ソロ初アリーナライブ「Black Rabbit」東京公演をレポート
全てをクロスオーバーする“香取慎吾”としての存在 2万人に贈られた最高峰のエンターテインメント
2023.01.23 12:20
2023.01.23 12:20
かつてマイケル・ジャクソンに立てた誓い
本編折り返し地点のMCでは、前日の公演を観に来ていた稲垣吾郎からこの本番の直前に電話があり「本当に素晴らしいショーだった。あの曲で泣けたよ」と告げられた旨を明かす。何か特別な事件がない限り電話なんて掛けてこないという稲垣からの言葉がうれしかったのか、香取は「吾郎ちゃんと出会ったのは僕が小5の時で、それからずーっと一緒にいるの。嫌になっちゃうよね(笑)」と語る。草彅剛は放送中のTVドラマ『罠の戦争』の撮影があり来場が難しかったそうだが、この日はキャイーンの両名が会場に足を運んでいたそうだ。『20200101』や『東京SNG』にも、以前より交流のあるアーティストと再タッグして制作された楽曲も多数収録されている。環境が変わろうとも、彼がこれまでに積み重ねてきたものは今も健やかに生き続けているのだ。
「今日お誕生日の人?」というくだりからOriginal Loveの田島貴男との共作曲「Happy BBB」、劇団ひとりが制作に参加した「道しるべ」などゴージャスで煌びやかなビッグバンドジャズで魅了すると、SNG BANDのソロ回しを絡めたインスト演奏とメンバー紹介を挟み、ロックなギターソロと同時に衣装チェンジをした香取が現れ、yahyelとの共作曲「Neo」、KREVAとの共作曲「嫌気がさすほど愛してる」などクールでダークな楽曲を立て続けに歌唱する。特にWONKとの共作曲「Anonymous」の、赤をテーマカラーにダンサー陣が香取を取り囲み直情的でありながら一糸乱れずに身体を動かす様子には、その気魄に目が離せなかった。
花道を伝いサブステージに移動した香取は、新しい地図のファンミーティングで大阪城ホールのステージに立ったときに、初めてステージに立って大先輩のバックで踊った記憶が蘇ってきたこと、憧れの存在であるマイケル・ジャクソンを観た東京ドームのステージに立てたときの感動、再びこうしてステージに立てることへの喜びを語り「大好きな歌とダンスができて、みんなの笑顔を見ることができて本当に幸せです」と頭を下げる。「これからもみんなとずっとずっと、楽しい時間を一緒に過ごしましょう。一緒に明日を生きましょう。一緒に頑張りましょう」と告げ披露したヒグチアイとの共作曲「ひとりきりのふたり」は、やわらかい表情で歌詞を一つひとつ噛み締めるような彼の歌、ピアノの上に重なっていくコーラスやホーンの音色など、夜明けを彷彿とさせるサウンドスケープが会場中を満たしていった。
曲が終わると間髪入れず、彼の足元を照らした白色のレーザーが花道に線を走らせる。彼がスモークで包まれたメインステージの上に戻ると、SNGメンバー総出で本編のラストとして「FUTURE WORLD」をパフォーマンス。壮大なサウンドとドラマチックなステージ、全員が動きを揃えてステージから去っていく美しいラストも含めて、「Black Rabbit」が月へと帰っていくクライマックスのようだった。
アンコールでは多種多様なパーティードレスで身を包んだSNGメンバーと火の玉が多数打ちあがるなか香取慎吾×SEVENTEEN名義でデジタルリリースされたばかりの最新曲「BETTING」を披露し、銀テープが噴射されるとスウィングジャズナンバーの「東京SNG」へ。ステージの隅から隅まで回り、観客と視線を合わせてゆく。非常に躍動感溢れる、ここからまた新しいお楽しみが始まるような期待をくすぐるラストだった。
「また一緒に遊ぼうね! 愛してます!」と手を振った彼は、SNGメンバーがいるステージのバックへと下がる。すると彼らの前にモニターが降り、BGMの終わりと同時にツアータイトルロゴが出現。計算し尽くされた抜群のタイミングのそれは非常にスタイリッシュで、映画のラストシーンを観ているかのようだった。
SNGメンバーと一丸となって作り出したアートもバラエティもミュージカルも取り込んだステージに、ジャンルを超えた音楽表現──これが実現できるのは香取の歩んできた歴史と、他者を信じる心があるからに他ならない。「ソロ」や「ひとり」とは「孤独」ではなく、どんな人の元にも飛んでいける自由の身なのだと、彼のライブが教えてくれた。