2022.12.26 12:30
2022.12.26 12:30
宮野真守のエンターテイナーとしての実力を、つくづく思い知らされるライブだった。全国3箇所6公演にわたる約3年ぶりのライブツアーはコロナ禍という状況を逆手に取ったクリエイティブを発揮する、好奇心に満ちた空間だった。この記事では12月3日のさいたまスーパーアリーナ公演初日の模様をお届けする。
オープニング映像を経て、アルバムのタイトル曲かつ1曲目である軽やかなソウルナンバー「THE ENTERTAINMENT」でこの日の幕を開けた。4人編成のサポートバンドとタキシード姿の4人のバックダンサーで構成された「チームマモ」のメンバーとともに、心地よいグルーヴで場内を満たしていく。伸びやかな歌声、艶やかな衣装としなやかなダンス、クラップを求めそれに感謝を告げるなどのスマートなパフォーマンスは関係者席から観ていても華があり、その優美さは観客を幸福感で包み込みリラックスさせるようでもあった。
ステージのセンターから伸びた花道を伝ってサブステージに移動すると「光射す方へ」へ。観客と目を合わせるように客席を見渡し、全身を振り絞って歌う姿は、楽曲にほとばしる熱い思いを生々しく体現していた。「ZERO to INFINITY」ではメインステージに戻りステージを端から端まで移動して観客との物理的な距離を縮めることで丁寧にコミュニケーションを取っていた。
チームマモのメンバー紹介セッションでは、宮野自身がスマホカメラを構えて各メンバーを撮影。その映像がステージの両サイドに配備された縦型のLEDモニターに、さらにカメラマン宮野の様子がステージ上部に設置された横型のLEDモニターにリアルタイムで映し出されていた。メンバーの表情をとらえるというカメラマンの仕事をしっかりこなしながらも、「カメラマンを演じる」という演者としてのスタンスを一切崩さない宮野の立ち振る舞いに舌を巻く。それを軽々とした様子で楽しんでしまうポテンシャルは伊達じゃない。
繊細かつダイナミックなミドルナンバー「EVERLASTING」の後は、アコースティック色の強いアレンジで引き込むバラードセクションへ。優雅なストリングスと荘厳なピアノ、感傷性の高いボーカルが胸に響く「透明」でじっくりと楽曲の世界へ引き込む。その後はバンドメンバーとのゆったりしたトークパートへ。宮野と10年以上ライブを共にしているメンバーが多いため、非常にラフでほがらかな会話に花が咲く。その最中、宮野はライブについて「楽しいだけでなく皆さんにいいものを届けたいという緊張感もあって、それを受け取ってくれるというみんながいて。楽しさを共有するけれど馴れ合いとは違う、プロフェッショナルな関係性」などと話していた。観客から向けられる愛情に甘えず、己を高めていく彼のストイックな姿勢が垣間見えた瞬間だった。
ピアノとアコギが映えるアコースティックアレンジの「Never Friends」は楽曲に没入しながら歌う宮野の気魄に目を見張り、「innocence」はジャズ風のアレンジを投入しバンドメンバーと一丸となり新たな魅力を引き出していく様が爽快だった。音源とは違うアレンジで楽曲を堪能できるのも、ライブならではの醍醐味と言えるだろう。
すると場内が暗転し、恒例の幕間映像のコーナーに。TV番組『おげんさんといっしょ』でおなじみのキャラクター・雅マモルが誕生したのもここだ。彼は過去に無声映画、1人5役の海外ドラマ風コント、ミュージカル、ドキュメンタリーなど、「映像だからこそできるエンターテインメント」に数々挑戦してきた。そんな彼が今回選んだのは「漫才」。旧知の仲である髙木 俊とともに漫才コンビ・エンターテイナーズとして、「さいたま」や「クリスマス」などのワードを取り入れたテンポのいい見事な掛け合いで会場を沸かせた。
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