関根勤のマニアック映画でモヤモヤをぶっ飛ばせ! 第11回
日本で洋画コメディがヒットしない理由を考えさせられる『ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ』
2023.03.12 12:00
2023.03.12 12:00
日本で洋画のコメディ映画がヒットしないのは何故?
日本であのタイプのコメディが流行らないのは、もともと僕ら日本人の中に西洋的なコメディに対する理解力がないんじゃないですかね。僕は若い時に『モンティ・パイソン』の洗礼を受けたんですが、『ブルース・ブラザーズ』くらいわかりやすいものになるとみんな観るのかなって思います。あのくらい、ハッキリしないとダメみたいですね。だからね、笑うところが多分違うんですよ。日本はやはり『寅さん(男はつらいよ)』とか『駅前』シリーズとか、もっとこう、ほんわかした人情絡みの笑いなんですよね。だから『若大将』シリーズの田中邦衛さんの評価においても、一般的なものと僕のものだと少し違う。僕はすごく高いんですよ。でも世間的には田中さんは『北の国から』の時が一番評価されていますよね。僕はどちらかというとコメディの時の田中さんの方が好きなんです。
洋画コメディが受けない背景としては言語の壁も大きいし、笑いに慣れているか慣れていないかも大きいですよね。『モンティ・パイソン』の何がすごかったって、吹き替えの声優さんもすごかったんです。ものすごく上手いんです。吹き替えると普通ダメになるわけですが、これがとても面白かった。とにかく演出と、声優さんの力がすごく大きかったです。そのおかげで僕もスッと(笑いが)頭の中に入ってきたのかもしれません。だから吹き替えが上手ければ洋画コメディも日本で当たるかも。
とにかく、僕としてはマーティンが(日本で)受けなかったことが残念です。エディ・マーフィーは日本でもまあまあ売れましたけどね。あの人はもっとわかりやすかったから。日本だとマーティンの知名度もそんなに高くないし。ただ、日本でマーティンっぽい人と言うとロバート秋山くんかもしれない。彼ならマーティンの役を上手くできる気がします。映画『ロンリー・ガイ』で彼女が浮気していて、マーティンがそこに帰ってくるわけですが、そこにいる浮気相手の彼がいないようにわざと振る舞って、それで逆に彼女に怒られるんです。それがまた物悲しいシーンなのですが、あそこ、秋山くんが演じたら上手いんだろうなあと思って(笑)。でも、やはり渋みのある若い頃の田中邦衛さんが近いかな(笑)。
それにしても、コメディ映画は日本に本当に入ってこなくなりましたね。結局、もうコメディだけじゃダメなんだと思うんです。マーベルの映画みたいに、売りをアクションにして、サイドストーリーにコメディを入れておくくらいじゃないと。その点、インド映画はバランスが上手いなって思っています。昔のクレイジーキャッツさんの映画もめちゃくちゃで面白かったけど、ああいう映画は高度経済成長期だったから作れたものかもしれない。あとは演者が今はいないですね。秋山くんとかあの辺のコントで上手い人、ビスケット・ブラザーズや、や団が出ればそういう作品も作れるかもしれません。でも、制作費などのリスクが高いから難しいですよね。軸にちゃんと阿部寛さんとか、お客を呼べる俳優さんがいる中で彼らのような脇で食っちゃうようなコメディ映画とか作ればいいのに。
テレビでプロのコメディアンがいるから、映画で中途半端なもの見たくないっていうのは僕も同じ気持ちだったりします。残念なものやられても、嫌だもん。そんなこんなでも、『ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ』はコメディの入り口としておすすめの映画です。ぜひ、この作品を見てそのほかのコメディ作品に触れてほしいです。ある意味、本作を観ると他のコメディの見方や楽しみ方がわかるような、“ワクチン”的な効果がある作品です。ケインとマーティンの共演も、あの作品くらいでしかないはずなので、ぜひ注目して観ていただければと思います。