2023.02.16 19:00
2023.02.16 19:00
秦 基博の新曲「イカロス」の世界を3人の映画監督がオリジナル脚本で映像化。その3作品を束ねた映画と秦の撮り下ろし最新LIVE映像が融合し、“秦 基博 × U-NEXT FILM「イカロス 片羽の街」&PREMIUM LIVE「ICARUS」”として2月18日(土)までU-NEXTにて独占配信されている。
それぞれの視点で楽曲テーマの“喪失”を描く3本のオムニバス映画で、特に大胆な解釈かつ痛快な描写で「イカロス」の世界を拡げているのが、枝 優花監督作の『豚知気人生』だ。秦と枝監督に本プロジェクト始動のきっかけや制作の舞台裏を尋ねると、音と映像、メインのフィールドは違えど作品を生み出す両者に共通する信念が見えてきた。
新曲にぶつけた新作
──「イカロス」は秦さんの作風のなかでは変化球的な楽曲だと感じたのですが、映画をつくる企画はどこから着想されたのですが?
秦 基博(以下、秦) 曲ができた時に、情景が浮かぶ曲だという印象があって。その時点ではまだ歌詞はなかったんですけど。映像との相性はいいんじゃないかと思って。それが始まりでしたね。どう映像とコラボレーションしていくかって考えたときに、普通に考えたら楽曲のミュージックビデオができるっていうのが一般的だと思うんですけど、そうじゃない形で新しい試みができないかって皆で考えてこのような企画になりました。
──枝さんはお話があった時、どう思われましたか?
枝 優花監督(以下、枝) 秦さんの曲は聴いていましたし、イメージもあったので、最初はどういう曲が上がってくるかわからないなかでのお話だったので。パンクバンドとかだったら「できるかな?」って不安になりますけど、「できそうかも」みたいな気持ちで最初お受けしました。「喪失」と「再生」っていうテーマだけは聞いていたので、ある程度考えていたんですが、楽曲上がったときに、私の抱いている秦さんのイメージとは少し違う曲で「はっ!」て、なりました(笑)。そこから書き換えて、用意していたもの全部流して一からやりました。ストック(していた物語)が使えないって思って。
──ある意味、新曲に新曲をぶつけたってことですね。秦さんは、この3名を監督に選んだ理由はありますか?
秦 プロジェクトチームの話し合いのなかで、推薦していただいた形に近いです。お願いするならこの方たち、ということで皆さんから名前が挙がって。

──楽曲はギリシャ神話の『イカロス』をテーマにされたんでしょうか?
秦 いえ、『イカロス』をテーマに書き始めたのではなく、「喪失」というものをテーマに書きました。その中で、楽曲のモチーフとして「イカロス」が出てきたという流れです。
──「喪失」という話だと、音楽や撮影の現場でコロナ禍で「喪失」された日常は戻ってきていますか?
秦 少しずつ戻ってきているとは思いますが、まったく元通りになるのではなく、新しいものになるのかなっていう感覚もありますね。まだ途中だとは思いますが。
枝 映像は、たぶん音楽ほどではないと思うんです。音楽アーティストの友人が多いのですが、ライブをする歓びが無くなってしまったところを傍で見ていて。私たちはそういうステージはあまりなくとも、見てもらえるというか。逆にサブスクが過熱して、地方でも観てもらえる機会が増えたなっていう面白さもあったりするけど、リアルな場が減っているというのもあり、新しい何かが「喪失」から「再生」できればいいから、今が過渡期なんだろうなって感じています。
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