関根勤のマニアック映画でモヤモヤをぶっ飛ばせ! 第10回
天才ジム・キャリーがとにかく羨ましくなる『マスク』
2023.02.05 12:00
2023.02.05 12:00
関根勤が偏愛するマニアックな映画を語る連載『関根勤のマニアック映画でモヤモヤをぶっ飛ばせ!』。第10回目は1994年に公開された映画『マスク』(日本公開は1995年)。
冴えない銀行員のスタンリー・イプキスは、いつも空回りしてしまうお人好し。そんな彼はある日窓口にやってきた美女ティナに惚れるも、彼女の前で醜態を晒してしまう。しかし、ひょんなことから拾った木製の仮面を顔につけた途端、破天荒な魔人マスクに変身してしまった。本来の自分とは正反対の性格や強さになった彼は、再びティナにアプローチを試みるが、ギャングに目をつけられてしまう。
昨年『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』にヴィランのロボトニック役として出演した際、「もう十分にやった」と、引退宣言に近い発言をしたことで話題となったジム・キャリー。彼の大出世作となった『マスク』を、関根勤がコメディアン視点で語る。
第10回『マスク』
初めて観た時にすごく面白くて、2回映画館に行きました。ジム・キャリーのキャラクターとCGが合致して、あんなにCGのキャラと本人の演技力がピッタリ合う映画って、他になかなか見当たらない。キャリーあってこそのマスクの動きなんですよ。そうやって作ったんでしょうけどね。映画は、まあ見事な面白さ。あと、キャメロン・ディアスがね、“ザ・アメリカンビューティー”って具合にもうセクシーで。プロット自体はかなり好都合なんです。彼女の演じる美女がすぐに公園に来てくれるところとか、理解力がありすぎるところとか、全部都合が良い(笑)。キャリー演じるスタンリーの犬も、またいい役どころでした。スタンリーはスタンリーで、やりたい放題やった後に反省するのが面白くて。「やったぜ! また今夜も遊ぼう」じゃないの。「うわあーお、どうしよう……」って落ち込む。あれが最高ですね。映画のラストも、どうなっちゃうんだろうって見守っていたら、結局都合よく終わるんです(笑)。警察官が踊るシーンも良かったですね。あそこはちょっとインド映画やマイケル・ジャクソンの『スリラー』を彷彿とさせるものがありました。
何と言っても、あのマスク。あれは被った時に自分が最も欲している欲望に忠実になる、なりたい自分になる仮面なんですよね。例えば『アイアンマン』とか観ても、僕はそんなに「うわあ、アイアンマンになりたいな!」とは思わない。ちょっと別世界すぎるから、「やはりこういうヒーローはかっこいいな」って思うくらいに止まるんです。ところが、『マスク』のマスクは「欲しいな」って思うんですよ。「これ、被ったらどうなるんだろう?」って気になるから。自分の深層心理を炙り出してくれるわけでしょ? だからちょっと興味があってね。
キャリーはこういったコメディ映画への出演が多いですが、特に『マスク』はマスクを被ることによって特別な存在になるので、彼のパワーも120%出ているような素晴らしい映画です。普通の役者じゃできないことをやっているから、本作はリメイクができないと思います。
キャリーは天才なんですよ。あの動き、あの顔の表情、どれをとっても一級品です。しかも恵まれていることに、スタイルも良くて顔もハンサムなんですよ。だから二枚目役もできる。大袈裟に言えば、黙っていれば『ミッション・インポッシブル』もできるんじゃないかなって(笑)。でも、彼はそれはやらないんですよね。とにかく動きがオーバーっていうのかな、ちょっとグニャにグニャしていて、あれはなかなかできないんですよ。持って生まれた才能ですね。僕はキャリーや彼の出演作を見た時、日本で彼の作品ができるのってネプチューンの泰造くんかなって思ったんです。顔も雰囲気も似ているでしょう、ちょっとオーバーでだし。だから何かキャリーのオマージュを日本でやる時には、泰造くんにやってほしい(笑)。キャリーは本当に羨ましい存在ですよ。全部を持っているから。演技力があって、顔もいい。彼がやっていることって、やろうと思ってもできないことなんです。実はすごく難しくて、ああいうふうにオーバーにすることって、抑えるより難しい。監督に「演技をもっと抑えて」っ言われたら、抑えられるものじゃないですか。でも逆に「もっとやって」って言われるのって難しいし、できないんです。コロッケさんの顔芸もそうですが、他の人にはできないことなんですよ。
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