迎え、現設備の解体と建て替えが決定した日比谷野外大音楽堂。通称“日比谷野音”の現設備は1983年竣工の第3形態とのことで、第4形態のお披露目は現状未定という。様々なアーティストに愛されてきたことをその歴史が語るこの会場にて、3月18日土曜日に「YONAWO YAON」と題されたライブが催された。
それはとても手荒い歓迎であった。
3月に入り日中20℃を超える日が幾度とあるなかで当日は生憎の雨、ここまでは野外ライブ“あるある”なのだが、気温がまた季節外れの真冬日というジョーカーを引き当ててしまうyonawo。だったのだが、昨年実施したインタビューにて“合気道であり、酔拳であり、太極拳のような”と評したその独特の空気感の前では悪天候もどこ吹く風。バンド史上初となるサポートメンバーを加えた編成にて会場を完全掌握してみせたのだった。お見事!
開演前BGMでは先日来日ライブレポを執筆させて頂いたアークティック・モンキーズ「There’d Better Be a Mirrorball」が流れており、筆者は今年最後のダウンジャケットのインナーとしてアークティック・モンキーズのTシャツを着ていた。どうせ掛かると思っていたのだ。メンバーが大好きなのは知っていたから(というかアークティック・モンキーズのライブ会場で筆者はyonawo全員に遭遇している(笑))。
荒谷翔大(Vo)、田中慧(Ba)、斉藤雄哉(Gt)、野元喬文(Dr)の4人に加え、もう1人のギタリストとして最新アルバム『YONAWO HOUSE』制作時のキーマンとも言える元never young beach・PAELLASの阿南智史、そしてキーボードに中村エイジ、パーカッションにryo takahashiを擁する7人編成でのステージ。幕開けは『YONAWO HOUSE』と同様「After Party」からのスタートだった。こらそこ、1曲目からアフターパーティーってどないやねんとか言わない(笑)。リフレインする”keep on rolling……”のメロディに合わせて心地の良い立ち上がり。初の全国流通盤『LOBSTER』収録の「26時」がプレイされた後に今度は壇上にサックスの西内徹、トランペットの西岡ヒデロー、トロンボーンの和田充弘の3人がさらにに登場。10人編成での「good job」がしっとりと柔らかなタッチで会場に夜の帳を下ろしていく……のだが、当曲の歌い出しは”ジタバタクタバリ”であり”脳味噌を丸焼き”なんて歌詞まで登場するこの得体の知れぬブラックユーモアが筆者はとても好きだ。本当にもう、このバンドは一貫して曲に対して歌詞が超捻くれてるんだよなあ……。
そんな荒谷は曲によってピアノを兼任したりギターを兼任したりと八面六臂の大活躍。ピンボーカル時は基本ほとんど動かないので、フロントマンがこういう意味でよく動くバンドってのもこれまたとっても珍しい。そんな荒谷のアコギの指遣いとボーカルの息遣いが完璧にシンクロしていた「苺」、そして打って変わって朗々とした歌い出しで始められるシューゲイザー的な空気感を纏う「beautiful Day to Die」では田中と野元が作り出すヘヴィなリズムのうねりに乗って斉藤がギターを掻き鳴らす。というかこの日(いや、いつもか?)全編に渡って斉藤のギターの雄弁たる様は凄まじかった。出音、プレイ、弾き方などの佇まい含めて、本当に素晴らしいギタリストだと筆者は思う。終盤では泣き叫ぶ様なギターに呼応する様に荒谷もシャウトに近い歌唱を、そして最終的には床に這いつくばってエフェクターのつまみを操作。けたたましくも美しいノイズの渦にオーディエンスを巻き込んでいた。
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