2023.01.23 18:30
2023.01.23 18:30
今年のグラミーにも2部門でノミネートされ“USインディーの至宝”とも評されるバンド、Big Thief(ビッグ・シーフ)が昨年11月に待望の初来日。メンバーはエイドリアン・レンカー(Vo/Gt)、マックス・オレアルチック(Ba)、バック・ミーク(Gt)、ジェームズ・クリヴチェニア(Dr)の4人で、2015年の結成からこれまで5枚のアルバムをリリースしている。最新作はドラムのジェームズがプロデュースも手がけた、5thアルバム『Dragon New Warm Mountain I Believe In You』。今回、同作を携えて大阪、名古屋、東京(東京のみ2日間)でライブを行った彼らに話を聞くことができた。
インタビューを前に観ることができた恵比寿ザ・ガーデンホール公演(東京)では、終始4人がダイナミックな化学反応を起こすさまを目の当たりにし、まさしく“今、この場所”でしか味わえない瞬間の連続──コロナ禍を経てネットシーンが台頭する現在の日本において、長らく遠ざかっていた音楽の本質を見せつけられたライブだった。彼らはプロフィールで「フォーク」と表されることが多いが、ライブでは何よりもオルタナティブで、リスナーの一つ上の次元に存在するインディーロックという印象を受けた。かつてボーカルのエイドリアンはバンドを結びつけているものを問われ「無垢な魔法」と答えているが、確かに、言葉にすることができない“何か”がステージ上に存在していたことはライブに訪れた方なら疑う余地はないだろう。
我々のインタビューに応じてくれたのはギターのバックとドラムのジェームズの2名。待望の初来日を果たし、鮮明な記憶を日本のオーディエンスに焼きつけた彼らが、日本の印象やライブのパフォーマンスからも垣間見えるルーツ、そして今後の“未知なる”ビジョンを明かしてくれた。(インタビュー/庄村聡泰)
日本の文化に触れたいと思っていた
──待望の初来日でしたね。おめでとうございます!
バック ありがとう! うれしい、日本大好き。
──来日するまで日本にどんなイメージを持っていましたか?
バック 日本は、なんでも先のことまで考えて決めているイメージがあって、実際に来てみてもそう思う。アメリカで出会った日系の人とか日本のバックグラウンドを持つ知り合いと関わっていた時からそれは感じていて、その文化に触れたいと思っていたのでとてもうれしいです。
ジェームズ もともと日本の文化は音楽とかジブリなどのアニメで知っていたんだけど、特に音楽とかアートに関しては、どこか懐かしいけどいい意味でちょっと変、みたいな印象が僕的にはあって。すごくシンプルなんだけど、なんでこの方向にいくんだろう?と思うことがすごくあったんだよね。僕自身のバックグラウンドにはない部分だから、その違いみたいなものをより近くで見たいと思っていました。
──来日公演を観て、ビッグ・シーフのホームスタジオに招かれたような雰囲気を感じたんですけど、セットリストはあらかじめ決めているんですか?
バック どのショーも必ず、その空間で何を感じるかによって直前にセトリを決めているよ。
──あの雰囲気は絶対そうですよね。柔らかい演奏の感じも含めて次はこれやる!っていうのがなくて、すごく気持ちよかったです。
ジェームズ 僕らはできるだけその瞬間を生きようとしているので、そこにいる人たちとともにその瞬間の演奏をしています。
バック 東京公演でもアンプが壊れちゃったり、いろいろな問題が起きちゃったんだけど、そういうトラブルも僕らは大事だと思っていて。カーブボールが飛んでくるような、予想もしてないことから生まれてくるものもあるので、トラブルも楽しんでるよ。
──ライブを観て、毎回次はどんなセッションなんだろう、次はどうなるんだろうというのがすごく楽しみでした。
バック 僕らも同じ気持ちだよ(笑)。ステージ床にあるセトリを見てやっている場合もあるし、エイドリアンが途中からやっぱりこの曲をやりたいって言って急に変えたりすることもあるから。
ジェームズ 僕ら以外の2人がセトリを作っているので、会場入りした時に僕らも全然分からないみたいな時もよくあるよ(笑)。
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