2023.02.15 18:30
歌が嘘にならないような人間でありたい
──「自転車」はどうですか?
水上 「自転車」は遠征とかでいろんな景色を見てくる中で、ステージとフロアのコミュニケーションみたいなのがどんどん取れるようになってきた印象があって。今はマスクはしてるけど、そのマスクの奥の表情も見えるんじゃないかというぐらい。そうやって感じていることを素直にそのまま書いたという感じですね。
──どちらの曲も、っていうかこのアルバム全部そうなんですけど、響きがすごく肯定的じゃないですか。とくに「自転車」の最後の「僕の自転車はここだ」っていう1行は本当に強い肯定のメッセージになっていると思うし。
水上 そうですね。「自転車」の最後のところって、最初は1番と同じ「僕の自転車はどこだ?」のままだったんですよ。それを「ここだ」と書くには自分のポジティブさが足りてないって思って。でもレコーディングするにあたってレーベルの人に歌詞を見せたら、「この曲は最後に救われたほうがいいと思う」って言われて。私的には言い切っちゃうところに怖さがあったんですけど、曲の中で言い切ることによって自分が変わっていける部分もあるし、そういうふうに受け取ってくれる人がたくさんいたほうが幸せじゃない?って言ってもらって、「じゃあそうします」って(笑)。
──でも、言われたとしても絶対違うと思ったら変えないタイプだと思うんですよ、水上さんって。変えてもいいかなっていう気持ちがあったってことですよね。
水上 そうです。やっぱり受け取り手がいて自分がいるっていう部分もあるなと思って。聴いてくれる人がどういう受け取り方するかっていうところを考えたほうがいいなって思ったんです。あと、ライブでやっぱり嘘はつきたくないので。歌っていることが嘘にならないような人間でありたいな、みたいなところまで考えることができたので、最終的にこの歌詞にしました。
──「自転車」はギターもかっこいいですよね。まさにデュエットしているようなギターだなって。
岡田 この曲は本当にシンプルに、自転車の車輪が回転するような、ぐんぐん進むようなギターを弾きたいと思って作りました。
──いつもそういうイメージから入っていく感じなんですか?
岡田 そうですね、何パターンかあるんですけど。イメージ先行で景色を作りながらギターを考えたり、音だけでぱっと浮かぶやつがあったり、あとはちょっと入ってきた言葉をイメージ化して音に落とし込んだり。
──やっぱりギターではあるけど、歌を作るとかメロディをつけるのに近い感覚で作っているのかもしれないですね。
岡田 そうですね、確かに。鼻歌でやるときも多いです。
──へえ! だからすごく歌に近いところで鳴っている感じがする理由なのかもしれない。でも本当に「僕の自転車はここだ」というフレーズがこのアルバムを象徴するものになってるなと感じますね。「ここだ」って言えるようになった、あるいはなろうとしているっていうのは、要するに自分を肯定するってことじゃないですか。
水上 うん。ちょっとずつ自信がついてきてるのかもしれないですね。
──だって「みんなのうた」ですよ? なきごとの曲が「みんなのうた」って言われちゃってる。
岡田 恐れ多い(笑)。
水上 はい、私の歌が「みんなのうた」になりました(笑)。その「ぷかぷか」は水をテーマに書いてくださいって言われて書き下ろしたんですけど、「みんなのうた」だからこそ個人的であった方がいいなって私は思って。「みんな」って言われると自分のことじゃないと思っちゃうじゃないですか。ライブで言われてもそう思うし、クラスで先生に言われてもそう思うし。でも「みんなのうた」を通して「自分のことを歌ってるんだ」って思ってもらいたくて、いい意味で個人的に捉えられるような曲にしようと意識して作りました。
──ここでも「君なりのペース」「僕なりのペース」「自分なりのペース」って言ってるけども、すごく大事な言葉だと思うんですよね。「みんなで」じゃなくて、それぞれのペースで生きていくんだよっていう。1曲目の「私は私なりの言葉で」っていうのも一緒だけど、ちゃんと相手も自分のを認めて受け入れるみたいな姿勢がどんどん強くなっているのかなっていう気がしました。
水上 そうですね。言われてみと確かに、メッセージの部分でちょっと近い部分がある気がします。
次のページ